君の瞳の中で~We still live~
我
「覚元和仁、ようやく現れたな」
間の祖は全く感情のない声でそう言った。だが、確かに、待っていたことは伝わった。
「お前が何者か、どうだっていい。似非大治は、俺たちの仇だ。お前が殺していいわけがない」
「何を言う。人を殺すことをあれだけ嫌がっていたお前の代わりに、真の仇を殺してやったのだ。礼の一つをくれてもいいところだが」
それとも、と言って、その赤と青のどこか神々しい目で、間の祖は、和仁を見つめた。
「人間は殺したくないのに、鳩は殺したいか……相当な差別だな。この世界の柱がこのようでは、この世界は幸せにはならない」
返す言葉もなく、和仁はぎゅっと唇を噛みしめる。
「我は、お前の在り方を問いている。貴様、いや、お前が、この世界の人々の幸せを願うなら、そのために、悪と対峙するのなら、人間を、そして、自分の親すら殺す覚悟をつけなければならない」
「何……?」
「先ほどの一撃は、何のためにあった? 我が、いや、仇を殺した俺が憎いか。だとすれば、なかなか刺さるものがあった。悪くはない一撃だっただろう」
確かに、切る、という概念を、和仁は間の祖に突き刺した。それは、敵だと思ったと同時に、仇をあっけなく殺してしまったことへの一瞬の激昂だった。
しかし、その一撃は、間の祖にとっては、どうというわけでもなかった。いや、受け止めた、が正しいだろうか。
「この世界は、とある正史から分岐した世界だ。創造の神が、ただ一人の人間と結ばれたいがために、作り上げた世界。その際に生じる様々なズレを、すべて解消し、そして、新たな世界を作り上げるために、創造の神は、この世界の柱を立てた。それがお前だ、覚元和仁」
「それは、理解している。世界と繋がる俺には、この先の未来を決める決定権がある」
「そうだ、それは、お前がこの戦いでどういった結末をたどるか、それに由来する。故に、お前は、この戦いで自分の在り方を決めなければならない。そうだ、お前は、どういった世界を望み、どうありたいのか」
「それは……」
そう言われて、和仁は言葉を詰まらせる。平和な世界を望んだ。もう、これ以上、大切な人が死なない世界を望んだ。できることなら、死んだ人が返ってくることを望んだ。
怜治、日和は、自分の瞳の中で生きている。本当の意味で、生きているのだ。だが、父と母はどうだろうか。本当の意味では生きていない。記憶の中に確かにとどめていても、瞳にその姿が浮かんでも、生きてはいないのだ。ましてや、父親など見たこともない、どうあったかも知らない。
2年前、すべての事件の真相を知った。だがしかし、自分が生まれたときの事件は、あいにく知ることがなかった。亮治からも、聞いてはいない。自分の父親がどうであったかを知らないのだ。
記憶にすらない、存在を知らない、家族全員が、生きているとは到底言えない。
自分が世界の柱なら、どうして、自分の大切な人は死ぬのだろうか。父も母も、これ以上先の未来にはいないのだ。
そうだ、ならば実体がないなら、怜治も日和も生きていない。ならば、覚元和仁が望むものは……
「世界を、やり直したい。父親の死から、やり直したい。俺は父親を知らない、みんな死んでいるんだ。瞳の中で生きるなんて嘘だ。結局、姉ちゃんも、怜治もいるけども、それは本当に生きているとは言えない。戸籍ではもう死んでいるんだ。だから、始まり、どこまでも始まりに還って、すべてをやり直す、それこそが俺の本当の願いだ」
すると、間の祖はどこかあきらめの視線を向けた。
「残念だが、お前は柱であって、創造主ではない。故に、お前がその間違いのすべてを正すことはできない。恨むなら、創造の神を恨め。創造の神が願わなければ、こんなことにはならなかったのだから」
「そんな……」
涙を押し殺すようなかすれた声で、和仁は声を絞り出す。
