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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 52

「大学病院である程度出世してから――いや、そんな雲の上過ぎる教授職にまで就かなくても良いのは言うまでもないが――医師会の会合に出て恥ずかしくないほどのポジションに出世した後にウチのクリニックを継いでもらいたいという希望は常々伝えておいたが。
 大学病院での出世には配偶者の内助の功が絶対に必要だ。
 岡田さんというお嬢さんの学歴は?そして、医師夫人同士の――出来れば教授夫人に交じっても――普通に会話が交わされるほどの教養と嗜みの持ち主なのかね?」
 眉間にくっきり縦ジワを刻んでお父さんは腕を組みなおしている。
 学歴?そういえばそんなものは聞いていない。というか、初デートだってまだなのに、そんなプライベートなことを聞ける機会なんてなかった。
 ただ、香川教授だって――何やら深刻な理由が有って彼女さんと結婚が出来ないというのがもっぱらのウワサだった。左手の薬指に指輪をつけている理由を聞いた、ある意味肝の据わった先生達が得た回答は、教授の憂いを帯びた表情と「約束のしるしです」という一言だけだったのだから。
 香川教授が普段は悲壮な表情を浮かべない人なので、よっぽどの事情が有るのだろうと流石の強者ツワモノそこで追及を止めてしまってそれ以上のことは分からない。
 しかし、独身であるのは間違いないことだし、それがハンディになることもなく教授職だ、しかも病院の至宝とか名物教授とか言われているほどの。
 だから、教授夫人の会で立派に振る舞う配偶者が居なくても充分に一目も二目も置かれている。
「お母さんも知っての通り、ウチの看板教授だって、奥さんは居ないだろ?」
 お母さんが般若みたいな表情を変えないままで口紅を塗った唇を開いた。
「香川教授は、世界的な名声と知名度をアメリカで既に築いていらした方なのよ?
 そこいらの教授とは全く違います。
 アナタは病院から出てもないのだから、同じには出来ません。病院内で出世するには、キチンとした教養を持った女性が必要なの。
 少しお待ちなさい。まだ早いかと思って見せずに来たのだけれども、この際だからっ!!」
 小笠原流――だったと思う――礼儀師範のお免状とか裏だか表だかは忘れたけどとにかく千利休から続く茶道の「何とか千家」の家元の家に通って直々の師範とも思えないほど、乱暴に椅子を蹴って立ち上がったお母さんはリビングから応接室に足音も高く入っていった。
 そして。 

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