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Retysia~リティーシア~

星ノ案*

1章:【1-1話】Monochrome Melancholy Ⅰ ~モノクロ憂鬱症 1~


「!」

しばらく放心状態だった。
時刻は6時27分。目覚ましがなる前にあたしが起きるなんて今まで無かったのに、その日は偶然にも目が覚めてしまった。
悪い夢を見た気がしたが、どうにも思い出せない。
もやもやしていると言うより、覚えているのは何処と無い不安感。
世界が、時間がゆっくりと動いているような感覚はなんとも神秘的かつ狂気を醸し出していた。

とりあえず鳴ってしまう前にと目覚ましを止め、随意的に瞬きをする。
それでもまだ現実味がなくて、手を何度かグーパーした後、窓の方にゆっくりと視線を向けた。
白く穏やかな春の日差しが部屋に降り注いでいた。


部屋はさほど広くない6畳の部屋。
小学生にとっては充分すぎる広さで、あたしの物欲が人より欠けているせいか、生活に必要最低限な物しか置いてない。
何とも空虚な部屋に思える。
そして唯一この部屋の特徴と言っても過言ではない、嫌でも視界の先に入るカレンダーだけはこの部屋に異様に浮いていた。

モノクロ幾何学模様の意味不明な柄のカレンダー。
あたしはゆっくりとそのカレンダーに近づいて、線を数える。

「1、2、3、4、…



98、99……100。…また増えてる。」


数え始めたのは何となく感じた違和感から。
最初に覚えていた線の数は66。それからあたしは時々カレンダーに惹かれるように数えていた。
気のせい…いや、確実に増えていると思う。

カレンダー…。
何か引っかかるのにどうしても思い出せない。

記憶を呼び起こそうと考え始めた時、

「アオイちゃんー??早く起きないと、遅刻するわよー」

…おかあさんの声が聞こえた。
その声で嫌でも現実に引き戻される。

はぁ…とため息をついてクローゼットに向かう。


もういいや。
うん、カレンダーなんてどうでもいい。

それよりも今日は、
あたしの大事な日なのだから。







『それでは、続いてのニュースです。昨夜未明東京都〇〇区で身元不明の遺体が発見されました。……』

「アオイちゃん、おはよう」

おとうさんがコーヒーを飲んでニュースを見ている。

「…おはよ、おとうさん」

あたしはいつもの定位置、おとうさんの斜め向かい側の食卓につく。
テレビでは最近話題になっている連続殺人事件のことを取り上げているようだった。

『…これは最近話題の宗教団体、アルキ教の過激派による連続殺人事件では無いかと専門家は言っています。…』

「怖いなぁ、あれだろう?最近の若者はすーぐに騙される。自分の意思を強く持ってないから簡単に道を踏み外すんだ」

「あら、そういうあなたも優柔不断なんだから簡単に騙されやすいと思うけど。」

そう言ってぺろっと舌を出すおかあさんは、目玉焼きを食卓に運んできた。

「やめてくれよ、お母さん」

そうおとうさんが肩を竦め、目玉焼きに醤油をかけた。
席に着きながらおかあさんはあたしに向かって微笑む。

「でもそうね、アオイちゃんは可愛いからこういう人に騙されないように気をつけるのよ?」

「そうそう、お父さんとお母さんはアオイちゃんの味方だからね」

中身のない上辺だけの会話に耳を塞ぎたくなるのを我慢して、あたしはただわかったとだけ呟く。
おとうさんもおかあさんもその発言に満足したように再びテレビに向き直った。

朝のニュースは話題がコロコロとすぐに変わる。
先程のニュースとはうって変わり、最近人気急上昇中のスーパー女子中学生モデルが初の写真集を販売しただとか、もうすぐ衆議院議員総選挙が始まるだとか、あたしにとってはどうでもいい事ばかり流れた。

「ごちそうさま」

「え?もういいの?」

おかあさんが残したご飯とあたしの顔を見比べる。

「うん、もうお腹いっぱいだから」

「…そう」

そう言ってリビングと廊下の境のドアを開け、くるっと振り返る

「おかあさん」

「どうしたの?」

「ご飯美味しかった、ありがとう」

そう言ってあたしは2階からランドセルを持ち、いってきますと声を上げ家をあとにした。



後に残ったご飯を見てアオイのおかあさんとおとうさんは目を合わせる。

「…アオイちゃん、大丈夫かしら」

「今日、いつにも増して元気なかったからな」

「しょうがないのかもしれないのだけど、心配だわ。だって今日4月10日は…あの子、業が亡くなった日だもの。」

そう言って、おかあさんはポタリと涙を零した。

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