「そんなの、恨みの連鎖じゃないか! どこまで恨めば終わるんだ。どこまで恨めば、どこまで殺せば、俺は救われる!」
「どこまで恨んでも、お前は救われない。どれだけ理想を願っても、お前は救われない。それがお前という運命なのだ」
無慈悲にも、間の祖はそれを告げる。わかり切ってはいた、でも割り切れなかったんだ。どこかで、叶うんじゃないかって、どこかで救われるんじゃないかって。でもそれも無駄だった。
その時、久々に、水底から引きずり込まれる感覚に襲われた。深い、暖かかくも、塩辛い、暗い水の中へ沈んでいく。そこには、確かに「もう一人の覚元和仁」がいた。
「ようやくそれを理解した? 君の物語は、最初から、敷かれたレールの上しか走れないんだ。そうだ、分岐のないストーリーゲームのようにね」
「最初から、お前はそれを知っていたのか、俺」
「そうだよ。そのうえで見ていた。やはり、あるべき未来に導くしかないようだ。どうあがいても、君の未来は変わらない」
「あるべき未来?」
そういったその時だ、もう一人の覚元和仁は、和仁の首を思いきり絞める。
「唯一の未来さ、お前だってわかってるんじゃないのか?」
「お前の歩んだ……未来のお前が歩んだ……未来?」
息ができなかった。息ができたはずの水の中で、息ができない。まるで溺れるように、和仁はもがき苦しみ始めた。
この覚元和仁の心象世界ですら、覚元和仁を拒み始めていた。
「俺が歩んだ未来を教えてやるよ、この世界の覚元和仁!」
その首を締めあげながら、薄暗い闇の中で、赤と青の目を輝かせ、今までにないような、悪魔のように顔を歪ませ、和仁を睨みつける。
「俺は一周前の世界で、自らの運命に絶望し、この世界を破壊したんだ。あぁ、前の世界でも、俺の役割は、お前と変わらなかったさ。ただ唯一違ったのは、世津達見が世界の欠片を持たなかった。俺だけが世界の欠片を持ち……そうだ、これが本来あるべき正しい世界だったのさ!」
もう一人の覚元和仁は、右手を放し、その手に世界の欠片であるナイフを持った。
「だが、お前と同じような運命をたどったんだ。世界の異常は、俺の存在によって起こっていたんだ。だからこそ、俺はその世界を……滅ぼしたんだ!」
ナイフを握り締め、血眼で睨みつけ、左手で尚も首を絞め続ける。
「そして、俺という特殊な存在が二度と存在しないように、俺は存在を「世界」に刻んだ。こうして、二周目の世界のどこにも「覚元和仁」という存在は生まれないはずだった。だが、コスモが無理やり「世界」の記録から引きずり出し、この世界に覚元和仁を作った。そうだ、俺が望まなかった悲しみが、また連鎖したんだ! これを許せるか、許せるはずがないだろう!」
ついに、ナイフを振り上げる。
「だから、殺すんだ。お前という存在を、この「殺す」の概念を形にしたナイフで殺してやる。それか、お前が世界を破滅させるか、そのどちらかだ! 選べ、俺、いや、複製された、覚元和仁!」
選べなかった。そうか、自分は、複製された存在だったんだ。その事実を知った和仁は、どこか絶望していた。死んでもいい気がした、世界を滅ぼしてもいい気がした。だが、どちらも駄目だと思った。いろんな人の思いを背負って、ここにいるのに、死ぬことが許されるのだろうか。仇を取るためにも生きると誓った。でも、その仇なんて、どこまでたどればいいのか、途方もなかった。
滅ぼしたら、いっそ楽だった。世界を作り直せば、理想が作れるんじゃないか、そう思った。だが、それも駄目だと思った。自分が生きてほしいすべての人が生きる世界に、覚元和仁という存在はいてはならない。
俺に、世界は選べないんだ。こんなことを願うくらいなら、最初から存在しないのが正解だった。それを実行していたのが、もう一人の覚元和仁だった。世界一つ分の悲しみを、自分一人で背負ったんだ。
自分にできることは何だろう。和仁はおぼろげな意識の中、泣きながら考えていた。
