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Retysia~リティーシア~

星ノ案*

【1-2話】Monochrome Melancholy Ⅱ ~モノクロ憂鬱症 2~


いつもよりも早く家を出てきた。
その理由はとても単純で、この日があたしにとって大切な日だったから。
いつもの通学路を歩き、途中の花屋さんで『月下美人』を1輪買う。
その花屋さんには元々、月下美人は置いてなかったらしく、この時期にわざわざ取り寄せて貰ってるからか、頑張って貯金したのに1輪しか買えなかった。

「本当にいいの?この花、夜にしか咲かないし、お供えするなら別の花がいいんじゃ…」

「これがいいの」

あたしは自分に言い聞かせるようにそう言った。
鉢植えごと慎重に渡してもらい、店長のおばさんに、お金を払う。

「ありがとうございます」

そう言ってぺこりとお辞儀をし、あたしは慎重に鼻を抱き抱えまた通学路に戻った。




「『もう一度…会いたい』ねぇ」

「店長、どうしたんすか?」

バイトくんがひょっこりと顔を出して店長に話しかける。

「いや、月下美人の花言葉よ」

そう言って店長は心配そうに呟いた。

「あの子、心配だわ」







住宅街が終わる少し大きめの十字路。
ここはあたしの忘れたくても忘れられない場所。
心が鎖で縛り付けられる様にあたしはこの時(ここ)から進むことが出来ない。
それは…1年前の4月10日はあたしの弟、神崎業(かんざき ごう)の命日だから。

月下美人の鉢を置き、しゃがんで手を合わせる。
言いたいことは心に決めていたのに、いざ本番ってなったら感情が溢れてしまう。

「…ねぇ、ゴウ。どうして、死んじゃったの…?どうして、あたしを庇ったりなんかしたの?あの時、あたしを助けようとなんてしなければ、あんたは死ななかった。なんでなの?なんであたしなの?あたしなんかよりあんたの方がずっと生きていて欲しかった!あんたの方がよっぽど大切にされてみんなに必要とされてきた!なのに…どうして…」

感情が浮き沈みを繰り返す。
この1年間、ずっと。ずっと。ずっと。
何度後悔したか。
何度後を追って死のうとしたか。
その度に最期のゴウの一言を思い出して死ぬ事が出来なかった。

「なんで…あの時、『よかった』って笑ったの?どうして…」

『何故』以外に言葉が出てこない。
痛い。
体が、頭が、心が。
辛くて辛くてしょうがない。

この1年、何度忘れようとしたか。
忘れようとすればするほど、あの飛び散った血に塗れた弟の姿が頭の中をチラつく。
それはもう恐怖なんかではない、天からの残虐への行き場のない怒りと後悔だ。



それでも、どんなに後悔しても、どんなにあたしの中の時間が止まっても、世界の時間は進む。
ずっと立ち止まってなど、居られない。

「学校、行かなきゃ」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭き学校へと足を動かそうとする。



────その時だった。

ザンッ

「…へ?」

あたしの耳の横すぐをかすった何か。
視線をその何かが来た方に向けると、それは黒い服を着た男だった。

「なっ…!?」

「あー、外しちゃった」

ニヤニヤした男は見間違えだったらどれほどよかっただろう、あたしに銃口を向けていた。

ヒュッ…と息が漏れる。
男の目は確実に私を捉えていた。
明らかに歓喜の目に充ちている。
ジリジリとあたしに近寄って嗤ってる。

『狂ってる』

あたしはそう思った。

「ごめんなぁ、お嬢ちゃん。これはさ、世界革命の1歩なんだよねぇ。だからさ…

次は外さねぇ」


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