リスタート!!〜人生やり直し計画〜
夢から覚めて
ああ、離れていく…
昔から見ていた顔が…
誰よりも近くにいて欲しい人が…
2016/4/20
朝、拓哉はゆっくり目を覚ました。
怖くて身体を起こせない。身体をおこしてしまえば、全部わかってしまうから。
そうしてしばらく動けずにいると、ふと気づいたことがあった。
「昨日と同じ天井だ…」
そこは紛れもなく、昨日を、いや、それまで一人暮らしをしていた部屋だ。
気を落ち着かせて、上体を起こす。
その身体は少しも縮んでも、ましてや伸びてもいなかった。
「あ、今日は起きてる。どお?具合は?」
その顔を、身体を、目を、鼻を、口を…
昨日と変わらぬ彼女を見て、拓哉の目から頬を伝って涙が落ちた。
「あれ?ちょっと⁉︎ 何泣いてるの?」
こんなんじゃ有沙はまた心配する。そんなことはわかっていた。それでも、止めどなくあふれる涙は熱く拓哉の頬を濡らした。
「ごめんごめん。ちょっと安心して」
「? 何か不安があるの? 相談くらい乗るけど…って昔から話してくれないもんね」
「あはははは…あれ? そういえば昨日、なんだか急激に眠くなったのはなんだったんだろう?」
「ああ、それなら私があなたの飲み物に入れといたの。最近、疲れてるみたいだったから、ゆっくり休めるようにって。拓哉くんは言っても飲まないから」
将来殺された時は、犯人の第一候補に挙がりそうだな…と戦慄しつつ有沙の顔を見ると
しばらく泣き続けてその間、あたふたとうろたえていたその顔は朝からかなり疲れてるように見える。
「ご、ごめんね。朝から疲れさせて…」
「いや、別に平気ならいいんだけど」
(ああ、彼女はいつもそうだ。自分のことを捨て置いて、他人ばかり気にしてる。わざわざ隣に引っ越してきたのだって、俺のためだ。
彼女の本当にしたいことは何だろう…)
拓哉が1人暮らしを始める際、有沙は親の反対もなんとか説得してまで隣に越してきたのであった。
「ん?どうかした?」
拓哉の視線に気づいた有沙は不思議そうな顔をしていた。
「あ、いや、何でも…」
未だに頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる有沙を見て、拓哉には1つ大きな考えが生じてしまった。
「じゃあ、行ってくるね」
今日は午後からの拓哉は先に出る有沙を見送っていた。
「いってらっしゃい」
「まあ、無理しないでね」
「平気だってば」
無理もない。ここ数日の拓哉は完全に挙動不審である。そんなこんなで、有沙と別れた拓哉も家を出ることにした。ある決意を胸に。
「着いた」
目的地に着いた拓哉はキョロキョロと周りを見渡し始めた。
そこは何もない路地だった。
拓哉前回と同じ場所を探す。緑生い茂る林の下で光る石、願い石と呼ばれるものを見つけた。そこで、拓哉は3度願いをかけた。
(できることなら、もう一度彼女のためにチャンスをください)
拓哉なりに色々と考えた結果だった。
(これまでの記憶を見ても、有沙は僕のことをずっと支えてくれた。いつも1番近くにいてくれた。
そんな彼女のことが本当に心の底から好きだった。
この気持ちが芽生えたのは、時間を飛んでくる前だったけど、その気持ちは今も変わらず、ここにある。
でも……)
その日の夜、夕食の片付けまでを終えた拓哉は決心をつけた。
確信はなかったが、なんとなくそうなる気がしてたので、それまでの雑談を切り上げ、話を持ちかける。
「ねぇ、有沙ちゃん。変な話してもいい?」
「ん?なに?」
もし仮にあの石の力が本当で、それでいてまた時間を移動して幼い頃に戻れたとしたなら、そして、彼のやりたいこと、やるべきことを成し遂げたなら、ひとつだけ確かなことがある。
もう…この時には戻ってこれないということ。
始めの時もそうだった。過去で1日だけで、戻ってきた「現在」は全く知らない世界になっていた。