その時、世界は突如暗転する。次に映った景色は、さっきの、間の祖の目の前だった。そこに、和仁と、もう一人の覚元和仁はいた。初めてもう一人の覚元和仁は、この世界に実体を持った。
「覚元和仁、お前に問おう。お前はこの世界の覚元和仁を殺すのか」
「当たり前だ。間の祖、俺が見た時とは少々見た目が違うが、確かにそうだな。お前も思うだろう。この世界は、滅ぶべきだと」
気を緩めたのか、もう一人の覚元和仁は、和仁から手を放した。
「確かに、この世界は堕落している。分岐ということもあって、この世界はあるべき世界の歴史から外れている。正しい世界ではない」
「そうか、ならば、俺の考えには同意だろう」
「いいや、同意はしない」
間の祖は無表情だが、しかしはっきりと告げた。
「……何?」
「どうあがいても、覚元和仁は、幸せになれない。そんな世界は作れない。だが、未来で幸せになる、そんな世界は本当に作れないのだろうか。過去に固執し、未来が見えず絶望した、そんなものは、幸せにはならない」
間の祖は一つ間をおいて、話をつづけた。
「だが、もし、この世界の覚元和仁が、未来に幸せを見出すならば、一周目の世界と、違った結末があるのではないか」
「……あるわけがない、覚元和仁という存在を世界に刻んだ時点で、違う可能性はないのだと、俺は知ったんだ」
「だが、それは過去の話。俺がしているのは、このまま世界を破滅させないで紡ぐ、未来の話だ」
その口調に、もう一人の覚元和仁も、和仁も、疑問を抱いた。次第にその口調は固いものから、崩れていっている。
「お前は、誰だ?」
もう一人の覚元和仁の問いかけに、間の祖はうっすらと笑みを浮かべる。
「お前たちの知る、一番知らない人物だよ、和仁。何のために世界は、二周目に入ったのか、考えてみるといい」
「黙れ……間の祖、お前すら、お前でなくなったのか?」
「そうではないな、少々、こちらの都合でね」
次の瞬間には、もう一人の覚元和仁の放ったナイフを、間の祖は、羽で挟むように受け止めた。
間の祖は全く感情のない声でそう言った。だが、確かに、待っていたことは伝わった。
「お前が何者か、どうだっていい。似非大治は、俺たちの仇だ。お前が殺していいわけがない」
「何を言う。人を殺すことをあれだけ嫌がっていたお前の代わりに、真の仇を殺してやったのだ。礼の一つをくれてもいいところだが」
それとも、と言って、その赤と青のどこか神々しい目で、間の祖は、和仁を見つめた。
「人間は殺したくないのに、鳩は殺したいか……相当な差別だな。この世界の柱がこのようでは、この世界は幸せにはならない」
返す言葉もなく、和仁はぎゅっと唇を噛みしめる。
「我は、お前の在り方を問いている。貴様、いや、お前が、この世界の人々の幸せを願うなら、そのために、悪と対峙するのなら、人間を、そして、自分の親すら殺す覚悟をつけなければならない」
「何……?」
「先ほどの一撃は、何のためにあった? 我が、いや、仇を殺した俺が憎いか。だとすれば、なかなか刺さるものがあった。悪くはない一撃だっただろう」
確かに、切る、という概念を、和仁は間の祖に突き刺した。それは、敵だと思ったと同時に、仇をあっけなく殺してしまったことへの一瞬の激昂だった。
しかし、その一撃は、間の祖にとっては、どうというわけでもなかった。いや、受け止めた、が正しいだろうか。
「この世界は、とある正史から分岐した世界だ。創造の神が、ただ一人の人間と結ばれたいがために、作り上げた世界。その際に生じる様々なズレを、すべて解消し、そして、新たな世界を作り上げるために、創造の神は、この世界の柱を立てた。それがお前だ、覚元和仁」
「それは、理解している。世界と繋がる俺には、この先の未来を決める決定権がある」
「そうだ、それは、お前がこの戦いでどういった結末をたどるか、それに由来する。故に、お前は、この戦いで自分の在り方を決めなければならない。そうだ、お前は、どういった世界を望み、どうありたいのか」
