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香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 41

「田中先生は確か日本海沿いが実家でしたよね?」
 彼女さんを大切にしているっぽい感じは受けていた。ただ、京都での目撃情報は全く入って来ないので――病院の女性、ナースや事務局勤務まで様々な人間が含まれているので、勤務時間も当然バラバラだ。事務局は残業がない限り定時に上がれるし、土日祝はお休みで、ナースの場合は夜勤などの交代制だし、シフトだってバラバラなので、田中先生と美人な彼女さんのデートは【京都限定】で誰かしらの目に留まるのに、それが一切ない。
 ある意味田中先生は病院内のイケメン医師として、そしてその双璧をなすのが香川教授だが、教授の場合は、雲の上の人ということでナースや事務局の女性は気が引けているので、彼女達からのアプローチはない。
 ウワサではウチの数少ない女性の准教授とか、花嫁修業の一環として名家の令嬢が教授秘書――といっても香川教授の秘書さんは停年だったか、停年間近だかの女性なので対象外だというウワサがある。オレも教授執務室で患者さんからの差し入れの豪華なお弁当をお相伴に与ったことが数回有って、その時に実際香川教授の秘書さんを見かけたことはあるけれども有能そうなキビキビとした動きをしていらしてそんなお年には見えないものの、確かに「恋愛対象年齢」ではないことはオレですら分かった。
 それに香川教授はアメリカ帰りという経歴も相俟って「お嬢様お嬢様」したお飾りの秘書――ちなみに結婚式の時に新婦紹介の時に「医学部教授秘書です」と「お店で服を売っていました」と言うのでは、同じ女性だとしても受ける印象が全く異なるらしい。
 ウチの母もそういう傾向が有って「あそこのお嫁さん、百貨店の店員だった……みたいよ」と眉をしかめて密かに言っているのを聞いたことがあった。その、「……みたいよ」と言った後は後ろめたそうに周りを見回していたが、そういうのも職業差別の一環かもしれない、今思えば。
 だから良家と――京都は土地柄か1千年続く家とかザラにあるのは中高の時の友達にそういう人も居たので身に染みて知っている――結婚が決まった女性が教授とか病院長秘書として転職してくることはザラだった。それまでは好きな職業に就いていてそれなりに充実していたとしても、わざわざ結婚式の時には教授秘書と紹介されたいらしいとお母さんに聞いた覚えが有る。
 ただ、香川教授の場合は実務能力にしか重点を置いてないような感じだった。お母さんの世代では「職場の花」と言ったとぼんやりと記憶しているけれども、そういう見てくれ「だけ」で香川教授が秘書を選ぶことは有り得ない。何しろ手術スタッフだって、そのメンバーはオレごときが見ても皆それぞれの実力は折り紙つきといった感じだったし。
「そうですけれど何か?」
 田中先生のお母さんはぶっちゃけ田舎住まいなのに、バリバリのキャリア、そしてあんなヒールが似合う都会的な女性を連れて行って大丈夫だったのだろうか。
 だから。 

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