ならば、暖かくて、優しくて、幸せなこの時には戻ってこられない。
それでも、
叶えたい願いが、幸せを願う人がいた。
だから、
「なんて言うか、もうここには帰ってこれないかもしれない」
「え?」
「君との楽しいこんな生活も、もうこれからはないかもしれない」
「ちょ、ちょっと待って…それって…」
「うん。お別れだね」
今にも崩れそうな有沙の顔を見ても、その願いは揺らがなかった。
「そん…な…私なにかした? 昨日とか、心配しすぎて、鬱陶しかった?」
「いいや?」
「じゃあ、ずっと付きまとわれて面倒だった?」
「いいや?」
「じゃあ!元々私のこと、嫌い…だったの?」
「そんな訳ない!!」
「だったら、どうして…」
「僕がそう願うからだよ」
「え?」
そこにある有沙の顔はいつものちょっと幼めな顔でも、時々見せる大人っぽい顔でもなかった。体験はしていないけど、確かに残ってる記憶の中のどんな顔とも違っていた。
心からの悲しみに染まる顔。
運動会で負けた時も、みんなにからかわれてバカにされた時も、アイスの当たり棒落とした時だって、1度もしたことなかった顔。
こんな顔させてしまったことを心から自分が憎らしいと思う拓哉だったが、それでも拓哉は譲らない。
「僕は君に自分の夢を追ってほしい!」
それが、心からの願いで、思いで…
「自分の人生を生きて、他人になんて影響されないで、本当にやりたいことをやってほしい」
「私は!私はあなたの隣にいれればいいの!それが願いなの!それが私のやりたいことなの!」
感情のままに悲痛な叫びをあげる有沙の頭を拓哉はそっと撫でる。
「ごめんね。それは、僕が願ったことなんだ。だから、新しい世界で自分の力で見つけてよ」
「私、そんなに強くない。いっつもあなたの裏に隠れてた。ううん。違う。私の居場所で、拠り所で、助けであってくれる拓哉にずっと甘えてた。私はきっと何もできないよ…」
自分の弱さに、今までずっと避けてきた思いに弱気な言葉を吐きだす。
それでも、拓哉は…
「そんなことないよ。きっとあるさ。なんだかんだで、君はなんだってできるじゃないか? だから、平気だよ」
それを簡単に否定してみせた。
「でもさ、これだけは覚えていてほしい! 」
この会話を始めてから初めて拓哉が大きな声を出した。
「僕はずっと君のことが好きだよ…これまでも、これからも。だから、どこかで自分の願いを叶えた君を必ず見つけだして、また会いに行く」
拓哉の力強い宣言は続く。
「だから…それまで、待っててくれ。精一杯自分の人生を楽しんで、夢を叶えた時、また会おう」
拓哉は頭を撫でていた手を有沙の方へと差し出した。
有沙は迷わずその手を取る。
「よくわかんないよ。何言ってるか、全然わかんない。でもさ、私、待ってるから。いつまでも…」
その言葉を聞いて拓哉は最後の執着心を振り払う。
「じゃあ、本当にここでさよならだね」
「うん…」
「ん? どうかしたの?」
もじもじと何か言いにくそうにする有沙に拓哉も遠慮なく声をかける。有沙がこういう態度をみせる時は、何か伝えようとしている時だ。
「いや、あの…今日はこっちに泊まってても、いい?」
普段なら顔を真っ赤にして照れるかもしれないが今は違う。今だけは、彼女の考えがまるで自分の事のようにわかった。
「うん。いいよ」
もし本当に最後なら、最後くらいは一緒にいたい。それは拓哉も同じだった。
部屋の明かりを消し、ベットでは狭いので、布団を2枚ひく。
それぞれ、1枚の布団の中におさまり、掛け布団をかぶる。
「ねぇ」
「うん?」
「ありがとう。君に会えて、本当に良かったよ」
「あはは。今更何言ってるの?」
「うん。そうだよね…」
「そうだよ…」
「ありがとう。さようなら」
(輝かしい日々よ)
そこで会話は途切れ、2人は吸い込まれるように眠りについた。
昔から見ていた顔が…
