Retysia~リティーシア~
0章:Unlimited Desire ~終わりのない私欲~
───世界は酷く残酷だ。
全てが全て私欲にまみれた日常を、また今日も無意に過ごすことしか私には出来ない。
今、ゼロに還ろうとする世界の果てが目の裏に焼き付いて離れない。
平和とは程遠い荒れ果てた街。
楽園とも思われていた人間達の箱庭は、呼吸の仕方さえとうの昔に忘れたように時間を進めるのを辞めてしまっていた。
此処に存在するのはかつて街だったはずのもの。
もはやそれが真実かさえも分からないくらい崩壊していた。
ゆっくり目を閉じる。
…冷たい。
あの頃の温もりは、あの時の優しさはもう何処にも無いのか。
無機質に頬を撫でる風は、全てを黒白に戻していく様を描いているようで私の心は酷く苦しめられた。
あぁ、今回も私は何も出来なかった。
それさえも誰かに伝えることを許してくれない。
私は幾度となくこの現実から孤独に戦ってきたというのに、何度だってその夢は壊される。
努力は必ずしも報われるわけでは無いだろう?と言ったあの人の言葉が真実だったと、痛いくらいに胸を締め付けられる。
もう、全てを諦めてしまおうか。
…そう思いかけた時、懐かしい声が私に囁いた。
『…──様。』
ハッとして当たりを見回すもその姿は見えない。
「何処にいるの、ステラ。私を独りにしないで…!」
『僕はどこにも行きません、──様。』
優しい声が私を包み込む。
あぁ、私は独りじゃないんだ。
それだけで凍りかけていた私の心が溶かされていくようだった。
現実から目を背けてはいけない、そう思わせるように。
私は声に向き合った。
「お願い、ステラ。もう一度だけでいい、私にチャンスが欲しいの!私はどうなってもいい、だからこの世界を…どうか救って」
その時居ないはずのステラの顔が見えた気がした。
最期に見たステラの顔はとても辛そうで。
それでも私はこの気持ちを変えることはしなかった。
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