香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 13

 田中先生が――多少は面白がる気持ちが有ったにせよ――オレのある意味輝かしい記録でもある、年齢イコール彼女居ない歴に終止符を打って欲しいという願いを持っていてくれたことは知っている。
 そうでなければ、デートのお店選びとかタイムススケジュール作成から始まって、アクアマリン姫と医局ではあだ名で呼ばれている岡田看護師の出して来そうな話題を想定して、その模範解答まで作成して、しかもその練習まで付き合ってくれているのが田中先生と柏木先生だった。
 病院一の激務を誇っている――まあ、能力の高さとか問題解決能力が抜きん出て優れている人なので、最終的には上司でもある香川教授とか斉藤病院長までが重用するのも分かるし、結果として仕事が増えていくのだろう――田中先生とか医局のゴタゴタとかを解決すべき立場でもある中間管理職の柏木先生は救急救命室の凪の時間は貴重な休憩時間のハズで、本来ならば寝転がってゴロゴロしていても良いし仮眠を取って疲労を少しでも解消した方が良いに決まっている人達だ。
 柏木先生も下と上に挟まれているとはいえ、香川教授は――オレ自身は畏れ多くてそんなに親しく話したことはないけれど――部下に無茶な要求などせずに、自分の手技で解決しようとする人なので板挟みといった感じでは全くない。ただ、医局の束ね役として、そして、最近は何が有ったのかは知らないが外科全体のまとめ役というか我が医局の地位向上にも打ち込んでいる。
 元々、「世界の」香川教授の手技を慕って患者さんは国内だけでなくて、全額自己負担になる海外からも押し寄せてきていることもあって、ウチの医局が病院の稼ぎ頭だった。
 ただ、香川教授は――そういう点も尊敬に値するのだが――己の手技の研鑚とか患者さんの手術をすることでのQOL向上にしか興味がないような感じで、病院内での地位向上とか教授会での発言力を増そうとかは思ってもいない感じだったので、外科全体とか内科の内田教授が旗頭でもある「医師目線」の病院改革のことにはそれほど熱心でなかったことも事実だった。
 その情勢が変わったのか、外科の親睦会――オレの同級生でもあるが決して友達になろうとか、親しく会話したいと学部生の時から医師になっても微塵も思ったことがない、当時は脳外科の研修医だった井藤が起こしたとんでもない事件のせいで、一気に脳外科がガタガタになったのを、ほとぼりが冷めた時期を見計らって関節の被害者でもあるウチの医局が言い出した「脳外科復権」のための親睦会とかその後の動きのリーダーは柏木先生だった。
 そして。

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