刀使いと幻獣使いの異世界無双旅行

志水零士

EP9 自負でも自信でもない事実

「そう言えば、お前には心構えみたいなものはないのか」

 レンガの敷かれた道を歩いて、俺たち四人(正確には三人と一振り)は次の町に向かっていた。
 特に急ぎの理由も無いので白虎には乗っていない。ノロクの首都の情報屋によると半日あれば余裕で次の町には着くとのことだった。

 そんなこんなで適当に話しながら歩いていたのだが、ずっと喋っていなかったエクスが唐突に俺に問い掛けてきたのだ。

「心構えかぁ。この抜刀術そのものには無いが、俺が自分で決めた心構えはあるな」

「それはどういう心構えなんだ?」

 俺は歩きながら、どう答えるべきか考えを巡らせる。

 因みにノイはアリシャと話している。ガールズトークというやつなのだろうか。
 小声で喋っているので、よく分からない。
 唯一分かるのは、ノイがコロコロ表情を変えているので、彼女が心を動かされるほどの事を喋っているのであろうということだけである。

「無速抜刀、と言うべきかな。速さに囚われている間は完成には程遠い。速さと言う概念を超えた抜刀術。その境地に至るまでは努力の余地がある、と言ったところか」

 俺がそう言うと、エクスは驚きを露わにして言う。。

「『啓は、普通の人には見えない速さで刀を抜ける』と、ノイが言っていたが、まさかそんな心構えを持っているとはな。本気を出したらどれ位の速さで刀を抜けるんだ?」

「さすがに光の速さは超えられないと思うが、基本的にそれ以外は超えられると思うぞ。もちろん、いずれは光の速さをも超えるつもりだけどな」

 そう言うとエクスは口を開けて呆けた顔を見せた。
 エクスのそんな人間らしい表情に、俺は微笑を浮かべた。



「ノイさん。あなたって、ケイさんと付き合っているんですよね。一体どっちが告白したんですか?」

 啓とエクスが喋っているタイミングを見計らい、私ことアリシャはノイさんに向かって意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
 いつもは私がノイさんに弄られている。たまにはやり返しても、天罰は下らないだろう。

「告白してきたのは、啓の方なの」

 平静を装ってはいるが、ノイは少し動揺しているようだった。
 私は笑みを深め、更に問い正す。

「なるほど。因みに、その頃からノイはさんはケイさんの事が好きだったんですか?」

「ふぇっ! そ、それは……」

 そんな可愛らしい反応を見て私は笑ってしまった。
 私は性格が正反対なのに何故ノイとケイが付き合っているのか疑問だった。
 しかし今のノイを見ているとお似合いだなと思う自分がいた。不思議なことだ。

「まさかアリシャに弄られるなんて……一生の不覚なの」

「いつもはそっちが弄ってるんですから、自業自得だと思うんですが……」

「もう私には、腹を切って自害する以外の選択肢は残されていないの」

「待ってください! と言うか、話を聞いてください‼」

「ふふふ、引っ掛かったの」

「あっ!」

 油断していたら、いつものように弄られてしまった。

 ノイとケイはお似合い。しかし、ノイの性格は悪い。
 私はそう、認識を改めた。



 日が沈み始めたころ、俺たちは次の町に着いた。特に特徴は無さそうな普通の街だが、見るべき所が一つも無いということは無いだろう。

 明日はこの町を見て回るつもりだが、今探すべきなのは今夜泊まる宿だ。
 通行人は夕方なので少ないが、いないわけでは無い。目の前を横切った若い男性に俺は声を掛ける。
 彼は細身の剣を帯剣していた。おそらく冒険者だろう。

「すまない。今日この町に来たんだが、おすすめの宿は無いか。」

「ああ。そこの横道の突き当りを曲がったところに宿がある。少し値が張るが、食事も美味しいし風呂もあるからおすすめだよ。」

 風呂か。いいな。
 この世界に来てから、風呂には一度も入っていない。
 宿では大抵女将が持ってきてくれる桶に入った水で体を洗っていたし、野宿の時は川がなければ洗ってすらいない。
 そんな俺たちにとって、風呂があるというのはとても魅力的だった。一応二人に目線を向けると、両方とも同じ意見のようだった。
 
