刀使いと幻獣使いの異世界無双旅行

志水零士

EP27 さて。授業はどうする?

「さて。早速だけど、授業はどうする?」

「……師匠。それはどういう意味ですか?」

 俺たちはあの入試、……いや、先生としての試験だから適正試験か?
 ともかくそれをクリアした後、先生用の宿舎の個人部屋に案内された。

 案内されたのは隣続きの四部屋。部屋順は左から、ノイ、俺、レスル、アリシャである。
 もともとは、一繋がりに並んだ部屋は最大でも二部屋しか余っていなかったが、俺たちの戦いを見て怯えた先生が数名出て行ってしまい、こうして四部屋続きの部屋が空いたということらしい。

 「大丈夫なのか?」と、学園長に聞いたところ、「その程度で君たちのような優秀な人材が入ってくれるなら、こちらとしてはむしろ得じゃよ」とのことだった。
 この国最強の騎士と名高いレスルに、それを越える者が二名にその仲間が一名。確かに、客観的に見ればその通りかもしれない。

 因みにだが、俺とノイの部屋が隣続きになった時点で、片方の部屋は実質全く使われない事が決定している。
 理由は言わずもがなである。ノイは寂しいのが嫌い、と言えば分かるだろうか。

 レスルが俺の部屋に来る事はあっても、アリシャがノイの部屋に行く事はないだろうからおそらく俺の部屋が使われることになるだろう。
 そうなれば、ノイの部屋は――使われても荷物置き場といったところだろう。

 そして今は、全員が俺の部屋に集まっていた。やはり使うのは俺の部屋がいいのかもしれない。
 なおエクスは、既に剣の状態で寝ている。

 レスルはあの戦いを経て、俺のことを師匠と呼ぶようになっていた。
 もう、どうとでもなれという心境である。

「いやさ、教師になったのはいいけど、誰がどんな授業をするのかって全く決めてないだろ。というか、この学園の教育方針ってどんな感じなんだ?」

「ええと、……『自分の主を護るための実力をつける』だったはずです」

「なんで知ってるの?」

「正門のところに書いてありましたよ」

「なっ⁉ 私の生涯で最高の不覚なの……」

「それ程の事じゃないですよ」

「レスルに負けるなんて……」

「そこですか!」

 ノイとレスルがショートコントを繰り広げている中、俺は思考を巡らせていた。そしてーー

「なるほどな。それなら、なんとかなりそうだな。」

 ノイは俺の方に近づきながら、首を傾げた。

「本当なの?」

「ここで嘘ついてどうすんだよ。しっかり考えついてるさ。」

「本当に大丈夫なの?はっきり言って、私は自分の実力で教師になったわけではないので、かなり不安なんですけど……」

 アリシャがそんな不安を口にした。俺はニヤリと笑って、彼女に言う。

「大丈夫だ。それでも不安なら……レスルにでも励ましてくれてもらえ」

「ふぇっ!」

「ちょ、ちょっと師匠!」

「冗談だ。落ち着け」

「……冗談にしては酷くないですか?」

「ふっ」

 そっぽを向きながら、鼻で笑う。

「笑わないでください!」

「……とりあえず話を戻すぞ」

「師匠のせいじゃないですか!……はぁ、もういいです。話を戻して下さい」

 レスルから許可を貰うことにも成功したので、俺は話を続けることにした。許可というには、少し強引な気がしなくもないが。

「まずは心配らしいアリシャの担当から言わせて貰うぞ。アリシャの担当は、サバイバル技術の伝授だ」

「……サバイバル技術?」

「ああ、そうだ。と言うか、この世界にサバイバルって言葉あるのか?」

「いえ、聞いたことありませんが」

「もしかして、サバイバルって言うのは異世界の言葉なんですか?」

 レスルがそんな質問を放った。

「その通り。それで、サバイバルっていうのは、危険な状況での生存とかの意味だ」

「つまり、生存するための技術ってことですよね」

「ああ、そういうことだ」

 俺はアリシャに説明を続ける。

「大抵の騎士は、例えば戦いに負けた時に逃げても生きてられないだろ。それはそういう技術を持っていないからだ。単純な戦闘技術も大切だけだど、命からがらでも生き残ることができるかどうかも大切だからな」

