第5章 6話 VSウェスキンス

奥の扉を開けると、ウェスキンスが待っていた。サングラスを外した目は、ゾンビ達と同じ様に赤く血走っている

ウェスキンス「ここに来たって事は、ズミールを倒したか」

乃亜「思ったほど強くなかったね」

乃亜がサラッと言ったのを聞くと、「ふぅ」と溜め息を1つしてからウェスキンスは俺達をじっと見た。さっきまで血走っていたその目は、今度は悪魔のように真っ黒になっている

魁人「勝ったら何かもらえるかい？」

魁人が悪戯いたずらじみた笑顔で、しかし大真面目な目でウェスキンスに聞いた。するとウェスキンスは数秒考えて

ウェスキンス「………いいだろう。もしもお前らが勝ったら、この地図を渡してやる。」

乃亜「地図…？」

ウェスキンス「そう、地図さ。この悪夢の発端となった『ティノーラバイオ研究所』の最初の犠牲者5人の『居場所』が記されてる…」

斗哉「な！？」

果萌「『ティノーラバイオ研究所』…あのセルド･ティノーラ博士の！？」

ウェスキンス「ふっ…さあ、始めようか。お前らが負けてゾンビになるか、俺が負けて世界が生き返るか、最後の闘いだ…」

俺達が銃を構えると、ウェスキンスの両腕と口からゾンビ達をそのまま付けた様な触手が出てきた

5人「！？」

魁人「そういう事か…奴も感染者なんだ…」

乃亜「え！？」

ウェスキンス「その通り。俺は上手くウイルスを取り込んで、こうして力にできているがな。他の連中は弱すぎる。だから自分の意志と反して、あんなにも愚かで醜い姿になってしまっている」

斗哉「そんな事はどうでもいい。お前を倒せば、全ての悪夢が終わる…」

ウェスキンス「さあ、御託はこれくらいにして、勝負を付けようか」

ウェスキンスは言い終わるが早いか、俺達に向かってきた。1番に斗哉が狙われ、斗哉がM4で触手を撃ち返そうとすると…

その触手はピシュッ、と銃弾をいとも簡単に取り込んだ

斗哉「えっ…うあぁ！」

そして斗哉は凄まじい腕力でウェスキンスの後ろに投げ飛ばされてしまった

乃亜「斗哉！」

湊音「乃亜！よそ見してんな！」

乃亜「えっ？…きゃあぁ！」

間髪入れずに、乃亜が同じ様に投げ飛ばされる。2人とも床に頭を打ったのか、動かない

湊音「くっそ、どうすれば…」

ウェスキンス「『どうする』だ？どうもできないんだよ、お前達は」

ウェスキンスはそう言うと、下品に笑う。その触手は、今度は果萌に向けられていた

果萌「ひっ…」

果萌は最早涙目になっている

魁人「(待てよ…考えろ…考えるんだ…)」

魁人が瞬時に部屋を見回す。そして、ソレを見つけた

魁人「(あれは！…よし、いける)
おーい！まずは俺から倒せよ！」

挑発気味に魁人が大声で言った

ウェスキンス「ほう…じゃあ、お望み通りにしてやる！」

ウェスキンスが魁人の挑発に乗り、目には見えにくい程のスピードで魁人に向けて触手を振った

魁人「(きた！)」

魁人は目を凝らして触手の動きを見切ると、ソレにM67手榴弾を当てた。バハァン！と言う音とともに、反動で触手が後ろに大きく仰け反る。と、その先に電線が内蔵された配管があった。魁人はそこに走り、触手が触れるよりも早く、E447ナイフで配管を少し壊して電線を剥き出しにさせた。そして、瞬時にその場に身を屈める

すると………

ビリビリビリビリ！と、電線とウェスキンスの触手が接触して感電を起こした

ウェスキンス「ぐあぁぁーーーーー！」

ウェスキンスは数秒間感電すると、倒れて痙攣した。目は白目を剥き、口は半開きになっている。ソレの口に俺のグロック18Cと果萌のTEC-9で猛銃撃を加える

ウェスキンスは体を跳ねさせ、数十秒続けると動かなくなり、溶けていった

魁人「やった…」

果萌「よ、よかったぁ…」

湊音「勝ったん…だよな…」

3人で少し脱力して、それから乃亜と斗哉を起こした。幸い、頭を軽く打って気を失っていただけらしかった