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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 64

「ああ、お母様に反対でもされましたか?」
 田中先生が涼しい顔でイキナリ図星を突いて来た。
「分かりますか?その通りです……。お見合い写真とかずらりと並べて、そのうちの誰かと『会うだけでも会ってみたらどうかしら』とか朝食の時にまで言って来ました。昨夜は父と結託して説得されたのですが、父は何とか説得出来たのですが、母は無理でした……」
 見上げると田中先生はキリッと引き締まった男らしい唇を皮肉な形に結んでいた。
「女性の方が保守的ですからね。看護師が医療のスペシャリストですし、プロ意識も尊敬出来る人も多いのも事実ですが。
 ただ、差別意識はまだまだ根深いので。
 そう言えばナイチンゲールは当然ご存知ですよね。彼女が何故、あそこまで尊敬されて知名度も世界的なのかご存知ですか?」
 そんなことは考えてもいなかったので、田中先生の鋭角的で硬そうな唇を無言で見上げてかぶりを振った。医学に(一応)携わる身として彼女の名前は知ってはいたけれども。
「彼女は第一次世界大戦の前に有ったクリミア戦争に看護婦として参加して衛生面とか医療面で華々しい活躍をします。そして『白衣の天使』という――今では看護師一般を指すようになりましたが――あだ名を奉られた人物です。
 しかし、当時の看護婦は『病人の召使い』という認識しかなくて、字すら読めない人の就く職業だと思われていたそうです。
 そしてナイチンゲールは貴族ですらなかったものの非常に裕福な階級に生まれて語学も確か4・5国語は話せるくらいの教養も持ち合わせていました。
 そういう人が、看護婦になったという点も――もちろん、ご両親は大反対だったらしいですが――彼女の功績です。もちろん、従軍看護師として敵も味方も治療したとかそういう点も加味されていますが。
 その召使い階級だった頃の差別意識が、第一次世界大戦当時から変わっていないような気がします」
 第一次世界大戦なんていつだったっけと受験の時の記憶を掘り起こしていた。
 そんな初歩的なことを聞こうもんなら――受験の時に皆が通るセンター試験の社会科系の科目で知っている「ハズ」と見做されるので――田中先生にさっきみたいな頭をポコンと殴られそうだ。
 オレはそんなことは全然思っていないと神に誓って言えるが、こういう愛のムチ的な行為でも他人が見たらパワーハラスメントだ。
 ただ、ハラスメント行為は「その当人がそう想えば」という前提がつくのだけれども。
 だから、オレはそんなことを思っていないので大丈夫なんだけど、こんな人の多い場所でされてしまうと、田中先生に迷惑が掛かる恐れが高い。
 確か。

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