「ありがとう。じゃあ俺たちは、その宿に向かう事にする」

「そうか。……ああ、そうだ。君たちは、冒険者ギルドに行くつもりはあるかい?」

「明日行くつもりだ。」 

「全員でかい?」

「ああ」
 
 冒険者であるだけで身分の証明にもなるし、狩った魔物を売るのにも冒険者であることは有利に働く。
 この国では上級冒険者であろうとも特に規則で縛られることもないらしいので、早めに登録しておこうと俺は考えていた。

 冒険者の資格は国ごとに決まっている為、俺とノイだけではなくて、アリシャもギルドに行って登録しなくてはならないのだ。

「今、この町にはある最上級冒険者が滞在している。そしてその冒険者は相当の女好きなんだよ」

 ノイは可愛い。究極美少女だ。それだけは間違いない。何故ならばーー(以下略)
 アリシャも、十分可愛い部類に入るだろう。
 エクスは美人という言葉を具現化したような顔だ。性格が微妙だが。
 つまりこの人は、その冒険者に絡まれないか心配してくれたのだ。
 
 俺はもう一度彼にお礼を言って、教えてもらった横道に入った。歩きながら、明日のことを考える。

 エクスは剣の状態にするとして、問題はノイとアリシャだ。
 まさか、覆面を被らせるわけにはいかないだろう。余計怪しまれるだけだ。

 となれば……

「「絡まれたら、返り討ちにするか/絡まれたら、返り討ちにするの」」

 俺がそう言うと、ノイが全く同じタイミングで同じことを口に出した。完璧なシンクロである。
 俺とノイは顔を見合わせると、思わず笑った。絡まれたら返り討ちにする

「なんだか、その最上級冒険者の方が可哀そうに思えて来ました」

「奇遇だな、アリシャ。私にはその冒険者が吹き飛ばされる姿が容易に想像出来るぞ」

 後ろの二人が何か言っていたが、俺は聞こえなかった事にした。ノイも、同じ考えの様だ。
 更に溜め息が二つ聞こえたが、俺とノイはそれも聞こえなかったことにした。

 

 宿屋に着くと、おすすめというだけあって混みあっていた。
 泊まっているのは大半が冒険者だった。女将によると、旅人の九割は冒険者だかららしい。

 風呂が混浴だったらどうしようと思っていたが、そこはちゃんと分かれていた。
 がっかりなんてしてはいない。これは本当だ。

 何故なら、もし混浴だったら、男共にノイの美体を晒すことになるからだ。これだけは、絶対に阻止しないとならない。

 風呂に向かった時にはもう夜遅く、浴場に人は居なかった。
 お湯を浴びて体を洗い、俺はゆっくりと風呂に浸かる。

「ふぁーあ」

 思わず声が漏れてしまった。

 風呂だと、聞いていたが実際のところは温泉だった。
 しかも久しぶりの入浴なのだから、声が出ても仕方が無い。
 
 特に何も考えずにボーっとしていると、出入り口の方から声が聞こえた。
 
「なんだ、先客がいたの。」

 入ってきたのは、体格の良い中年の男性だった。
 
「もう出るよ。ごゆっくり」

「そうか。悪いな」

 悪いも何も、俺はこれ以上入っているとのぼせるので出ただけなのだが、わざわざ説明する必要も無い。
 俺は脱衣所で服を纏い、先ほど確認した部屋に向かった。



「それで、俺たちはなんのために呼ばれたんだ?」

「私は早く寝たいの。夜更かしは健康に良くないの」
「そう言えば、お前には心構えみたいなものはないのか」

 レンガの敷かれた道を歩いて、俺たち四人(正確には三人と一振り)は次の町に向かっていた。
 特に急ぎの理由も無いので白虎には乗っていない。ノロクの首都の情報屋によると半日あれば余裕で次の町には着くとのことだった。

 そんなこんなで適当に話しながら歩いていたのだが、ずっと喋っていなかったエクスが唐突に俺に問い掛けてきたのだ。

「心構えかぁ。この抜刀術そのものには無いが、俺が自分で決めた心構えはあるな」

「それはどういう心構えなんだ?」

 俺は歩きながら、どう答えるべきか考えを巡らせる。

 因みにノイはアリシャと話している。ガールズトークというやつなのだろうか。
 小声で喋っているので、よく分からない。
 唯一分かるのは、ノイがコロコロ表情を変えているので、彼女が心を動かされるほどの事を喋っているのであろうということだけである。

