乙ゲーから転生した悪役令嬢は何気に女子高生を満喫しています。
35
今日の帰りはエルと帰る約束をしている。集合場所は生徒会室前だ。いつかの追試の日を思い出す。今日はその延期になってしまっていたご飯に行く。エルのおすすめの店らしい。
「…儚日!もしかしてずっと待っててくれてたの?中に入ってくれてよかったのに。」
生徒会室の扉がガラガラッと開く。生徒会の仕事をギリギリまでやっていたのだろう。
「お仕事の迷惑になることできないですよ。そんなに待ってないし時間ぴったりじゃないですか。」
学校を出てゆっくりと道を歩く。手と手が触れ合うくらいの距離の近さになんだかムズ痒くなってしまう。
「…なっ!!!」
ギュッといきなりエルが手を握ってきた。
「こっちの方が寒くないよね。…嫌だった?」
別に嫌ではないが恥ずかしい。でも彼氏と彼女じゃ普通か。余裕そうなエルに少しムッとした。
「べっ別に。可もなく不可もなくです。」
「…っやっぱり儚日はかわいい。」
満足気な顔でエルは笑った。うざい。普通に黙っていれば二枚目なのになあ。その後は特に会話もなく無言でルンルンしているエルに引かれ道を歩いていった。
ーーーカランカラン
「いらっしゃいませーって!は…へ?お前らなんで手繋いでんの?」
入ったのはトラットリアみたいな雰囲気のお店。中はカウンター席とテーブル席。夕方なのにそこそこにお客さんもいる。なのにここで店員のくせに大騒ぎしているのは私の隣人の弟さん兼お友達。というかこっちが驚きたいのだけど。
「どーも。お久しぶりですね。お友達さん。」
「蓮さん!?なんでここにいるんですか!」
驚く私と蓮にはお構い無しでエルは奥へと進んでいき、店長と思わしき人に話しかけていた。
「ここ俺の叔父の店なんだよ。たまにバイトしてんの。アニキもたまにいるぞ?」
「全然そんなの知らなかった。」
「ってかお前!!!」
私の隣が空いたのをいいことにこっそり他の人には聞こえないように耳打ちしてきた。
「攻略キャラにちゃっかり落ちちゃいましたってか?いつからそんなんなった?」
肘でグイグイとしてくる。
「いや、これは…」
そう返事をした途端クイッと腕が引っ張られ、私はエルの腕の中に収まる形となった。笑顔だが、目が笑っていない。
「俺たち付き合うことになったんです。いくら共通の趣味のご友人とはいえ、距離は保ってほしいなー?ねえ儚日?」
「とんだサイコ野郎だな。…まあ頑張れ。俺は関わりたくねえ。」
口に出てんだよ、口に。というか絶対色々言うタイミング失ったじゃん。せめて私のグダグダさを説明させてはくれないかねエルくん?
「さあ行こうか。席は予約してあるんだ。」
蓮の言葉を無視してエルは奥の部屋へ私をエスコートする。VIP席のようだった。
ちらちらと蓮からの視線が気になったものの、料理はとてもおいしかった。どことなく輝也の手料理を彷彿とさせる味、初めて食べるのになぜかとても懐かしい感じがした。
あ、ちなみに料金は後腐れなくしたいのでもちろん割り勘だ。エルは払いたがってムッとしていたが、そんなのお構いなし。なんとなくこういう男に奢られたら負けな気がするんだ。うん、なんとなくね。
「そんな…馬鹿な。」
先日からうちの委員長は忙しない。あの鬼丈くんの想い人、猫さんが茗荷谷と付き合ったという情報を知ったからだ。…まあ情報源は俺だけど。
「まあ、鬼丈くんも受け入れてるみたいだし、いいじゃないっすか。」
「何を言っている。それだけじゃない。お前と寺島冬子の仲も説明を受けてないぞ。」
最近島ちゃんが予想以上に俺に懐いちゃうもんだから、俺と島ちゃんも疑われている。まあ学校で生徒会が公安委員に笑顔で手を振ってくるなんてなかなかないだろうから仕方ない。後で島ちゃんには言っておかないと。
「だから何もないっていってるじゃないっすか。」
「猫谷さんは委員会に顔も出さないし、どいつもこいつも浮かれてしまってはキリがないな。」
彼女が委員会に顔を出さない理由が追試とは伝えないでおこう。もれなく桜先輩の委員会を巻き込んだ勉強会が始まってしまう。それは俺も御免こうむる。
「はあ、今月行くスキー合宿は生徒会と公安の懇親会になりそうだな。」
スキー合宿とはかつての文化祭で桜先輩が茗荷谷に完敗した後夜祭の賭け事の罰ゲームのようなものだ。正直言って確かに今の生徒会と公安の仲は悪くはない。むしろ、いい方向に進んでいっている。
「てか桜先輩、猫さんに後夜祭で猫さんを賭け事に使ったの謝ってなくないですか?猫さんそれに怒ってるんじゃ…?」
まああの人に限ってそんな事ないだろうけど。そう言うと桜先輩はハッとする。単純で顔に出やすい面白い先輩だ。
「確かに、私は勝負の方にめいいっぱいすぎて…彼女に謝罪の言葉一つ…そりゃあ茗荷谷と付き合っても報告なんかしてくれまいな。」
明らかに落ち込んでいる。肩を落としてまるで漫画みたいだ。
「まあスキー行く頃にはどうにかなってますって。時間は一番わだかまりを溶かしやすいので。」
色んな意味でな。彼女は隠しているつもりだが、明らかに彼女の好意は茗荷谷には向いていないのは他人の俺から見ても明らかだ。だが彼女が何を思い、これからどう歩いていくのか、その道程には大変興味がある。
まあ俺はまず、
コンコン、ガラガラッ
「こんにちは。忠野くんいます?」
