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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 92

 オレがモニタールームで感嘆の溜め息を漏らしながら香川教授の清流が流れるような感じの手技に見惚れていたオレだった。それはアメリカ仕込みだからそうなのかと思っていたのだけれども学生時代から実践の現場――と言っても医学生をボランティアとして戦力扱いするような奇特な所は救急救命室だけだろうけれど――そいうう場数を踏んでいたのが基礎になっていて、その後アメリカでの大成功に繋がったのだろう。いずれにせよ香川教授ほどの才能の持ち主でもそうやって下積みの生活を送っていたのだなぁと思うと僭越せんえつかもしれないが親近感のようなものを抱いてしまう。
 しかし、オレには大学病院というある意味旧弊な場所を見限って単身アメリカに渡るというような大胆さとか度胸がないのも事実だ。
 まあ、皆がそんな素晴らしい野心を持っているわけではない。現に田中先生だって病院内での出世とか外科の執刀医としての実績を上げることは熱心だ。それに、細分化された大学病院なだけに心臓以外のことは診られないので、バイパス術に使えそうな未知の大動脈を探しているという熱心さとたゆまぬ努力をしていることは知っている。
 ただ、教授よりも遥かに行動力も有りそうな田中先生でもアメリカとかの心臓手術の先進国に――なんといっても映画で有名になったバチスタ術を始めとして新しい手術方法は日本で確立されたものは皆無という体たらくだ――渡ろうという気はないっぽいし。
「流石ですね。やはり気持ちの持ち方が普通の人とは異なるんですから。単身アメリカに渡るとかそういう行動力も……」
 オレにはとても出来ない――なんてったって、英語なんて日常会話レベルも怪しいのだから、医療用語なんてチンプンカンプンなので手術室に入れても貰えないだろうけど――凄い人なんだなぁ、香川教授って。
 そう思っていると、田中先生が何だか苦い笑みというか複雑な表情を浮かべている。
 何でそんな表情になるのかサッパリ分からなかったけど、もしかして田中先生もアメリカに行きたいという野望でも持っているのだろうか。
 まあ、あちらでは香川教授が実践したように手技の腕さえ確かならば、執刀もバンバン回ってくるとか、手術報酬もそのドクターによって異なるようなので、教授のように莫大な資産を築いて帰国することも出来なくはない。
 まあ。

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