「無速抜刀、と言うべきかな。速さに囚われている間は完成には程遠い。速さと言う概念を超えた抜刀術。その境地に至るまでは努力の余地がある、と言ったところか」

 俺がそう言うと、エクスは驚きを露わにして言う。。

「『啓は、普通の人には見えない速さで刀を抜ける』と、ノイが言っていたが、まさかそんな心構えを持っているとはな。本気を出したらどれ位の速さで刀を抜けるんだ?」

「さすがに光の速さは超えられないと思うが、基本的にそれ以外は超えられると思うぞ。もちろん、いずれは光の速さをも超えるつもりだけどな」

 そう言うとエクスは口を開けて呆けた顔を見せた。
 エクスのそんな人間らしい表情に、俺は微笑を浮かべた。



「ノイさん。あなたって、ケイさんと付き合っているんですよね。一体どっちが告白したんですか?」

 啓とエクスが喋っているタイミングを見計らい、私ことアリシャはノイさんに向かって意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
 いつもは私がノイさんに弄られている。たまにはやり返しても、天罰は下らないだろう。

「告白してきたのは、啓の方なの」

 平静を装ってはいるが、ノイは少し動揺しているようだった。
 私は笑みを深め、更に問い正す。

「なるほど。因みに、その頃からノイはさんはケイさんの事が好きだったんですか?」

「ふぇっ! そ、それは……」

 そんな可愛らしい反応を見て私は笑ってしまった。
 私は性格が正反対なのに何故ノイとケイが付き合っているのか疑問だった。
 しかし今のノイを見ているとお似合いだなと思う自分がいた。不思議なことだ。

「まさかアリシャに弄られるなんて……一生の不覚なの」

「いつもはそっちが弄ってるんですから、自業自得だと思うんですが……」

「もう私には、腹を切って自害する以外の選択肢は残されていないの」

「待ってください! と言うか、話を聞いてください‼」

「ふふふ、引っ掛かったの」

「あっ!」

 油断していたら、いつものように弄られてしまった。

 ノイとケイはお似合い。しかし、ノイの性格は悪い。
 私はそう、認識を改めた。



 日が沈み始めたころ、俺たちは次の町に着いた。特に特徴は無さそうな普通の街だが、見るべき所が一つも無いということは無いだろう。

 明日はこの町を見て回るつもりだが、今探すべきなのは今夜泊まる宿だ。
 通行人は夕方なので少ないが、いないわけでは無い。目の前を横切った若い男性に俺は声を掛ける。
 彼は細身の剣を帯剣していた。おそらく冒険者だろう。

「すまない。今日この町に来たんだが、おすすめの宿は無いか。」

「ああ。そこの横道の突き当りを曲がったところに宿がある。少し値が張るが、食事も美味しいし風呂もあるからおすすめだよ。」

 風呂か。いいな。
 この世界に来てから、風呂には一度も入っていない。
 宿では大抵女将が持ってきてくれる桶に入った水で体を洗っていたし、野宿の時は川がなければ洗ってすらいない。
 そんな俺たちにとって、風呂があるというのはとても魅力的だった。一応二人に目線を向けると、両方とも同じ意見のようだった。
 
「ありがとう。じゃあ俺たちは、その宿に向かう事にする」

「そうか。……ああ、そうだ。君たちは、冒険者ギルドに行くつもりはあるかい?」

「明日行くつもりだ。」 

「全員でかい?」

「ああ」
 
 冒険者であるだけで身分の証明にもなるし、狩った魔物を売るのにも冒険者であることは有利に働く。
 この国では上級冒険者であろうとも特に規則で縛られることもないらしいので、早めに登録しておこうと俺は考えていた。

 冒険者の資格は国ごとに決まっている為、俺とノイだけではなくて、アリシャもギルドに行って登録しなくてはならないのだ。

「今、この町にはある最上級冒険者が滞在している。そしてその冒険者は相当の女好きなんだよ」

 ノイは可愛い。究極美少女だ。それだけは間違いない。何故ならばーー(以下略)
 アリシャも、十分可愛い部類に入るだろう。
 エクスは美人という言葉を具現化したような顔だ。性格が微妙だが。
 つまりこの人は、その冒険者に絡まれないか心配してくれたのだ。
 
