話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 53

「お母さん、もの凄く反対みたいだね……」
 リビングの重い空気に耐え切れず、独り言のように言った。
「まあ、仕方ない面もある。というのも父さんがまだ病院勤務だった時に、ナースから『折り入って相談がある』と言われて食事に行ったことがある」
 そういえば田中先生もナースの間で的確過ぎるアドバイスを貰える、そして話しやすい気さくな医師としても尊敬を集めている。
 田中先生ははっきりとは言わないけれども、ナースだけではなくて医師からもーー多分外科ではなさそうな口ぶりだったーーそういう相談を受けている感じだった。
 ただ、田中先生の場合は岡田様……いや岡田さんからも今は警察だか刑務所だかに居る井藤が病院勤務だった頃に、いったんそこに入れてしまえば色々と危険なので触る人間はいない医療用廃棄物入れに犬や猫を無残に「解剖」したシロモノを廃棄していた瞬間を目撃して、それ以降井藤のことを要注意人物と判断して色々調べていたと聞いている。
 ただ、相談の場所は喫茶店といった感じで、食事ではなさそうだった。というか田中先生は意外にもーーというと本人に失礼かもだけどーー食事は自宅で摂るタイプだ。一人暮らしなのに案外マメだなぁとオレ的には思っていたけれど。
 田中先生は病院の注目の的な人だし、アルコールを伴った外食とかに行くと、誰かしら見ている。目撃情報はオレのところにも入っているくらいなのだから。といっても、田中先生と夕食を共にした相手は上司の香川教授一人だった。それ以外ウワサになった人はいないし、東京在住の彼女さんとは京都以外で逢っているのだなぁと思う。
「相談というのは『最近お付き合いしている人と上手く行っていない』というありきたりといえばありきたりな相談だったが、とにかく食事の後のバーで呑みながらアドバイスをした。その頃は飲酒運転に対して世間も警察も今のようにうるさくはなかったので車で送って行った。ただそれだけのことだったが助手席の上部にある日差し避けに携帯電話番号とフルネームを書いた紙を挟んで帰ったのをお母さんが見つけて大騒動になった……。そういうことが三回中三回で、ただ『相談』と言われると病院内部への不満とかそういう医師として関わっていくことが求められる類のモノかもしれないと気軽に応じてきたが、どうもあっちは隙あらば誘おうという気が有ったのではないかと思うようになったな……」
 へーっと思った。今だったら呑んでいる店でLINEの交換とかするのがーーといってもオレにはそんな暇な時間もなければ女性の知り合いもいない。しかもオレに相談してくれるナースも居ない。
 そういう点でも、田中先生は研修医の時から人生・恋愛相談が絶えなかったのだから凄い人だと思った。
 その時。

「香川外科の愉快な仲間たち」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「コメディー」の人気作品

コメント

コメントを書く