刀使いと幻獣使いの異世界無双旅行

志水零士

EP25 騎士学園入試 前編

「それは、本気で言っているんですか?」

 ライが、そんなことを俺に対して言う。
 その言葉は前にレスルが放った言葉と酷似していた。偶然だろうか。

 偶然ではないとすれば、ライがレスルの弟子だからだろうか。
 まぁ、どうでもいいことだが。

「もちろん本気だが?」

「……あなた……舐めているんですか?」

「別に馬鹿にしている訳じゃない。そもそも俺は一万の魔物を一人で倒したんだぞ。ここにいる教師と生徒の合計は何人なんだ?」

「……千人といったところですね。」

 俺はその言葉を聞き、苦笑して言った。

「つまりだ。単純計算で、ここにいる教師と生徒の全員が魔物十体に相当する実力を持っていても、俺には勝てないということになるんだぞ」

 ライは一瞬目を見開き、そして俺を睨み付けて言った。

「……分かりました。そこまで言うのであれば相手になりましょう」

「すまないがその勝負、ちょっと待ってくれないかね」

 その声が聞こえた方向、後ろを向くとそこに白髪の老人が立っていた。

 体格を見るのであれば、普通の老人と変わらない。
 しかしその老人が纏う雰囲気は、武人のそれと同じだった。

「が、学園長!」

 ライが驚きの声を上げた。
 なるほど、この人がこの学園の学園長か。道理で他の奴とは雰囲気が違うわけだ。

「あんたがこの学園の学園長か。それで、なんで止めたんだ?」

「簡単な話じゃ。儂が、我が学園の生徒程度では君たちの相手は務まらないと判断したからじゃよ」

「学園長! 僕たちはこんな奴には負けません‼」

「……ライ君。君はこの学園の生徒会長にふさわしい実力を持っている。じゃがしかし、人を見る目は年の功。儂から見れば、君の人を見る目はまだまだじゃ」

 学園長のその言葉を聞いて、俺はニヤリと笑って問い掛けた。

「一目で俺たちの実力を見抜くとはな。しかし試験はどうする? まさか、試験無しで入学って訳にはいかないんだろ」

 俺のその言葉に学園長は想定外の返答を返した。

「確かにその通りじゃ。しかし、ここに君の相手になる相手はいない。……だから、すまないが君たち同士で戦って欲しい」

「……どう言う意味だ?」

「君とそこのお嬢さんとレスルさんで戦って欲しい。もちろん勝っても負けても、実力を見せてくれれば生徒。いや、謝罪としてこの学園の教師として迎い入れよう」

 この学園の教師か。
 立場的には確かに教師の方が都合がいい。色々と融通が聞くだろうし、ノイが何かの情報を探そうとした時も、生徒には読めない資料が読めるかもしれない。

 もちろん教師になるからには、生徒に授業をする事になる。しかしここは、騎士学園だ。
 教えるのが戦闘技術であれば問題はない。

「学園長、二つほどいいか?」

「なんじゃ?」

「まず一つ目。俺たちが教師にふさわしい実力を持っていると判断したら、アリシャも教師として迎い入れてくれないか?」

「良かろう。こちらでそのように取り計らって置こう」

「それじゃあ二つ目だ。俺たち三人のバトルロワイアルでは無くて俺対ノイ、俺対レスルの二回戦にして欲しい」

「なんだ、そんなことか。そんなことは、そちらの好きにすれば良い」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 再起動を終えた教師の一人が、そう学園長に向かって叫ぶ。

「なんだね。何か儂の判断に不満かね」

「い、いえ。そういうことではないのですが……」

 おい爺さん! 何さりげなく殺気を放ってんだ!
 学園長の殺気でその教師が怯えていた。油断も隙もない爺さんである。

 俺が自分の殺気で学園長の殺気を中和すると、怯えながら教師が口を開いた。

「すみませんが、アリシャさんを除くと、そこにいるのは四人になるはずと思うんですけど……」

 確かにその通りだ。ここに居るのはアリシャを除けば、俺とノイとレスルにエクスの四人である。
 しかしながらその内の一人、エクスは人ではない。

「なるほど、君は知らないのか」

「な、何をですか」

「そこに居る女性のことじゃよ。そこに居る女性はこの国の宝、聖剣エクスカリバーじゃぞ」

「えっ! そ、そう言えばエクスカリバーは意思を持った剣だと聞いた事が……」

「おーい。そろそろ初めても良いか?」

「ああ、良いぞ」

 学園長の許可を貰ったので、さっそく俺はノイと向き合う。
 ノイの隣にはエクスがおり、俺は素手だった。因みに俺が素手の理由は、ノイに傷をつけるわけにはいかず、かと言って手加減して勝てる相手でもないからだ。

