香川外科の愉快な仲間たち
久米先生編 「夏事件」の後 59
「お母さんやお父さんに口答えするなんて……。みんな、貴方のために良かれと思って。医師会所属の医師夫人の会『スミレ会』の皆様に協力して頂いて、こんなにも素晴らしい御嬢さん達を集めたというのに……。
それにお父様だって、確かに二十年前の大学病院から知識は新しくなっていないわ。でも、それをバカにすることはないんじゃないのっ!!」
そう早口で言った後に、大きな丸い目――これはオレにも遺伝している――から涙が後から後から落ちてきて、ついでに大きな声で泣かれてしまった。
慌ててテッシュの箱を取って手渡した。すると、
「貴方なんかにっ……親のっ……気持ちが、分からないのよっ……」
涙ながらに言い捨てる感じでリビングを速足で出て行った。そしてリビングのドアが大きな音を立ててバタンと閉められた。もちろん普段は音がしないように開け閉めしているから、相当怒っているのだろう。
リビングに残ったお父さんは複雑そうな表情を浮かべていた。
「お母さんがああなったら、一週間はご機嫌斜めだぞ。家事を全て放棄して、寝室――しかも私は追い出されてこのソファーで寝るしかない。後はクリニックのベッドだが、知っての通り点滴をする患者さんとか、ベッドに腰掛けて足などの裂傷を縫合する人のために有るから固いんだよな……。
お嬢様育ちはあれだから困る……」
半ば独り言っぽかったけど、しっかり聞こえていた。
「お父さんはそういうお嬢様上がりのお母さんをしっかり支えていたじゃないか。それはそれで凄いと思う」
お母さんがあんなに取り乱したのを見るのは生まれて初めてだったけれども、お父さんはナースの電話番号事件で何度か経験はあるらしい。
「凄いと思うけど、オレには無理だよ」
防音もそれなりにしっかりしている家なのに、お母さんの泣き声が聞こえてくる。その声を聴くと居た堪れない思いがした。
お母さんご推薦のお嬢様方も――まあ、実際に会っていないから分からないものの――自分の意見が通らなければ、あんなに泣いたりヒステリーチックになったりするのだろうか?
ただ、オレが合コンに付き合いで参加していた時も割とワガママな感じの女の子が多かった。
そう考えるとゲンナリしてしまう。
「お父さんはさ、岡田裕子さんとお付き合いするのは反対なのかな?」
お母さんが寝室に引きこもっているのが良い機会だ、お父さんの本音を聞く。
すると。
それにお父様だって、確かに二十年前の大学病院から知識は新しくなっていないわ。でも、それをバカにすることはないんじゃないのっ!!」
そう早口で言った後に、大きな丸い目――これはオレにも遺伝している――から涙が後から後から落ちてきて、ついでに大きな声で泣かれてしまった。
慌ててテッシュの箱を取って手渡した。すると、
「貴方なんかにっ……親のっ……気持ちが、分からないのよっ……」
涙ながらに言い捨てる感じでリビングを速足で出て行った。そしてリビングのドアが大きな音を立ててバタンと閉められた。もちろん普段は音がしないように開け閉めしているから、相当怒っているのだろう。
リビングに残ったお父さんは複雑そうな表情を浮かべていた。
「お母さんがああなったら、一週間はご機嫌斜めだぞ。家事を全て放棄して、寝室――しかも私は追い出されてこのソファーで寝るしかない。後はクリニックのベッドだが、知っての通り点滴をする患者さんとか、ベッドに腰掛けて足などの裂傷を縫合する人のために有るから固いんだよな……。
お嬢様育ちはあれだから困る……」
半ば独り言っぽかったけど、しっかり聞こえていた。
「お父さんはそういうお嬢様上がりのお母さんをしっかり支えていたじゃないか。それはそれで凄いと思う」
お母さんがあんなに取り乱したのを見るのは生まれて初めてだったけれども、お父さんはナースの電話番号事件で何度か経験はあるらしい。
「凄いと思うけど、オレには無理だよ」
防音もそれなりにしっかりしている家なのに、お母さんの泣き声が聞こえてくる。その声を聴くと居た堪れない思いがした。
お母さんご推薦のお嬢様方も――まあ、実際に会っていないから分からないものの――自分の意見が通らなければ、あんなに泣いたりヒステリーチックになったりするのだろうか?
ただ、オレが合コンに付き合いで参加していた時も割とワガママな感じの女の子が多かった。
そう考えるとゲンナリしてしまう。
「お父さんはさ、岡田裕子さんとお付き合いするのは反対なのかな?」
お母さんが寝室に引きこもっているのが良い機会だ、お父さんの本音を聞く。
すると。
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