香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 86

 そういう相手の女性だけを見るんじゃなくて、親戚関係までチェックされるのが「現実」らしい。田中先生はそういう点を指摘してくれたのだろうな。
 なんだか皇室とかじゃあるまいし!とも思ったけれども、お母さんが選んだ正しい花嫁候補はキチンとそこまでの個人情報を提示しているわけで、お母さん的にはそれが当然とか思っていそうだ。そして厚労省ーー病院内とか医師の間では嫌われているのは知っているけれどーーキャリアの女性が親戚に居るというのはお母さん的にはポイント高いんだろうなと思ってしまう。
「有難うございます。なんか女性たちの履歴書みたいなものとか見たんですけど、そういえば僕でも知っている大企業の役職付きとかそういうのがずらっと……痛っ」
 田中先生に軽く頭を叩かれた。この程度ではイジメにもパワハラにもならないだろうし第一オレがそう思っていないのだから大丈夫だろう、多分。
「履歴書はバイトなんかの勤務先に提出するモノです。そういうのは『釣り書』と言います。言葉は正確に使ってください。
 結婚は当人の意思の問題ですが、まだまだ家が関わってきているのが現状です。ほら柏木先生の結婚式の時だって『柏木家・藤宮家結婚披露宴』という個人ではなくてあくまで家がメインでしたよね。
 だから親戚とかそういう人がどんな人なのか気になるハズです、お母様的には。個人だと付き合えても、親戚に変な人が居る場合、厄介なことになりますよね。だから柏木先生の奥さんの場合、従妹、つまりお母様のお家は教育熱心な家だな……という評価になります。
 そういうのもキチンとお母様に伝えて、柏木先生ご夫妻が、いや柏木先生はそんなに心配していませんが、奥さんが不快にならないようにしてくださいね」
 柏木先生も仕方なさそうな感じの笑みを浮かべている。
「まあ、俺は何を言われても良いんだが……。ただ家内を怒らせるとその場では良くても家に帰ったら八つ当たりがこっちに来るんで、それは止めて欲しいな」
 お母さんはそれほど人の気持ちを逆撫でするようなことは言わないけれど、ぽろっと失言みたいな感じで言ってしまうところもないではない。
 まあ、それを言うならオレもそうなんだけど。
「分かりました。あのう……おもてなしの準備とか要りますよね?ビールとかも用意しておいた方が良いですか?」
 柏木先生の好みは知っているので確認のつもりだった。まさか朝っぱらからそういう集まりが有るとも思えないので。
 すると。

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