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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 76

 内心はどう思っていたとしても――そして現場が修羅場になったら、ベテランナースの怒鳴る通りに動いてはいた。そして後で考えたらどう考えてもそちらの方が合理的だし的確な動きだと分かるので、怒鳴られるのも修行のウチだと思っている――看護師と医師なら、病院内のヒエラルキーは断然医師の方が上だ。
 そして教授職なんてオレからても雲の上の存在で、滅多にこちらからは話しかけたりも出来ない。
 まあ、香川教授の場合はまだ物腰が丁寧だし、怒っているところなんて見たことがない。だから割と話しかけやすい雰囲気は持っている人で――何でも精神科の真殿教授なんて部下に当たり散らすことで精神状態を保っているんじゃないかとかウワサされているし、そんな人が上司でなかったのは本当にラッキーだった――研修医とはいえ医師のオレですら雲の上の人なのに総師長とかならともかく普通の看護師が教授に呼ばれて話す機会なんてないんじゃないかと思う。そりゃあ、廊下で会釈のついでに少しだけ立ち話とかは充分有り得るけど。
 ただ、香川教授が柏木先生の奥さんに話すって話がまず大袈裟過ぎるし、その役目って田中先生じゃダメなんだろうか?
「あ!それは良いアイデアだ!家内は香川……教授の隠れファンだから、執務室に呼ばれただけで狂喜乱舞するだろう。香川は何とも思ってないっぽいし、当然執務室に秘書が居る時間帯を見計らって呼ぶくらいの常識は有る人間だし」
 ああ、そういうことかと思った。教授はドラマなんかで描かれる外科医って感じは全くしない。オレが患者さんから「ここだけの話」みたいに聞き出したんだけど、ウチの病院に転院する前に香川教授の評判しか聞いていなくて、顔写真とかも見たことのない患者さんは初めて会った時に思い描いていたイメージとの違いに物凄くビックリしたとか。
 確かに教授の場合は暑苦しい体育会系のノリなんて一切持ち合わせていないし、麻酔科とか眼科とかそういう静かな科の医師のような涼しげな雰囲気を漂わせているし、手技の時だって淡々とした表情で、深山の清流のような感じの見事な指捌きで完璧としか言いようのない手技を披露してくれている。
 それにバレンタインチョコ獲得率が病院一の数を誇る田中先生の場合は、その気さくな感じとかAiセンター長という准教授並みのポジションに就いては居るけれど、死亡時画像病理検索の場合は読影が出来る医師しか必要とされない所なので、看護師は関係ない。
 だから「一介の医局の先生」という位置づけをナースさん達はしていて、その親しみやすい性格からもチョコが贈られてくるという側面も有った。
 その点、教授はナースさんや事務のお姉さんからも雲の上の上の人って感じなので、チョコなんて恐れ多くて贈れないという事情があったりする。
 だから。

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