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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 90

「お早う、今日は早いな……。ああ、さてはアクアマリン姫のストーカーか?」
 道すがら柏木先生に声をかけられた。先生は昨夜救急救命室勤務だったので疲れた感じでコンビニの紙袋を持っている。その中には栄養ドリンクが――しかも一番高価なヤツばっかりだ――多数入っているのは、いわば香川外科から救急救命室に出向している人間のお約束みたいなものだ。田中先生は地獄のように濃くて苦いコーヒーしか飲まないことが多いけれど、野戦病院よりも酷いんじゃないか?と思うような――と言っても実際の野戦病院の修羅場は知らないけど――夜もある。
 それというのも、救急救命の天使とか悪魔とか呼ばれている杉田師長が本来ならば他の病院でも充分対応が可能な患者さん――と言っても搬送時間などのロスを考えるとウチの病院の方が良いことも多いので救急救命室の天使サマのポリシーは分からなくもない。切迫流産とかでも受け入れて、産婦人科の当直の医師を電話で叩き起こしていることもしょっちゅうだし。
 あの有無を言わさないキンキン声にド迫力というエコーが掛かっている声でくし立てられたら、電話越しとはいえ耳鼻科に行った方が良いような気がする。
 そういう、カオスのような救急救命室でも、杉田師長と田中先生が見事な采配を見せて優先順位の高い順にさばいていくのは流石だった。
 オレは恋愛シュミレーションゲームが大好きだけれど、暇つぶしにパズルゲームをする。そういう時に「ああ!ここでこうブロックを動かせば良かったのに!!」とか思うこともあったが、それは所詮ゲームなので「残念!」という表示が出るだけだけれど、あっちは人命が掛かっているのに、後で考えたら上位者向けのパズルゲームよりも入り組んでいるのに咄嗟の判断で必要な器具出しやその場に居る医師の得意分野とかベッドコントロールまで考えるのなんて凄すぎる。杉田師長は長年救急救命室一筋なので経験値も高いからある意味納得なんだけど、田中先生は心臓外科所属医師として初めて出向になった「だけ」の人だ。
 もちろん専攻は心臓外科なので、救急救命は後付の知識と経験だ。
 その点を疑問に思って聞いてみたことが有る。
 すると、田中先生はほろ苦い――いや、それよりも甘いかも知れない――笑みを浮かべていた。ただ眉の辺りに負けん気のようなものが漂っていたけれど。
 そして。

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