 俺はもう一度彼にお礼を言って、教えてもらった横道に入った。歩きながら、明日のことを考える。

 エクスは剣の状態にするとして、問題はノイとアリシャだ。
 まさか、覆面を被らせるわけにはいかないだろう。余計怪しまれるだけだ。

 となれば……

「「絡まれたら、返り討ちにするか/絡まれたら、返り討ちにするの」」

 俺がそう言うと、ノイが全く同じタイミングで同じことを口に出した。完璧なシンクロである。
 俺とノイは顔を見合わせると、思わず笑った。絡まれたら返り討ちにする

「なんだか、その最上級冒険者の方が可哀そうに思えて来ました」

「奇遇だな、アリシャ。私にはその冒険者が吹き飛ばされる姿が容易に想像出来るぞ」

 後ろの二人が何か言っていたが、俺は聞こえなかった事にした。ノイも、同じ考えの様だ。
 更に溜め息が二つ聞こえたが、俺とノイはそれも聞こえなかったことにした。

 

 宿屋に着くと、おすすめというだけあって混みあっていた。
 泊まっているのは大半が冒険者だった。女将によると、旅人の九割は冒険者だかららしい。

 風呂が混浴だったらどうしようと思っていたが、そこはちゃんと分かれていた。
 がっかりなんてしてはいない。これは本当だ。

 何故なら、もし混浴だったら、男共にノイの美体を晒すことになるからだ。これだけは、絶対に阻止しないとならない。

 風呂に向かった時にはもう夜遅く、浴場に人は居なかった。
 お湯を浴びて体を洗い、俺はゆっくりと風呂に浸かる。

「ふぁーあ」

 思わず声が漏れてしまった。

 風呂だと、聞いていたが実際のところは温泉だった。
 しかも久しぶりの入浴なのだから、声が出ても仕方が無い。
 
 特に何も考えずにボーっとしていると、出入り口の方から声が聞こえた。
 
「なんだ、先客がいたの。」

 入ってきたのは、体格の良い中年の男性だった。
 
「もう出るよ。ごゆっくり」

「そうか。悪いな」

 悪いも何も、俺はこれ以上入っているとのぼせるので出ただけなのだが、わざわざ説明する必要も無い。
 俺は脱衣所で服を纏い、先ほど確認した部屋に向かった。



「それで、俺たちはなんのために呼ばれたんだ?」

「私は早く寝たいの。夜更かしは健康に良くないの」

 俺たちが寝ようとしていると、用があるとアリシャに呼ばれたのだ。一体なんのようなのだろうか。

「二人を呼んだ理由は、二人がどうやったら自重を覚えるかを考えるためです」

「部屋に戻るぞ、ノイ。」

「ラジャーなの」

「いやいや。ちょっと待って下さいよ。」

 下らない事を言い出したので帰ろうと思ったのだが、引き止められてしまった。
 
 意見はあるのだが、うまく言葉に纏まらない。語彙力が、
 俺が悩んでいると、ノイはアリシャの方に一歩進んで言った。

「確かに私と啓は、自重なんてものはしていないの」

「そうですね」

「そして、このままでは注目されることは必至なの」

「当然ですね」

「もしかしたら危害を加えようとする輩が出てくるかもしれないの」

「ええ、だからこそ――」

「でも、だからどうしたの?」

「はい?」

 そう、結局はそこに行きつくのだ。

 俺たちを危害を加えようとする輩が現れるとする。
 しかしそれによってどうなるというのだろうか。

「私たち二人を傷つけられる者が居るはずが無いの。例えそれが国であっても。例えそれが神であっても」

 これは自負でも自信でも無い。ただの事実だ。
 俺たち二人に勝てるものは存在しない。それ故に自重なんてものは必要無いのだ。
 
 俺とノイがそれぞれ育てた、圧倒的な力。その二つが合わされば、一体どうなるか。

 俺たちは下らない事もする。
 特に意味のない事もする。
 あまり考えずに動く事もある。

 しかしそれらの行動は、俺たちに勝てるものがいないという事実の裏返しなのだ。
 そんな事をしても、俺たちの勝利は揺るがないが故の行動なのである。

「……忘れてました。あなたたちってこういう性格でしたね。そりゃあ、説得なんて無理ですね。こんな時間にごめんなさい。」