誰よりも近くにいて欲しい人が…
2016/4/20
朝、拓哉はゆっくり目を覚ました。
怖くて身体を起こせない。身体をおこしてしまえば、全部わかってしまうから。
そうしてしばらく動けずにいると、ふと気づいたことがあった。
「昨日と同じ天井だ…」
そこは紛れもなく、昨日を、いや、それまで一人暮らしをしていた部屋だ。
気を落ち着かせて、上体を起こす。
その身体は少しも縮んでも、ましてや伸びてもいなかった。
「あ、今日は起きてる。どお?具合は?」
その顔を、身体を、目を、鼻を、口を…
昨日と変わらぬ彼女を見て、拓哉の目から頬を伝って涙が落ちた。
「あれ?ちょっと⁉︎ 何泣いてるの?」
こんなんじゃ有沙はまた心配する。そんなことはわかっていた。それでも、止めどなくあふれる涙は熱く拓哉の頬を濡らした。
「ごめんごめん。ちょっと安心して」
「? 何か不安があるの? 相談くらい乗るけど…って昔から話してくれないもんね」
「あはははは…あれ? そういえば昨日、なんだか急激に眠くなったのはなんだったんだろう?」
「ああ、それなら私があなたの飲み物に入れといたの。最近、疲れてるみたいだったから、ゆっくり休めるようにって。拓哉くんは言っても飲まないから」
将来殺された時は、犯人の第一候補に挙がりそうだな…と戦慄しつつ有沙の顔を見ると
しばらく泣き続けてその間、あたふたとうろたえていたその顔は朝からかなり疲れてるように見える。
「ご、ごめんね。朝から疲れさせて…」
「いや、別に平気ならいいんだけど」
(ああ、彼女はいつもそうだ。自分のことを捨て置いて、他人ばかり気にしてる。わざわざ隣に引っ越してきたのだって、俺のためだ。
彼女の本当にしたいことは何だろう…)
拓哉が1人暮らしを始める際、有沙は親の反対もなんとか説得してまで隣に越してきたのであった。
「ん?どうかした?」
拓哉の視線に気づいた有沙は不思議そうな顔をしていた。
「あ、いや、何でも…」
未だに頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる有沙を見て、拓哉には1つ大きな考えが生じてしまった。
「じゃあ、行ってくるね」
今日は午後からの拓哉は先に出る有沙を見送っていた。
「いってらっしゃい」
「まあ、無理しないでね」
「平気だってば」
無理もない。ここ数日の拓哉は完全に挙動不審である。そんなこんなで、有沙と別れた拓哉も家を出ることにした。ある決意を胸に。
「着いた」
目的地に着いた拓哉はキョロキョロと周りを見渡し始めた。
そこは何もない路地だった。
拓哉前回と同じ場所を探す。緑生い茂る林の下で光る石、願い石と呼ばれるものを見つけた。そこで、拓哉は3度願いをかけた。
(できることなら、もう一度彼女のためにチャンスをください)
拓哉なりに色々と考えた結果だった。
(これまでの記憶を見ても、有沙は僕のことをずっと支えてくれた。いつも1番近くにいてくれた。
そんな彼女のことが本当に心の底から好きだった。
この気持ちが芽生えたのは、時間を飛んでくる前だったけど、その気持ちは今も変わらず、ここにある。
でも……)
その日の夜、夕食の片付けまでを終えた拓哉は決心をつけた。
確信はなかったが、なんとなくそうなる気がしてたので、それまでの雑談を切り上げ、話を持ちかける。
「ねぇ、有沙ちゃん。変な話してもいい?」
「ん?なに?」
もし仮にあの石の力が本当で、それでいてまた時間を移動して幼い頃に戻れたとしたなら、そして、彼のやりたいこと、やるべきことを成し遂げたなら、ひとつだけ確かなことがある。
もう…この時には戻ってこれないということ。
始めの時もそうだった。過去で1日だけで、戻ってきた「現在」は全く知らない世界になっていた。
ならば、暖かくて、優しくて、幸せなこの時には戻ってこられない。
それでも、