「それは……」
そう言われて、和仁は言葉を詰まらせる。平和な世界を望んだ。もう、これ以上、大切な人が死なない世界を望んだ。できることなら、死んだ人が返ってくることを望んだ。
怜治、日和は、自分の瞳の中で生きている。本当の意味で、生きているのだ。だが、父と母はどうだろうか。本当の意味では生きていない。記憶の中に確かにとどめていても、瞳にその姿が浮かんでも、生きてはいないのだ。ましてや、父親など見たこともない、どうあったかも知らない。
2年前、すべての事件の真相を知った。だがしかし、自分が生まれたときの事件は、あいにく知ることがなかった。亮治からも、聞いてはいない。自分の父親がどうであったかを知らないのだ。
記憶にすらない、存在を知らない、家族全員が、生きているとは到底言えない。
自分が世界の柱なら、どうして、自分の大切な人は死ぬのだろうか。父も母も、これ以上先の未来にはいないのだ。
そうだ、ならば実体がないなら、怜治も日和も生きていない。ならば、覚元和仁が望むものは……
「世界を、やり直したい。父親の死から、やり直したい。俺は父親を知らない、みんな死んでいるんだ。瞳の中で生きるなんて嘘だ。結局、姉ちゃんも、怜治もいるけども、それは本当に生きているとは言えない。戸籍ではもう死んでいるんだ。だから、始まり、どこまでも始まりに還って、すべてをやり直す、それこそが俺の本当の願いだ」
すると、間の祖はどこかあきらめの視線を向けた。
「残念だが、お前は柱であって、創造主ではない。故に、お前がその間違いのすべてを正すことはできない。恨むなら、創造の神を恨め。創造の神が願わなければ、こんなことにはならなかったのだから」
「そんな……」
涙を押し殺すようなかすれた声で、和仁は声を絞り出す。
「そんなの、恨みの連鎖じゃないか! どこまで恨めば終わるんだ。どこまで恨めば、どこまで殺せば、俺は救われる!」
「どこまで恨んでも、お前は救われない。どれだけ理想を願っても、お前は救われない。それがお前という運命なのだ」
無慈悲にも、間の祖はそれを告げる。わかり切ってはいた、でも割り切れなかったんだ。どこかで、叶うんじゃないかって、どこかで救われるんじゃないかって。でもそれも無駄だった。
その時、久々に、水底から引きずり込まれる感覚に襲われた。深い、暖かかくも、塩辛い、暗い水の中へ沈んでいく。そこには、確かに「もう一人の覚元和仁」がいた。
「ようやくそれを理解した? 君の物語は、最初から、敷かれたレールの上しか走れないんだ。そうだ、分岐のないストーリーゲームのようにね」
「最初から、お前はそれを知っていたのか、俺」
「そうだよ。そのうえで見ていた。やはり、あるべき未来に導くしかないようだ。どうあがいても、君の未来は変わらない」
「あるべき未来?」
そういったその時だ、もう一人の覚元和仁は、和仁の首を思いきり絞める。
「唯一の未来さ、お前だってわかってるんじゃないのか?」
「お前の歩んだ……未来のお前が歩んだ……未来?」
息ができなかった。息ができたはずの水の中で、息ができない。まるで溺れるように、和仁はもがき苦しみ始めた。
この覚元和仁の心象世界ですら、覚元和仁を拒み始めていた。
「俺が歩んだ未来を教えてやるよ、この世界の覚元和仁!」
その首を締めあげながら、薄暗い闇の中で、赤と青の目を輝かせ、今までにないような、悪魔のように顔を歪ませ、和仁を睨みつける。
「俺は一周前の世界で、自らの運命に絶望し、この世界を破壊したんだ。あぁ、前の世界でも、俺の役割は、お前と変わらなかったさ。ただ唯一違ったのは、世津達見が世界の欠片を持たなかった。俺だけが世界の欠片を持ち……そうだ、これが本来あるべき正しい世界だったのさ!」
もう一人の覚元和仁は、右手を放し、その手に世界の欠片であるナイフを持った。
