乙ゲーから転生した悪役令嬢は何気に女子高生を満喫しています。

おきたくん

18

「いやあ、儚日ちゃんの委員会の先輩すごかったねえ。」

あの後私のゲーム部の配布ゲームで遊んだり、お化け屋敷入ったり、なんやかんやで一日目の文化祭は輝也とずっと一緒で終わってしまった。今日もうちの両親はいないので、輝也の家で夕飯だ。

「そうですねえ…なんて、言うと思いましたか?もう!灯は見つかんないし、ずっと輝也さんいるし最悪ですよ。」

「そういうこと本人の前で言っちゃう儚日ちゃん好きだよ。って、あれは。」

校門を出るところに人集りとその中心にいてもヘッドフォンをつけたまま目を瞑っている人物がいた。

「げげげ、もっと最悪なことが。」

ーー溶定遊里だ。溶定はいきなりパッと目を見開き、私を捉えたと思えば人集りなど気にせずこちらに駆けてきた。

「儚日、探していたんだ。」

私の腕を掴む。そういやこの人私が昔の名残で呼んだせいで名前呼びされてるんだった。ああ、鳥肌が…。

「私は探してないですー。帰るので失礼したいんですけど。」

「そこをなんとかだな。」

「こんにちは、この前のマセガキくん?儚日ちゃんに何か用ですか?」

ささっと輝也が私と溶定の間に立ち、私は自由になる。ハッと輝也の顔を見るなり溶定の顔は曇る。

「そいつも一緒だったのか。…ならまた今度出直そう。」

いやいやもう来なくていいです!ていうか何も用なんてないでしょうが。

「行っちゃった…。」

言うだけ言って溶定は校門を後にしていた。ユーリだった頃からとてつもないマイペース人間ではあった。かつては王子だったから余計にみんな無下にできなくて苦労したのよね。

「…なんか彼、少し悲しい顔してたな。悪いことしちゃったかな。」

「気にすることないですよ。あの人と茗荷谷には何も遠慮する必要なんてないです。」

確かに少ししゅんとしていたが、以前(前世も含む)からの所業を考えれば私なんて優しい対応をしている方だ。未だに楓とは話せていないし、あいつらのせいでだいぶ現世の私の生活もぐちゃぐちゃだ。

「そう?まあ儚日ちゃんは優しいからなんだかんだ言っても構ってあげそうだけど。」

ふんふんと鼻歌し始める輝也にため息をつく。そんな私は世話焼きな人間じゃないっての。

「…私も早く大学生になりたいな。」

そしてあいつらがいない生活を送りたい。

「そんなに面白くないよ?サークルとか入っても変なやつらばっかだし。」

「あれ?そういえば輝也さんサークル入ってるんでしたっけ?」

「うん、サックス好きだからジャズやれるサークル入ってる。」

ああ、確かに前世でもサックスやってたわ。そういう趣味まで現世に影響するのね。

「大学の文化祭見においでよ。かっこいいとこ見せちゃうよ。」

ふんふんと見えないはずの尻尾が揺れて見える。そしてとてつもないドヤ顔だ。でも、

「わりと見たいかもです。日にちわかったら教えてくださいよ。」

彼のサックスを聞くのは何年ぶりだろう。懐かしむのも悪くないと思えた。

「もう決まってるよ。ちょっと待ってね…ほら!この日、空けといてね!」

「この日ですね。わかりました。」








「むふふ、ふふふ。」

仲睦まじく帰る二人の姿を私、音ノ木灯はストーカーの如く覗き見ていた。輝也さんを文化祭に呼んだのは正解かな。今日も今日とて上手く護衛してくれていた。彼ほどのはーちゃんを守る適役はいないだろう。まあ明日怒られるかもだけど。

「今日はこのまま輝也さん家かな。私も帰ろう。」

来た道を折り返し自分も帰る道を行く。私の乙ゲー攻略生活は順調だった。一応、はーちゃんとくっつくエンドがあるかもしれないと考えて輝也さん…ラフテルのエンドを全て回収してみたりもした。しかしヒロイン視点のバッドエンドであっても結果は最悪だった。そのエンドではーちゃんは悪役としてヒロインとラフテルの仲を裂く。そして二度と会えないように幽閉された塔でラフテルは悲しみのあまり自害してしまうのだ。

「うん、まったくはーちゃんが好まれる理由が見つからない。」

「なーにが見つからないの?」

後ろから声が聞こえる。振り返ると、むふふと笑う知らない男。さっきの私みたいだ。制服を着ているからうちの生徒だろうか。お化け屋敷をやっていたのか血糊が顔に残っていた。

「あなたには関係ないです。知らない人ですしね。」

すると男はああ、という顔をして手を差し伸べてきた。

「ごめんごめん、猫谷さんといつも一緒にいたから友達の気分だった。俺は忠野湊、よろしくね。」

少年誌を好む私の勝手な彼の第一印象は、あっこいつすぐ裏切りそうって感じだった。


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