ーーこの子をどうにかしなきゃなんだけどね。どちらに転ぶにしろスキー合宿までの時間がどうにかしてくれることを願って。
「ここにいるよー。島ちゃん。」
「…儚日!もしかしてずっと待っててくれてたの?中に入ってくれてよかったのに。」
生徒会室の扉がガラガラッと開く。生徒会の仕事をギリギリまでやっていたのだろう。
「お仕事の迷惑になることできないですよ。そんなに待ってないし時間ぴったりじゃないですか。」
学校を出てゆっくりと道を歩く。手と手が触れ合うくらいの距離の近さになんだかムズ痒くなってしまう。
「…なっ!!!」
ギュッといきなりエルが手を握ってきた。
「こっちの方が寒くないよね。…嫌だった?」
別に嫌ではないが恥ずかしい。でも彼氏と彼女じゃ普通か。余裕そうなエルに少しムッとした。
「べっ別に。可もなく不可もなくです。」
「…っやっぱり儚日はかわいい。」
満足気な顔でエルは笑った。うざい。普通に黙っていれば二枚目なのになあ。その後は特に会話もなく無言でルンルンしているエルに引かれ道を歩いていった。
ーーーカランカラン
「いらっしゃいませーって!は…へ?お前らなんで手繋いでんの?」
入ったのはトラットリアみたいな雰囲気のお店。中はカウンター席とテーブル席。夕方なのにそこそこにお客さんもいる。なのにここで店員のくせに大騒ぎしているのは私の隣人の弟さん兼お友達。というかこっちが驚きたいのだけど。
「どーも。お久しぶりですね。お友達さん。」
「蓮さん!?なんでここにいるんですか!」
驚く私と蓮にはお構い無しでエルは奥へと進んでいき、店長と思わしき人に話しかけていた。
「ここ俺の叔父の店なんだよ。たまにバイトしてんの。アニキもたまにいるぞ?」
「全然そんなの知らなかった。」
「ってかお前!!!」
私の隣が空いたのをいいことにこっそり他の人には聞こえないように耳打ちしてきた。
「攻略キャラにちゃっかり落ちちゃいましたってか?いつからそんなんなった?」
肘でグイグイとしてくる。
「いや、これは…」
そう返事をした途端クイッと腕が引っ張られ、私はエルの腕の中に収まる形となった。笑顔だが、目が笑っていない。
「俺たち付き合うことになったんです。いくら共通の趣味のご友人とはいえ、距離は保ってほしいなー?ねえ儚日?」
「とんだサイコ野郎だな。…まあ頑張れ。俺は関わりたくねえ。」
口に出てんだよ、口に。というか絶対色々言うタイミング失ったじゃん。せめて私のグダグダさを説明させてはくれないかねエルくん?
「さあ行こうか。席は予約してあるんだ。」
蓮の言葉を無視してエルは奥の部屋へ私をエスコートする。VIP席のようだった。
ちらちらと蓮からの視線が気になったものの、料理はとてもおいしかった。どことなく輝也の手料理を彷彿とさせる味、初めて食べるのになぜかとても懐かしい感じがした。
あ、ちなみに料金は後腐れなくしたいのでもちろん割り勘だ。エルは払いたがってムッとしていたが、そんなのお構いなし。なんとなくこういう男に奢られたら負けな気がするんだ。うん、なんとなくね。
「そんな…馬鹿な。」
先日からうちの委員長は忙しない。あの鬼丈くんの想い人、猫さんが茗荷谷と付き合ったという情報を知ったからだ。…まあ情報源は俺だけど。
「まあ、鬼丈くんも受け入れてるみたいだし、いいじゃないっすか。」
「何を言っている。それだけじゃない。お前と寺島冬子の仲も説明を受けてないぞ。」
最近島ちゃんが予想以上に俺に懐いちゃうもんだから、俺と島ちゃんも疑われている。まあ学校で生徒会が公安委員に笑顔で手を振ってくるなんてなかなかないだろうから仕方ない。後で島ちゃんには言っておかないと。
「だから何もないっていってるじゃないっすか。」
「猫谷さんは委員会に顔も出さないし、どいつもこいつも浮かれてしまってはキリがないな。」
彼女が委員会に顔を出さない理由が追試とは伝えないでおこう。もれなく桜先輩の委員会を巻き込んだ勉強会が始まってしまう。それは俺も御免こうむる。
「はあ、今月行くスキー合宿は生徒会と公安の懇親会になりそうだな。」
スキー合宿とはかつての文化祭で桜先輩が茗荷谷に完敗した後夜祭の賭け事の罰ゲームのようなものだ。正直言って確かに今の生徒会と公安の仲は悪くはない。むしろ、いい方向に進んでいっている。
「てか桜先輩、猫さんに後夜祭で猫さんを賭け事に使ったの謝ってなくないですか?猫さんそれに怒ってるんじゃ…?」
まああの人に限ってそんな事ないだろうけど。そう言うと桜先輩はハッとする。単純で顔に出やすい面白い先輩だ。
「確かに、私は勝負の方にめいいっぱいすぎて…彼女に謝罪の言葉一つ…そりゃあ茗荷谷と付き合っても報告なんかしてくれまいな。」
明らかに落ち込んでいる。肩を落としてまるで漫画みたいだ。
「まあスキー行く頃にはどうにかなってますって。時間は一番わだかまりを溶かしやすいので。」
色んな意味でな。彼女は隠しているつもりだが、明らかに彼女の好意は茗荷谷には向いていないのは他人の俺から見ても明らかだ。だが彼女が何を思い、これからどう歩いていくのか、その道程には大変興味がある。
まあ俺はまず、
コンコン、ガラガラッ
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