「だが、お前と同じような運命をたどったんだ。世界の異常は、俺の存在によって起こっていたんだ。だからこそ、俺はその世界を……滅ぼしたんだ!」
ナイフを握り締め、血眼で睨みつけ、左手で尚も首を絞め続ける。
「そして、俺という特殊な存在が二度と存在しないように、俺は存在を「世界」に刻んだ。こうして、二周目の世界のどこにも「覚元和仁」という存在は生まれないはずだった。だが、コスモが無理やり「世界」の記録から引きずり出し、この世界に覚元和仁を作った。そうだ、俺が望まなかった悲しみが、また連鎖したんだ! これを許せるか、許せるはずがないだろう!」
ついに、ナイフを振り上げる。
「だから、殺すんだ。お前という存在を、この「殺す」の概念を形にしたナイフで殺してやる。それか、お前が世界を破滅させるか、そのどちらかだ! 選べ、俺、いや、複製された、覚元和仁!」
選べなかった。そうか、自分は、複製された存在だったんだ。その事実を知った和仁は、どこか絶望していた。死んでもいい気がした、世界を滅ぼしてもいい気がした。だが、どちらも駄目だと思った。いろんな人の思いを背負って、ここにいるのに、死ぬことが許されるのだろうか。仇を取るためにも生きると誓った。でも、その仇なんて、どこまでたどればいいのか、途方もなかった。
滅ぼしたら、いっそ楽だった。世界を作り直せば、理想が作れるんじゃないか、そう思った。だが、それも駄目だと思った。自分が生きてほしいすべての人が生きる世界に、覚元和仁という存在はいてはならない。
俺に、世界は選べないんだ。こんなことを願うくらいなら、最初から存在しないのが正解だった。それを実行していたのが、もう一人の覚元和仁だった。世界一つ分の悲しみを、自分一人で背負ったんだ。
自分にできることは何だろう。和仁はおぼろげな意識の中、泣きながら考えていた。
その時、世界は突如暗転する。次に映った景色は、さっきの、間の祖の目の前だった。そこに、和仁と、もう一人の覚元和仁はいた。初めてもう一人の覚元和仁は、この世界に実体を持った。
「覚元和仁、お前に問おう。お前はこの世界の覚元和仁を殺すのか」
「当たり前だ。間の祖、俺が見た時とは少々見た目が違うが、確かにそうだな。お前も思うだろう。この世界は、滅ぶべきだと」
気を緩めたのか、もう一人の覚元和仁は、和仁から手を放した。
「確かに、この世界は堕落している。分岐ということもあって、この世界はあるべき世界の歴史から外れている。正しい世界ではない」
「そうか、ならば、俺の考えには同意だろう」
「いいや、同意はしない」
間の祖は無表情だが、しかしはっきりと告げた。
「……何?」
「どうあがいても、覚元和仁は、幸せになれない。そんな世界は作れない。だが、未来で幸せになる、そんな世界は本当に作れないのだろうか。過去に固執し、未来が見えず絶望した、そんなものは、幸せにはならない」
間の祖は一つ間をおいて、話をつづけた。
「だが、もし、この世界の覚元和仁が、未来に幸せを見出すならば、一周目の世界と、違った結末があるのではないか」
「……あるわけがない、覚元和仁という存在を世界に刻んだ時点で、違う可能性はないのだと、俺は知ったんだ」
「だが、それは過去の話。俺がしているのは、このまま世界を破滅させないで紡ぐ、未来の話だ」
その口調に、もう一人の覚元和仁も、和仁も、疑問を抱いた。次第にその口調は固いものから、崩れていっている。
「お前は、誰だ?」
もう一人の覚元和仁の問いかけに、間の祖はうっすらと笑みを浮かべる。
「お前たちの知る、一番知らない人物だよ、和仁。何のために世界は、二周目に入ったのか、考えてみるといい」
「黙れ……間の祖、お前すら、お前でなくなったのか?」
「そうではないな、少々、こちらの都合でね」
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