ある日、5億を渡された。
義理と居場所2
「望さんが……養子? それに俺の父さんが、推薦した? わけがわからないよ、俺の父さんは、何者なんだ?」
「無理もない。矢崎誠一郎の存在を、進くんも望も、知ってて知らなかったんだ。望はあの人を、かつてヤザキ電気の社長であり、影山家と親交があったくらいしか知らないよ。進くんだって、事故で亡くなったお父さん、くらいしか知らないでしょ」
確かにそうだ。だがそれ以上に、母さんに何も教えてもらえなかった、というほうが近い。そして、それがあまりにも自然だったために、俺が今まで疑問を抱かなかったんだ。
「まぁ、坊ちゃんも旦那も、覚えてるほうが無理な話。3から6歳の子供に、それが理解できるわけないしなぁ」
それに旦那────そう言って佐倉は続ける。
「記憶ないですもんね、7歳より前。いや、7歳の時もほとんど覚えてないんじゃないです?」
「な……んで……」
────その時だ、あの事故の瞬間が、フラッシュバックしたのは。それは閃光のように、だが落雷の如く俺に突き刺さる、衝撃的な過去。覚えていないはずなのに、それは鮮明に俺の心を抉っていった。
「……思い出すのはやはり、苦しいってか……まぁいい。思い出したらそれはそれ。まぁ、簡単に言えば、両親亡くした坊ちゃんに、里親を紹介したのが矢崎誠一郎ってことよ」
「だけども、佐倉。問題はそれ以外ってことでしょ?」
「あぁ、お嬢の言う通り。問題は「何故、社長なんて身分の高い家を紹介したか」それと「矢崎誠一郎は影山家にとってどう大切だったか」この二つよ」
不思議と、佐倉さんと明は話が噛み合う。それは、その裏にある壮大な背景を「知っているから」言えるのか、それとも「本当に互いが知らないから」噛み合うのか、はたまたどちらもなのか。
それはわからない。しかしどちらも、余裕を讃えた笑みであることは確かだ。どこかお互いに、隠した一手を持っているかのように、話は進む。
「影山家にとって、矢崎家がどう大事だったのか、それを知るのはやっぱりお嬢でしょ?」
「いやいや、佐倉こそ。望のボディーガードを3年やってるんなら、その過去を調べるなんて簡単でしょ?」
そこに小さく「3年……」と反応したのは冬馬さんだった。だが、すぐに存在感を消すように、顔を逸らした。
「まぁいいや、お嬢もやりますねぇ」
「佐倉ほどじゃないよ、本当に3年も黙ってるなんてね」
その一言に、佐倉さんは不機嫌そうに顔をゆがめる。だが、すぐに怪しい笑みを取り戻した。
「さて、じゃあお嬢。これからの総指揮を頼みたい。俺たち執事やボディーガードは、この過去という壮大な問題のために、何をしたらいい」
「うーん、そうだね。じゃあ佐倉、優斗くんを追いかけてくれるかな?」
すると、佐倉さんの笑顔がひきつった。
「な……なるほど……なんで俺? 陽菜……じゃなくて、冬馬でもいいじゃん」
「いやぁ、やっぱり男の子の後は、男の人についていってもらわないと」
明の笑みは優越だ。何かに勝った笑みをしている。そして、勢いそのままに、次々と命じていった。
「冬馬は、僕の護衛をしてくれたらいいよ。望は、暇を見つけたら、矢崎真紀ちゃんを追いかけてみて。そして進くんは……まずは、金城さんと話してみてほしい。その間の社長、副社長の仕事は、僕にお任せ!」
社長によって示された、それぞれのゆく道。こうして、俺たちは過去を知るために動き出した。それぞれの思いを、胸に秘めながら。
────だが、矢崎進はまだ知らない。その裏に隠れる、巨大な影に。
その影は、自分自身だと。
「無理もない。矢崎誠一郎の存在を、進くんも望も、知ってて知らなかったんだ。望はあの人を、かつてヤザキ電気の社長であり、影山家と親交があったくらいしか知らないよ。進くんだって、事故で亡くなったお父さん、くらいしか知らないでしょ」
確かにそうだ。だがそれ以上に、母さんに何も教えてもらえなかった、というほうが近い。そして、それがあまりにも自然だったために、俺が今まで疑問を抱かなかったんだ。
「まぁ、坊ちゃんも旦那も、覚えてるほうが無理な話。3から6歳の子供に、それが理解できるわけないしなぁ」
それに旦那────そう言って佐倉は続ける。
「記憶ないですもんね、7歳より前。いや、7歳の時もほとんど覚えてないんじゃないです?」
「な……んで……」
────その時だ、あの事故の瞬間が、フラッシュバックしたのは。それは閃光のように、だが落雷の如く俺に突き刺さる、衝撃的な過去。覚えていないはずなのに、それは鮮明に俺の心を抉っていった。
「……思い出すのはやはり、苦しいってか……まぁいい。思い出したらそれはそれ。まぁ、簡単に言えば、両親亡くした坊ちゃんに、里親を紹介したのが矢崎誠一郎ってことよ」
「だけども、佐倉。問題はそれ以外ってことでしょ?」
「あぁ、お嬢の言う通り。問題は「何故、社長なんて身分の高い家を紹介したか」それと「矢崎誠一郎は影山家にとってどう大切だったか」この二つよ」
不思議と、佐倉さんと明は話が噛み合う。それは、その裏にある壮大な背景を「知っているから」言えるのか、それとも「本当に互いが知らないから」噛み合うのか、はたまたどちらもなのか。
それはわからない。しかしどちらも、余裕を讃えた笑みであることは確かだ。どこかお互いに、隠した一手を持っているかのように、話は進む。
「影山家にとって、矢崎家がどう大事だったのか、それを知るのはやっぱりお嬢でしょ?」
「いやいや、佐倉こそ。望のボディーガードを3年やってるんなら、その過去を調べるなんて簡単でしょ?」
そこに小さく「3年……」と反応したのは冬馬さんだった。だが、すぐに存在感を消すように、顔を逸らした。
「まぁいいや、お嬢もやりますねぇ」
「佐倉ほどじゃないよ、本当に3年も黙ってるなんてね」
その一言に、佐倉さんは不機嫌そうに顔をゆがめる。だが、すぐに怪しい笑みを取り戻した。
「さて、じゃあお嬢。これからの総指揮を頼みたい。俺たち執事やボディーガードは、この過去という壮大な問題のために、何をしたらいい」
「うーん、そうだね。じゃあ佐倉、優斗くんを追いかけてくれるかな?」
すると、佐倉さんの笑顔がひきつった。
「な……なるほど……なんで俺? 陽菜……じゃなくて、冬馬でもいいじゃん」
「いやぁ、やっぱり男の子の後は、男の人についていってもらわないと」
明の笑みは優越だ。何かに勝った笑みをしている。そして、勢いそのままに、次々と命じていった。
「冬馬は、僕の護衛をしてくれたらいいよ。望は、暇を見つけたら、矢崎真紀ちゃんを追いかけてみて。そして進くんは……まずは、金城さんと話してみてほしい。その間の社長、副社長の仕事は、僕にお任せ!」
社長によって示された、それぞれのゆく道。こうして、俺たちは過去を知るために動き出した。それぞれの思いを、胸に秘めながら。
────だが、矢崎進はまだ知らない。その裏に隠れる、巨大な影に。
その影は、自分自身だと。
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