香川外科の愉快な仲間たち
久米先生編 「夏事件」の後 19
「まあ、そうだろうな……。久米先生がハマっている、オタク向けかどうか知らんが『百合櫻女学園にようこそ』だっけ?あれってセリフもタップして選べるゲームだもんな。
つまり、言葉を考える必要がない。それにほら好感度を上げるセリフなんて決まっているからな……」
柏木先生が出汁の茶色に染まった卵を二分割しながら茶化すように言った。
「うっ……それはそうなんですけどっ!でも、しかし、オレ……じゃなかった私が必死になってフミオちゃんの好感度を上げたゲームを、私が杉田師長にこき使われている隙を縫ってフミオちゃんの好感度をマイナスにまで下げて下さった田中先生のご厚意は死んでも忘れないと思いました」
普通のスマホアプリで好感度がゼロになることはあるけれど、田中先生が悪戯を仕出かしてくれたゲームはバグなのか好感度がマイナス100まで下がっていた。あの時の絶望感というか(課金したお金返せ―!ついでにつぎ込んだ時間も返せー!!)とマジで殺意が湧いた。
まあ、殺意だけで実行に移さなかったのは田中先生には日頃からお世話になっているし、医師として、そして基本的には人間的にも尊敬できる先輩だったからだ。ま、犯罪を犯すほどの度胸もなければ人間として欠落している部分もない――と自分では思っている。
「ああ、三択なら余裕でしょうね……。何しろセンター入試の時は五択の問題がずらっと並んで、しかもそのテストで10割、最悪で一問ミス程度に抑えておかないとそもそもウチの大学の二次試験が実質受けられないのですから」
田中先生は大好物の柚子胡椒を――特にセブイレがお気に入りだ――キャベツが蕩けかけたロールキャベツに楽しそうに塗りながら言った。ウチの大学の二次試験は、願書さえ出していれば受けることは出来る。しかしその前に受けなければならないセンター入試の点数がほぼ10割ないと合格は貰えないと高校の先生も言っていた。
ああ!田中先生も当然センター試験の洗礼は受けているわけだから、ワザと好感度の下がるセリフを厳選してタップしまくっていたに違いない。たしかあの日は搬送された患者さんのバイタルが杉田師長でも「厳しいわね」と言っていた患者さんを力及ばずで……残念な結果になった日だった。
そしてその患者さんをメインで対応したのは田中先生で、きっとその無念さとか無力さを痛感したに違いない。だからオレのフミオちゃんに八つ当たりをしてしまったのだろう。
「もう、仕方ないですね……匙を投げたいところですが……。可愛い後輩が『彼女居ない歴』に終止符を打つかどうかの瀬戸際です。乗りかかった船という部分もありますので」
さっきのハイヒール騒動で冷めてしまっただろうロールキャベツを一口で食べた田中先生は目に涙を浮かべながら、決然と言った。
それは。
つまり、言葉を考える必要がない。それにほら好感度を上げるセリフなんて決まっているからな……」
柏木先生が出汁の茶色に染まった卵を二分割しながら茶化すように言った。
「うっ……それはそうなんですけどっ!でも、しかし、オレ……じゃなかった私が必死になってフミオちゃんの好感度を上げたゲームを、私が杉田師長にこき使われている隙を縫ってフミオちゃんの好感度をマイナスにまで下げて下さった田中先生のご厚意は死んでも忘れないと思いました」
普通のスマホアプリで好感度がゼロになることはあるけれど、田中先生が悪戯を仕出かしてくれたゲームはバグなのか好感度がマイナス100まで下がっていた。あの時の絶望感というか(課金したお金返せ―!ついでにつぎ込んだ時間も返せー!!)とマジで殺意が湧いた。
まあ、殺意だけで実行に移さなかったのは田中先生には日頃からお世話になっているし、医師として、そして基本的には人間的にも尊敬できる先輩だったからだ。ま、犯罪を犯すほどの度胸もなければ人間として欠落している部分もない――と自分では思っている。
「ああ、三択なら余裕でしょうね……。何しろセンター入試の時は五択の問題がずらっと並んで、しかもそのテストで10割、最悪で一問ミス程度に抑えておかないとそもそもウチの大学の二次試験が実質受けられないのですから」
田中先生は大好物の柚子胡椒を――特にセブイレがお気に入りだ――キャベツが蕩けかけたロールキャベツに楽しそうに塗りながら言った。ウチの大学の二次試験は、願書さえ出していれば受けることは出来る。しかしその前に受けなければならないセンター入試の点数がほぼ10割ないと合格は貰えないと高校の先生も言っていた。
ああ!田中先生も当然センター試験の洗礼は受けているわけだから、ワザと好感度の下がるセリフを厳選してタップしまくっていたに違いない。たしかあの日は搬送された患者さんのバイタルが杉田師長でも「厳しいわね」と言っていた患者さんを力及ばずで……残念な結果になった日だった。
そしてその患者さんをメインで対応したのは田中先生で、きっとその無念さとか無力さを痛感したに違いない。だからオレのフミオちゃんに八つ当たりをしてしまったのだろう。
「もう、仕方ないですね……匙を投げたいところですが……。可愛い後輩が『彼女居ない歴』に終止符を打つかどうかの瀬戸際です。乗りかかった船という部分もありますので」
さっきのハイヒール騒動で冷めてしまっただろうロールキャベツを一口で食べた田中先生は目に涙を浮かべながら、決然と言った。
それは。
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