「それで、冒険者としての経験が一番ある私、と……なるほど、納得しました」

「それで、ノイは遠距離攻撃、特殊攻撃への対処法の伝授。そして、俺とレスルは近接攻撃への対処法の伝授だ」

「……一つ聞いてもいいですか?」

「どうした、レスル?」

「ノイさんが大きな壁を張ることが出来るという話は聞いていたんですが、メイン攻撃手段が遠距離や特殊だということは始めて聞いたんですが……」

「……そうだったか?」

「そうですよ!」

 なんか、レスルが仲間になってから、褒められる事も多くなったけど、つっこまれる事も多くなった気がする……
 気のせいだろうか?

「まぁ、それはもういいです。それより近接攻撃への対処法の伝授が僕と師匠の二人なんですけど、多すぎにならないですか?」

「そうなんだよなー。それだけがちょっと心配なんだよな」

 俺とレスルが腕を組み唸り、ノイは頭に可愛らしく頭に手を当てながら考える。アリシャは既に、自分の授業のことを考え始めているようだった。
 真面目なのはいいことだが、こっちの事を考えてくれてもいいのではないだろうか?

「一つ、案が浮かんだの。」

「おっ、それじゃあ教えてくれないか。」

「啓が生徒の相手をして、レスルが生徒に助言をすればいいの」

「……その役目、逆じゃだめなのか?」

「駄目なの」

「……そうか」

 ノイの言葉が俺の心にもろに刺さる。要は、俺にも助言が出来ないということなのだろう。
 ついに、ノイにも見放されてしまったのだろうか。

「ち、違うの。決して啓の事を馬鹿にしている訳じゃないの。」

「じゃあ、どういう意味なんだ?」

「啓はレスルとの戦いで、レスルの実力を確認できるような戦い方をしていたの。だから啓は戦闘に回って、レスルが助言をした方がいいと思っただけなの」

「師匠、そんなことしていたんですか?」

「……終盤はしてない」

「序盤はしてたんですね」

 事実なので、否定が出来ない。
 俺は無言でそっぽを向いた。

「目を逸らさないで下さい!」

 レスルがそんな事を言っていたが無視を決め込んだ。



「なぁ、ノイ。不思議なことだと思わないか?」

「何が?」

「俺たちがこうして異世界なんかに来て、挙句の果てに教師なんかになることになるなんてな」

「確かに、あっちで学生として生活している時は、そんなことは考えもしなかったの」

 今は既に日が暮れた後。隣同士のベッドの上で、俺は会話を交わしていた。

「それでだけどさ。これから俺たちはどうなると思う?」

「そんなこと、私にも分からないの」

「それもそうだよなー」

 俺たちは、前の世界でも行き当たりばったりなやり方で、道を歩んできた。
 面倒なことになることもあったが、それでも楽しかった。そして、これからもそのやり方は変わらないだろう。

「でも、一つだけ言えることがあるの」

「それは?」

 俺の問い掛けに、ノイは一拍おいて答えた。

「それは、何があっても私の隣には、いつでも啓がいてくれるだろうということなの」

「……ふっ、ははははは‼」

「ど、どうかしたの?」

 俺が急に笑ったので、ノイは心配したのか、不安になったのか。ともかく、こちらを向いてそう尋ねて来た。
 そして俺は笑ったまま答える。

「ノイ。勘違いしてるよ、俺のこと」

「……どういうことなの?」

「俺はノイの隣にいてやってるわけじゃない。俺がいたいから、ノイの隣にいるんだ。ノイが拒否しようと、俺はノイの隣に居座り続ける」

「……なるほど」

 そして、ノイも小さく、しかし確実に笑みを零して言う。

「それなら、私も啓の隣に居座り続けてやるの。啓への愛は、啓にも負けないから」

「はっ、俺に勝てるとでも思っているのか? 良いだろう。その喧嘩、買ってやる。覚悟しろよ」

「望むところ、なの」

 そして俺とノイは、深夜まで自分の覚悟――愛を語り合った。



 翌日、二人とも寝不足だったのは言うまでもない。

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コメント

  • ノベルバユーザー336448

    したのか❗️リア充め❗️

    0
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