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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 80

「終了しました。何か気が付かれたことはありますか?」
 香川教授の凛とした声が手術室に響いた。
 そして普段通りにスタッフ一人一人の顔を確かめるような眼差しで見ていく。
 田中先生は「教授の凄いトコロ」「外科医として見習うべきトコロ」をこっそりと教えてくれていて、その中に「時計を見なくても時間が分かるようになると便利」というのが有って、オレもそれを実践してみようと思って頑張っていた。
 そしてお手本というか、素晴らしい外科医の香川教授のことは何でも真似ようとしていたし、教授の一挙一動を余すところなく見ていた。
 そして、手術スタッフーー医師だけではなくて看護師や技師さんにも平等に確認の視線を送っているのを見ていたのだけれども、田中先生に向けた視線は他のスタッフよりも長いような気がした。
 そして、田中先生もその視線を受けて眼力メヂカラの強い感じでーーもともと田中先生の目の輝きは他の人よりもより一層際立っているのは知っていたーー教授だけに視線を当てていた。とても満足そうな瞳の輝きで。
 確かにーー半人前のオレが考えるのも不遜ふそんかも知れないけれど、誰にも言わずに心の中にメモっておくのは許されるだろうーー今日の教授の手技は普段以上に卓越していたのも事実で、どうやったらあんなに大胆かつ繊細な動きが出来るのだろうとため息しか出ないほどの出来栄えだった。
 田中先生もーー人の手技のことを辛辣に評したりはするが、それって先生自身の向上心の現れだとオレは思っているーー手技に関しては先生自身にも他人にも厳しい見方をする人だ。
 だから、もしかして、香川教授も田中先生の眼差しが気になっているのかな?と思ってしまった。
 これからは教授が田中先生を見るときの時間を計っておこうと密かに決意した。
「では終了します。お疲れ様でした」
 香川教授の一言で手術室の空気が一気に弛緩する。
 手術が上手く行った時のーーといっても、その逆のパターンに遭遇したことはないーー高揚感と安堵感に満ちた手術室の雰囲気は大好きだ。
 まあ、嫌いな人はいないだろうが。
「お疲れ様。ランチは何を食べる?」
 柏木先生が携帯の画面を見ていた田中先生に声を掛けている。
「すみません。ちょっと用事が出来てしまったので、昼休みはナシになりました」
 田中先生は医局の仕事だけではなくてAiセンター長も兼ねているのでそちらの仕事が入ったのだろうか?
 それにしては。

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