光の幻想録

ホルス

#9 疑心

 私がここに居る理由。
 それは単純明快にして赤の他人が知る由もない事だ、ただ彼を救う。
 彼を助け彼を生かし彼を1つの命として確立させる、私はその為だけに行動し思考し厳守し命を賭ける。
「光、君は速く彼女たちの元へと向かいなさい。今の君では出来ることは少ないだろうがあの2人の助けにはなれるさ。自分のやりたい事をやり抜いて」
 ……彼女の言葉には重たい強制力を感じた。
 それをしなければならない、それをしなくては後々必ず後悔すると体の中で分かったと決め付け焦らす様な……。
 そんな中でも俺はこの子に1つ聞かねばならない事があった、これを聞き逃せば一生問うことが出来なくなるかのような『強制力』を感じながら言の葉をその口から紡ぎ出す。
「──どこかで会った……かな……」
「……それは光としての言葉かい?それとも──」
「アハハハハハハッッッ!!!!!」
 最後まで言葉を発する前に目の前の殺気を身に纏う狂気の化物は発狂したかのような奇声を上げつつこちらへと攻め入った。
 虹色に輝き辺りを照らす無数の光がこの場を深く染め上げつつ、加えて無惨な血の臭いを充満させる。
「っく……速く行け!!!」
 我が目を疑った。
 化物の持つその剣は全長……いや目視出来る範囲で5mを容易く超えるほどの長剣で、恐ろしい速度で振りかぶったそれを彼女は突如手にした何かで受け止めたのだ。
 それに伴う衝撃波は辺りの木々を倒壊させるのには充分なものだった。
 見開いた森林の中であれば館の方角程度ならよく分かる、俺はその中を荒い息を吐きながら抜け出し地獄の様な現場を後にした。
 アレが何なのか、彼女が何なのかなんて事を考えている暇なんて無かった。
 今はただ彼女の言葉に従い、そして己の本能と使命感に準じて走る。
 俺に出来ること何てのは極僅かで微々たるものだ、でもその僅かなもので彼女達の助けになるのなら俺は死に物狂いで向かう!
「はぁ……貴方本当に誰なの?これ受け止めるのアイツ以外に見たことないんだけど」
「そんなこと言われてもねぇ……まあ誰って質問には少しだけ答えられるかな。 海に色と書いて海色みいろ、 それが私の名前だ。そこの本物のスキマ妖怪さんも良く聞こえたよね?」

────

 時間を同じくして紅の館内部。
 2人の少女はどしどしと廊下のど真ん中を我が物顔で突き進んでいた。
 道中館で働いていると思われるメイド姿の小さい妖精達がこれまた小さいフォークを持って突撃して来たが手の甲で払い除けた以外何も起きていない。
 寧ろそれが不気味だった。
 外でこれだけ大規模な異変を起こしておいて館内部では些細な邪魔立てしかして来ない。
 門番をしていたアイツの方が余程マトモな防御をしていたのに、この差は何なのだろうかと頭を痛めてしまう。
「あんたホントに大丈夫なの?霊力の消費が半端じゃないでしょうに」
 先程の魔符と言い火力と言い、たかだか門番程度に出す霊力の量じゃない。
 明らかに無駄な消費をしている何かを魔理沙から感じ取れた。
「霊力については問題ねえよ……ちょっとムキになってぶっぱなしただけだ。それよりあいつは大丈夫なんだろうな 私が折角カッコよく決めて助ける時間を稼いでやったんだ、これで助けられなかったとか言われたら私でも流石に悲しいぞ」
「大丈夫しっかり治して来た。光には聞きたい事も沢山あるからね…この異変を解決してパパっとあいつの驚く顔を見に行くわよ!」
 ……霊夢……? 
 そう口に出そうとした言葉を苦しくも飲み込んだ。
 なんでそんなに寂しそうなんだ。
 なんでそんなに苦しそうなんだ。
 私には分かる、長い付き合いの私だから霊夢の些細な違和感に気が付ける。
 ──背に腹はかえられなかった。
「お前……」
「……大丈夫よ、問題なくやれる。私を誰だと思ってるの?異変解決のスペシャリストと呼ばれる博麗霊夢よ?私に解決出来ない異変なんて無いわ」
 ──やっぱりこいつは……。
「分かった。でも無理は絶対にするなよ お前がダメになったら私は何と言われようとお前を担いでこの場を後にする。香霖ならその手の症状にも詳しいだろうしな」
「恩に着るわ魔理沙……」
 霊夢は今にも力が抜け落ちそうな顔で私に感謝を述べた。
 違う……感謝なんてされるのはお門違いだ 。
 私は……私はお前を失うのが怖いだけだ……。
「この先ね、霊力と血の臭いが充満してる。やれるわね魔理沙」
「おう……いっちょ決めて行こうぜ霊夢!」

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