香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 65

 第一次世界大戦は、1914年に始まっていたような気がする。口に出す勇気はなかったものの。
 だって、間違っている可能性が50%程度有るので――歴史なんて全く興味もなかったし、受験のツールとして丸暗記したダケだった――田中先生に頭をはたかれでもしたら、職員がこんなに見ているので問題視する人も居るだろうし。大学病院でも不祥事対策として倫理委員会とかが設置されていて、倫理に反すると判断された場合は厄介なことになる。ハラスメント行為だと認定された場合、田中先生が加害者、オレが被害者ということになって、委員会に無理やり呼ばれることになってしまう。
 そんなのは時間の無駄だし、そもそもオレも田中先生も「愛情表現」として――ヘンな意味では断じて違う!!――行っているだけなのに、主として田中先生に皆の視線が集まっているココではそういうリスクを冒さない方が良いだろう。
 それにしても、もし、第一次世界大戦勃発がオレのおぼろげな記憶で合っているとすれば、ナイチンゲールは更に以前に活躍した看護師、いや看護婦だ。ざっと計算して200年前から看護師の地位は低いままなのか……と内心ビックリしていた。
 オレも杉田師長とかに怒鳴り散らされながら――後で考えてみると、彼女の的確さに舌を巻いてしまうしオレなんてまだまだ未熟だな……と思わされることがしょっちゅうだった――毎日を過ごしているだけに、お母さんの主張が全く理解できなかったけれど、田中先生の言葉でストンと腑に落ちた感じだった。
「でも……初めてお付き合いする人を家族にも紹介したいです……。こういうのって間違っていますか?」
 個人主義っぽい考えを持っている田中先生なら「勝手に付き合ったらいかがですか?」とか言いそうだったけれど。
「いえ、真剣に交際したい相手ならば、家族に紹介して、出来れば祝福も受けたいという気持ちも理解出来ますよ?」
 意外な答えに驚いた。
「田中先生なら、ご家族に紹介した恋人さんはたくさんいらっしゃるんでしょうね……」
 病院一のチョコ獲得数を誇る人だし、その上外見だけの魅力の持ち主ではないのも良く分かる。突き放した感じの話し方をしても、本当は物凄く面倒見も良いし、他人のことを思いやったアドバイスをしているのもたびたび見てきた、オレを含めて。
「いいえ、紹介したのは一人しか居ませんね。私の場合は、生涯を一緒に過ごすに値する人しか会わせないと決めていたので……」
 すると。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品