光の幻想録

ホルス

#22 歪んだ奇跡

 話していてどれ程の時間が経っただろうか。
 そろそろ海色が要件を終わらせて下山を始めている頃合だと感じ、俺は河城さんに挨拶して水の工房を後にし上昇する。
 上昇というのは落ちてきた場所の直下ポイントに不穏な機械があり、その不穏な機械に乗るとワープの様な原理で地上まで輸送してくれるのだという。
 訳が分からない。
 河童の技術力もそうだが、そもそも個人的に思うところがある、幻想にこんな現代風というかSFチックな機械を作らないで欲しい。
 幻想は全ての人々の願いが詰め込まれている場所でもある、そんな場にSFチックな機械があった時のガッカリ感は相当なものになって堪えるだろう。
 ……とまあうだうだ言っている内に地上まで輸送された訳だが、取り敢えず向かうべきは山頂だろう。
「だいぶ登るな……」
 辛い独り言をぽつりと呟いた後、道無き道を進んでいく。
 入口の時みたく辺りの木々が邪魔する事もなく根っこが邪魔になる訳でもなく非常にスムーズに歩いて行ける事が出来た。
 誰かが手入れをしているのか、それとも他の誰かが嫌々になって全て処理したのか。
 ……これ多分後者だ。
 なんか耳を済ましてると誰かがイライラした口調で叫んでいるのが聞こえてきた。
 刃物を持っててイライラしてるかもしれない妖怪になんぞ出くわしたくないから声から離れて登ることにしよう。
 というか山登りなんて産まれて初めて経験するんだよな、ペース配分に気を付ける事は勿論だが、山は天気が変わりやすいとも言うらしい。
 雨が降ってきた時の為に何かしら対処したいとこなんだが、生憎手持ちは何も持ち合わせていない。
 アホみたいにデカい葉なんかがあれば、よく映画なんかで見かける葉の傘をしてみたいけど……まあ流石の幻想でもそんなん無いか。
 その後の登っていく途中、先程有り得ない速さで海色を連れて行った仲間と自称する白髪の子に出会し、巫女の事を説明すると「山頂まで飛ばしてあげましょう!」と元気よく羽ばたき始めた。
 当たり前だが死にたくないので丁寧に断ったが、何を思ったのかその白髪の子は涙ぐんであやすのに相当な時間を費やした。
 涙腺が脆い妖怪が多いような気がするのは気のせいだろうか、人間になんて滅多に会えなくてお願いを聞いたら断られてそれで泣くんだろうか……。
 あの前の出来事が無ければ是非頼んだところなんだが諦めて欲しい。
 白髪をあやし終わると元気に立ち去ったが疲労しか残らず、天候が曇りになった事もありジメジメとした空気が山全体を覆い始める。
 そうなると喜ぶのは河童の類で、また川に出たかと思うと恐ろしい数の河童達が俺の目の前に広がっていた。
 皆が皆同じ服装で青の合羽を付けており、極僅かだが男の河童も見つけることが出来た。
 俺が出会すのは毎度女の妖怪だから男が居ないもんだと勝手に決め付けていたがそうではなかったようだ。
「発射〜!!」
 元気な声でそう聞こえたかと思うと次の瞬間、背負っていた巨大なリュックからミサイルようにものが飛び出し上空へと射出される。
 勢いが足りなかったのかそれ程高く飛ばず、重力に任せてそのまま落下を始め川の隅に落ちた瞬間、信じられない程の爆風が辺りを覆い尽くし、木々は炎によって包み込まれていく。
 河童達は慌てふためき、これまたリュックから消火栓に似たような物を取り出して大量の水を放出させた。
 無事に鎮火したようなんだが、河童達が激流に呑まれて川底にまで沈んで流されて行った……。
「河童苦手かもしれないわ……」
 ──妖怪の山を十分過ぎる程体感した後、目当ての山頂にようやく辿り着くことが出来た。
 想像以上に限界だった、あの後天狗の集団が白髪を泣かせたと襲いかかって来たんだが事情を説明した後、今度は海色を連れて行った天狗をボコボコにしてやる!と目の前で爆風を吹き荒らされ吹き飛ばされた。
 その次に“鬼”の種族に出会し、それは見事な角が生えており、襲いかかって来るのかと思いきや共に酒を飲んで欲しいと要求された。
 俺も20歳だ、飲めるには飲めるが今は先を急いでいると伝えると頭にきたようで、
「今度地下で待ってるぞ!」
 とか訳の分からない事を言われたからから返事をしておいた。
 その後誰かに見られているような感覚が続いていたんだが、山頂に着く頃にはそれも無くなって今に至る。
 もう神社は目と鼻の先なんだが、どうにも契約が結ばれている以上踏み込む事は出来ないようだ。
 別に結界が張ってあるとかではなく、本能的な部分で入るなと告げられ体が上手くいうことを効かなくなっている。
 海色は用事を済ませたのか見当たらず、神社も異様に静かで無人なのかと疑うほどだった。
 ──いや待て……白いワンピースを着込んだ小さい子が1人だけポツリと入口に……
「ゔッ……ッッ……」
 異常な嫌悪感と吐き気に襲われた。
 それは次第に体に燃え広がるように伝わり、手足の痺れどころか軽い吐血を引き起こしていく。
 体に鞭打ち再度その子を視認しようとすると、
「久しぶりだな楽」
 悪魔のような笑みで見下ろしていた。
「お前かァ──ッッッ!!!」
 体の不調を振り払い全ての力を収束させその者を殺す為だけに能力を使用する。
 ……だが、発動する寸前になって耐え難い程の苦痛が全身を駆け巡り詠唱が中断された。
「体弄り遊ばれてるじゃねぇか楽!!これァ愉快なもんよな!!!いやいや傑作だわハハハハハッッ!!!」
「ぅぐ……ッ……どうして、お前が……お前が……ここに……ッ……!」
「なんだ“中身”には気付いてンのか、つまらねェ野郎だよお前は。理由としちゃあそうだな、ここを殺しに来た。それ以外に理由はねぇ、お前には一生実験動物として生きてて貰わねぇと困るからな!!」
 あの憎きクソ野郎はそう告終わると俺を一蹴し、外見そのままの少女のようにステップをしながら本殿へ……!
「まで……ッ!!行かすッッ…………」
「お前はここに来れねぇ。力も干渉しなければ体は疲弊するだけだろうよ。まあそれ以外にも理由はあるかもなァ!!?」
「やめろ……!やめろ……!!!やめろ────ッ!!!!!」

──

「ねぇねぇお姉ちゃん!」
 可愛らしい声で私はパチリと目を開ける。
 ムクリと重たい体を起こすと、そこには白いワンピースを来た黒髪の可愛らしい女の子がいた。
「どうしたのかな、ここまでよく来れましたね」
「えっとね……実はお願い事があるの……パパとママが病気で来れなくて……それでどうしても治して欲しくて……」
 私の力を利用しに来たのね……。
 でもそれが私の出した回答、神奈子様もああは言っていたが小さい子には弱いようですね。
「良いよ、さあもう1回お願い事を言ってみて」
 私は次に聞く言葉を無意識に“奇跡”として叶える力を有している。
 その願いが聞き届けられたら最後、それが叶えられるまで永遠に奇跡は続けられる。
 例えどの様な変化が起きようと、必ずその通りになる。
「……?どうしたの?言わないの?」
「笑いが止まらねぇ……止まらないねぇ……!さあ叶えろ願望器!俺の望みを!!」
「……ッ!?」


                  ──この世界を滅ぼせ。

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コメント

  • ハイイロチョッキリ

    テンポ感がいいです。楽しみ

    0
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