私の相棒の過度なスキンシップには意味あるのか?

藤井 夏希(悪忍)

前日譚

「君達2人には、このゲームのテストをしてもらいたい」

ここは監禁にでも使われそうなぐらい風情の欠片も無い場所。
そこまで広くはないが、何にもない為、広く感じてしまう。
私達はこの場所には何百回も来たが、今回は見た事も無いような機械が
2台、少し離れて並んでいる。
隣に居る相棒を見てみると瞳は真っ直ぐだが、口元から緊張が伺えた。

最近の機械技術は驚く程に発展している。例えばコンビニなんて、
今や店員は機械だ。支払いでは現金なんて使う人は居なくなったし、
学校に通わずに家で通信教材で学ぶことが出来る。そしてゲームでは、
意識だけで無く、体ごとゲームの世界に入る事も出来る。メカニズムは分からない。しかし、問題もある。ゲームの中に居続ける為、いつの間にか餓死している等の事件が多くなった。しかし、ゲームの売上は伸び続ける。

話を変えよう。私、穂村 響(ほむら ひびき)と、新緑 飛乃
(しんりょく あすの)はゲームテスターだ。ゲームに不具合などが生じた時に、ゲームの中に入り、不具合を解決する。実を言うとその作業は「命懸け」だ。
私の3つ上の先輩は不具合の修復中、ゲーム内の敵に殺された。
飛乃の1つ上の先輩はゲームから出られなくなって餓死した。
私達は壊れている。こんなに恐ろしい職業を辞めたいと思わないのだ。

飛乃「なんて言うゲームです?」
飛乃の問いに会社のお偉いさんの安曇野(あづみの)が答える。
安曇野「これだ」
安曇野はゲームのパッケージを飛乃ではなく私に差し出す。
「                」
なんと、そのゲームパッケージにはタイトルが書いていなかった。
響「・・・タイトルは?」
安曇野「実は、まだ開発途中でな。発売日未定なんだ」
飛乃の顔がますます曇る。
安曇野「・・・テストを引き受けてくれるかね?」
私達は沈黙した。どれ位かの時が経った。
安曇野「既にこのゲームの中には他社のテスターが入っている。たしか・・・4人だったよ」
私は何とか私達を説得しようとしている安曇野に怒鳴る。
響「お断りだ。まだ発売されていないゲームなんて、何が起こるか分かったものじゃない」
私は立ち去ろうとする。すると飛乃が腕を掴んできた。
飛乃「私は、この仕事をうけるよ。」
私は飛乃を振りほどく。
響「やめとけ。死ぬぞ」
その言葉は私の本音だった。死ぬ。それならば人は逃げるだろう。
飛乃「別にいいじゃん。・・・私達はどうせ3年前に×××でしょ?」
固まる。瞬きをすることも忘れた。そうだ。私達は3年前に・・・
響「いいだろう、安曇野。その仕事、了解した。」

私達はゲーム内に入る為に準備をした。シャワーに入って、軽食をとり、制服に着替える。

そして・・・

目を開くと、私達は大草原に放り投げられていた。

・・・私は飛乃と出会ってから初となる飛乃の本性を見ることになる。

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