「別にいいさ。仲間との間でコミュニケーションとるにはお互いの事を理解することも大事だからな」

「理解してくれたならいいの。それより早く眠たいの」

「あ、そうですね。お休みなさい、お二人さん」

「ああ、お休み」

「お休みなの」

 そう言って俺たちは部屋から出て、元の部屋に戻る。そして部屋の中で、俺はノイに言う。

「もう必要ないな。悪かったな、汚れ役を任せちまって」

「問題無いの」

 ノイが事をあるごとにアリシャを弄っていたのには実は理由がある。俺が、ノイに頼んだのだ。
 ……多少ノイに、そういうSっけがあるのは確かだが。

 俺は、アリシャの人柄を気にしていた。
 悪い人だとは思っていなかったが、信用に値するとも思っていなかった。
 それ故にアリシャを弄って、本性を確認しようとしていたのだ。

 しかし、こんなに俺たちの事を考えてくれているのに、疑うのはとても失礼だろう。
 今後のノイとアリシャの関係に期待しながら、俺は布団に潜り込んだ。

 俺たちが寝ようとしていると、用があるとアリシャに呼ばれたのだ。一体なんの用なのだろうか。

「二人を呼んだ理由は、二人がどうやったら自重を覚えるかを考えるためです」

「部屋に戻るぞ、ノイ。」

「ラジャーなの」

「いやいや。ちょっと待って下さいよ。」

 下らない事を言い出したので帰ろうと思ったのだが、引き止められてしまった。
 
 意見はあるのだが、うまく言葉に纏まらない。語彙力が、
 俺が悩んでいると、ノイはアリシャの方に一歩進んで言った。

「確かに私と啓は、自重なんてものはしていないの」

「そうですね」

「そして、このままでは注目されることは必至なの」

「当然ですね」

「もしかしたら危害を加えようとする輩が出てくるかもしれないの」

「ええ、だからこそ――」

「でも、だからどうしたの?」

「はい?」

 そう、結局はそこに行きつくのだ。

 俺たちを危害を加えようとする輩が現れるとする。
 しかしそれによってどうなるというのだろうか。

「私たち二人を傷つけられる者が居るはずが無いの。例えそれが国であっても。例えそれが神であっても」

 これは自負でも自信でも無い。ただの事実だ。
 俺たち二人に勝てるものは存在しない。それ故に自重なんてものは必要無いのだ。
 
 俺とノイがそれぞれ育てた、圧倒的な力。その二つが合わされば、一体どうなるか。

 俺たちは下らない事もする。
 特に意味のない事もする。
 あまり考えずに動く事もある。

 しかしそれらの行動は、俺たちに勝てるものがいないという事実の裏返しなのだ。
 そんな事をしても、俺たちの勝利は揺るがないが故の行動なのである。

「……忘れてました。あなたたちってこういう性格でしたね。そりゃあ、説得なんて無理ですね。こんな時間にごめんなさい」

「別にいいさ。仲間との間でコミュニケーションとるにはお互いの事を理解することも大事だからな」

「理解してくれたならいいの。それより早く眠たいの」

「あ、そうですね。お休みなさい、お二人さん」

「ああ、お休み」

「お休みなの」

 そう言って俺たちは部屋から出て、元の部屋に戻る。そして部屋の中で、俺はノイに言う。

「もう必要ないな。悪かったな、汚れ役を任せちまって」

「問題無いの」

 ノイが事をあるごとにアリシャを弄っていたのには実は理由がある。俺が、ノイに頼んだのだ。
 ……多少ノイに、そういうSっけがあるのは確かだが。

 俺は、アリシャの人柄を気にしていた。
 悪い人だとは思っていなかったが、信用に値するとも思っていなかった。
 それ故にアリシャを弄って、本性を確認しようとしていたのだ。

 しかし、こんなに俺たちの事を考えてくれているのに、疑うのはとても失礼だろう。
 今後のノイとアリシャの関係に期待しながら、俺は布団に潜り込んだ。

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