叶えたい願いが、幸せを願う人がいた。
だから、
「なんて言うか、もうここには帰ってこれないかもしれない」
「え?」
「君との楽しいこんな生活も、もうこれからはないかもしれない」
「ちょ、ちょっと待って…それって…」
「うん。お別れだね」
今にも崩れそうな有沙の顔を見ても、その願いは揺らがなかった。
「そん…な…私なにかした? 昨日とか、心配しすぎて、鬱陶しかった?」
「いいや?」
「じゃあ、ずっと付きまとわれて面倒だった?」
「いいや?」
「じゃあ!元々私のこと、嫌い…だったの?」
「そんな訳ない!!」
「だったら、どうして…」
「僕がそう願うからだよ」
「え?」
そこにある有沙の顔はいつものちょっと幼めな顔でも、時々見せる大人っぽい顔でもなかった。体験はしていないけど、確かに残ってる記憶の中のどんな顔とも違っていた。
心からの悲しみに染まる顔。
運動会で負けた時も、みんなにからかわれてバカにされた時も、アイスの当たり棒落とした時だって、1度もしたことなかった顔。
こんな顔させてしまったことを心から自分が憎らしいと思う拓哉だったが、それでも拓哉は譲らない。
「僕は君に自分の夢を追ってほしい!」
それが、心からの願いで、思いで…
「自分の人生を生きて、他人になんて影響されないで、本当にやりたいことをやってほしい」
「私は!私はあなたの隣にいれればいいの!それが願いなの!それが私のやりたいことなの!」
感情のままに悲痛な叫びをあげる有沙の頭を拓哉はそっと撫でる。
「ごめんね。それは、僕が願ったことなんだ。だから、新しい世界で自分の力で見つけてよ」
「私、そんなに強くない。いっつもあなたの裏に隠れてた。ううん。違う。私の居場所で、拠り所で、助けであってくれる拓哉にずっと甘えてた。私はきっと何もできないよ…」
自分の弱さに、今までずっと避けてきた思いに弱気な言葉を吐きだす。
それでも、拓哉は…
「そんなことないよ。きっとあるさ。なんだかんだで、君はなんだってできるじゃないか? だから、平気だよ」
それを簡単に否定してみせた。
「でもさ、これだけは覚えていてほしい! 」
この会話を始めてから初めて拓哉が大きな声を出した。
「僕はずっと君のことが好きだよ…これまでも、これからも。だから、どこかで自分の願いを叶えた君を必ず見つけだして、また会いに行く」
拓哉の力強い宣言は続く。
「だから…それまで、待っててくれ。精一杯自分の人生を楽しんで、夢を叶えた時、また会おう」
拓哉は頭を撫でていた手を有沙の方へと差し出した。
有沙は迷わずその手を取る。
「よくわかんないよ。何言ってるか、全然わかんない。でもさ、私、待ってるから。いつまでも…」
その言葉を聞いて拓哉は最後の執着心を振り払う。
「じゃあ、本当にここでさよならだね」
「うん…」
「ん? どうかしたの?」
もじもじと何か言いにくそうにする有沙に拓哉も遠慮なく声をかける。有沙がこういう態度をみせる時は、何か伝えようとしている時だ。
「いや、あの…今日はこっちに泊まってても、いい?」
普段なら顔を真っ赤にして照れるかもしれないが今は違う。今だけは、彼女の考えがまるで自分の事のようにわかった。
「うん。いいよ」
もし本当に最後なら、最後くらいは一緒にいたい。それは拓哉も同じだった。
部屋の明かりを消し、ベットでは狭いので、布団を2枚ひく。
それぞれ、1枚の布団の中におさまり、掛け布団をかぶる。
「ねぇ」
「うん?」
「ありがとう。君に会えて、本当に良かったよ」
「あはは。今更何言ってるの?」
「うん。そうだよね…」
「そうだよ…」
「ありがとう。さようなら」
(輝かしい日々よ)
そこで会話は途切れ、2人は吸い込まれるように眠りについた。
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