乙ゲーから転生した悪役令嬢は何気に女子高生を満喫しています。

おきたくん

2

ーーフローレンスの記憶を取り戻してはや半年が経とうとしている。それに伴い以前とは違う対応をしなければいけない人物も増えてきている。

「今日は君一人なんだね。いつも図書委員お疲れ様。」

そうこの目の前の男も然り、だ。

私が図書委員シフトの日のみやってくる生徒会副会長茗荷谷みょうがだにエル。イギリス人の血を引く碧色の瞳の先輩だ。(もちろんイケメン)彼もまた恋王国ラブキングダムの登場人物のガブリエル・チャーチルの転生者だ、多分。ガブリエルはフローレンスと古くからの学友であり、ユーリ王子の幼馴染でもあった。彼が誘う舞踏会さえ行かなければ私と王子は面識を持たなかった。=私は殺されなかったのよ!

「ねえ、君も生徒会入りなよ?とってもいい事あるからさ。ねーえ?」

八つ当たりかと思うかもしれないが、故意に会わせたというのだから許せない。あの時の舞踏会も結局今の図書室のように一斉にその場にいる女の視線を私はかき集めていた。他人を見下し、晒し者にして優越感に浸る...ガブリエルは昔から嫌なやつだった。というか、それが好きという女子のためのドS枠キャラだった。実際にいるとかなり面倒だ。

「結構です。私、部活あるのでそんな両立できませんし。茗荷谷先輩はダブルワークじゃないから良さそうですけどね。ほら借りるのあるなら早く、」

しっしっと手を外へ振る。こういう他人への態度の積み重ねで私は殺されたのだろうか...。はあ、乙ゲーだったらゲージ見極めてトゥルーエンドとかいけるのにな。

「へえ猫谷さん、俺の名前覚えててくれたんだ?嬉しいなー。でも諦めないよ?俺は一度決めたことは突き通すまで諦めない主義なんだ。まあとりあえず、今日はこれとこれ借りていきます。」

「どうぞご勝手に。返却日は一週間後です。」






じーっと、あれから正味一時間は視線を感じる。もちろん、原因はさっきのあいつだ。

勉強もせずに人をからかうのはそんなに楽しいだろうか。少しだけ目線を向けるとにこりと微笑んでくる。ま、眩しい。多分この完璧オーラにハーフ顔スマイルは普通の女の子なら落ちているだろうでしょうけど、あいにく私は落ちませんよ!女みんな釣れると思ったら大間違いよ。もうすぐ図書室も閉室の時間だし、さっさと追い出したいな。

「さっきからなんなんですか。邪魔なので外へ行ってください。そもそも定期テスト大丈夫なんですか?私はいいとしても先輩は指定校枠取れなくなりますよ?」

そういうと少しため息をついて先輩は笑った。

「俺がそんなヘマをすると思うのかい?笑わせないでよ猫谷さん。君を丸め込むのはどうやら東大の入学試験より難関らしいな。」

「何言ってるのかわけわかりません。ほら、電気消しますよ?早く帰りたいのでまじで早くしてください。」

「はいはい、じゃあ外で待ってるねー。」

「はっ?いやいや大丈夫です。」

電気を消した廊下の先にもう先輩はいなかった。くそ、あいつ…!!

前世の頃から色々と私を掻き乱していたやつだ。しかもそれ相応の力を振りかざしてくるのがうざすぎる。案の定下駄箱に先輩はいた。特に当たり障りなく先輩の前を過ぎ去ろうとした。

「…っと!ちょっと待ってよ。ねえ?」

腕を掴まれ、引き寄せられた。確かちょうど恋王国ラブキングダムでもガブリエルのカットシーンでこんなものがあった気がする。普通の女の子なら、まあチョロく恋に落ちるところだろう。でも私はーー

「いやいやいや、私いっしょに帰りませんよ?」

フローレンス・ラグドールお前に落ちない人間だ。

振りほどかれた手に、少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻る。

「じゃあ俺の気まぐれってことで、家まで送らせてくれよ。ねっ?」

「別に、先輩に家知られるのも癪だしいいです。」

とは言ったものの、すたすたと校門を出てすでに半分いっしょに帰っている状況になっている。

「えーそれはちょっと傷つくな。でもこんな時間だし、俺も女の子を立場上・・・一人にできないわけよ。」

「立場上、ですか。ならちょうどいいですよ。」

いきなり先輩の方に私は振り返る。一日に二度も先輩の驚く顔を拝めるとは思わなかった。

「先輩は私を送らなくてよくなりました。」

にっこりと私は笑う。数十メートル先にいたとある人物を捉えたからだ。

「知り合いがいたので私はその人と帰ります。それじゃ!」

「えっ、ちょっとまっ!」

有無を言わさず私は買い物帰りの輝也の元へ走る。

「輝也さーん!」

するといつものほんわかした笑顔が帰ってきた。

「お、儚日ちゃん!学校帰り?」

「そうです。いっしょに帰りましょう?」

「うんいいよ!あ、そういえばこの前作ってくれたやつのレシピさ…」

まだあいつよりはこっちのがマシよ。
ざまあみやがれ、茗荷谷エル!






「…別の男が送ってくれるんだ。ふうん、なかなか隅に置けないな儚日ちゃん・・・・・は。ん?あれって…まあいいか。」

ふいに考え事をしていた青年は思い出したかのように裏に回しておいたリムジンに乗り込み、暗くなりかけた町に消えていった。



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