「ノイ、それじゃあ始めるぞ」

「相手が啓とはいえ容赦はしないの。エクス、お願いするの」

「ああ、承知した」

 エクスがその言葉に返事をした後、一瞬にしてエクスは金色の剣に肉体を変化させる。その様子に周りの生徒や教師から驚きの声を上がった。
 
 しかしノイは……

「はぁ!!」

 そんな声には全く反応を見せずに、俺に斬り掛かって来た。
 上方からの、振り下ろし。

 その斬撃は桁違いに速かった。確実に白虎の力で肉体を強化している。
 俺はその斬撃を、左半身を右斜め前方のずらして避ける。

 はっきり言おう。半分以上勘である。
 とはいえ戦闘において勘は、重要な役割を持っている。

 素人の勘は、本当にただの勘だ。
 しかし本当の実力者の勘は、また別の意味を持つ。

 今までに積み上げて来た努力。そして、その努力によって手に入れた戦闘技術。
 その戦闘技術には、相手の攻撃の軌道の予測ももちろん含まれる。

 再度確認するが俺はノイの斬撃がほとんど見えていなかった。
 しかし体の動きの起こりは見える。さすがに白虎の力を用いても、初速すら俺に見えない速度にするのは無理があるのだ。

 相手の体の動きの起こり。そして、今まで戦ってきた相手の動き。
 それらを用いて次の攻撃を予測する。

 それが実力者の勘だ。
 それ故にただの勘とは根本的に異なるのだ。もはや、未来演算の領域である。

 因みにどこぞの戦闘漫画的な感じに、砂煙が上がったりはほとんどしていない。そもそもあれは、結構非効率的なのだ。
 空気を、そして間接的に砂を動かしている時点で、力が全て攻撃に使われていないということの証明にすらなっている。

 そういう理由で、俺とノイの間には何も存在せず、ただ俺の体とノイの斬撃は速すぎるが故にぼやけていた。

 生徒と教師が息を飲む中、俺はノイの斬撃をかわしにかわしまくる。
 ノイは数十回の斬撃を放った後、エクスを上段に構えたまま停止した。俺は油断せず、しかし自然体でノイの正面に立つ。

「さすがは啓、中々当たらないの」

「いや。一応言っておくけど、エクスが当たったら、さすがの俺でも死ぬからな」

「でも、当たらないから、問題無いの」

「まぁ、その通りなんだけどな」

 そんな会話をしつつ、ノイはエクスを地面に対して平行に構えた。

「このままじゃ勝てないから、最近編み出した秘技を使うの。」

「ふっ、面白い。やってみろ」

 ノイは俺のその言葉を受けて、エクスを平行に保ったまま足を曲げて……消えた。

「っ!」

 瞬間、俺はうなじに電気の走るような感覚を覚え、即座に体全体の筋肉を最大限に生かして頭を下げる。

 その直後、俺の頭の上をエクスが通った。そしてエクスが通った後、数本の髪の毛が落ちてきた。
 どうやら、髪の毛何本かのを切ったようだ。

「……まさか、俺にも視認できない速度で動き始めるとはな」

「それを避けた啓の方が凄いの」

「悪いけど、今のは本当にただの勘だよ。……それより、どうやってあんな速さで動いたんだ?」

「最近仲間にした麒麟の力で地面を硬めて、力が最大限伝わるようにしたの」

「その状態で白虎の力を用いて肉体を強化して移動か。いい作戦だったぞ」

「でも、もう切れるカードは一枚もないの。だから、私は降参するの」

『しょ、勝負あり。勝者、ケイ!』

 ノイがそう言って両手を挙げると、教師の一人がそう宣言した。
 おかしいな。始めの合図は無かったはずなんだが、何故終わりの合図だけあるのだろう。
 ……気にしたら負けか。

 因みに最後の攻撃を避けられなかった場合だが、俺は確実に首と胴体が離ればなれになっていただろう。
 だが、大人しく死んでいたかと言うとそれも違う。

 肉体が死んでも、魂は残る。死んだら魂の状態で神の力を行使して、肉体を復元した後に魂を放り込めばいいのだ。
 他の人が死んだ場合も同じだ。ノイが死んだ場合は勿論蘇生させるし。アリシャやレスルが死んだ場合も、余程の事がない限り蘇生させるだろう。

 えっ? 自重する気はないのかだって?
 何故、そんなことをしなくてはならないのか。優先すべきは、この旅を出来るだけ安全かつ快適なものにすることに決まっているじゃないか。

 それはともかく、今考えるべきはレスルとの戦いだ。
 俺は再度、戦闘に意識をシフトし始める。

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