光の幻想録

ホルス

#5 動き出す異変

 霧雨魔理沙という少女は我が家に居るかのように神社の食い物を漁りに漁って居間に設置してある季節外れのコタツの机上に置き、ぬくぬくしながらミカンや干物を貪り始めた。
 見るからに年端も行かぬ女の子がこんなにもガサツになって良いものなのだろうかと心配してしまう程に食い意地や食べ方が酷い。
 正直見ていて気分自体はよろしくない。
 あの食べ方は例えるなら空腹で限界だった獣が目の前に突然現れた肉に喰らう様な……間違いなくその例えが正しい。
「ぶはー!食った〜!干物とかしか無いのが霊夢らしいな!まあ魔理沙さんの小腹を満たすには充分な量だったが。それで光って言ったか?まだ体は動かないのか?」
「まだね……これは多分外に充満してる深い紅霧のせいだと思う……」
「そうか?私は別に何とも無いけどな……人によって症状が違うのかもな、もしかして霊夢はこの霧の原因を突き止めに出てるのか?」
「らしいよ……人体に害が出るかもしれない原因は対処するとかそんなことを言ってた」
「へぇ……まあ人体に影響あるってんなら流石の私でも黙ってる訳には行かないな。 霊夢が動いてるなら話は速いしちょっくら黒幕とっちめて反省させて来るからここで待ってな。この魔理沙さんが居た時に異変じみた事をしたのが運の尽きだぜ!」
 そう豪語した彼女はテンション高めに叫びながら外へと飛び出して行った。
 まるで嵐みたいな子だったな……ともかく俺は体が動くまでここで寝てなきゃ行けないのだうか。
  引き摺られた痛みが微かに残る程度で体は依然として動かない、そもそも人によって違う症状が現れる紅霧なんて聞いた事が無い。
 これも幻想が成し得る神秘の1つなんだろうか……そう思うと僅かばかりではあるが悪くないと思えてしまうのが面白い。
 ──今は……ひとまず眠るとしよう、体を休め 毒を抜き、体を慣らす。
 そして……。


────


 気が付けば眠っていた、恐ろしく暗い居間は不気味さを強調させる。
 軽くなった体を起こして神社内を少しずつ回ってみるが博麗や霧雨の姿は無い。
 時間の概念が無いに等しいこの幻想では何時間寝ていたのか把握するのは非常に困難だ。
 彼女たちの帰りが遅いのか、それとも殆ど寝ていないからまだ帰って来ていないのかが分からないのだ。
 この暗さから夜だというのは分かるのだが、あまりにもこれは暗すぎる、よく目を凝らさなければ目の前に何が有るのかすら把握出来ない程には暗い。
 壁に手を当てながら移動するにも限度が有りそうだ。
 流石の俺も痺れを切らして思い切って神社の玄関を開け外の様子を見てみようと試みたが、それはあまりにも酷過ぎた。
 『本当に何も視えない』。
 1寸先の地面であろうと何も見えない、完全に暗黒の世界と化していた。
 神社内には光を灯すものが微かに有ったから視えていたものの、外に出ればそんなものはこの付近には無い。
 完全な暗黒でしか無いのだ。
 備え付けられていたランタンの様な器具を使って中に火を灯して明るさを確保して外へと出たが、それでも俺の周りを覆うだけで肝心の辺りを照らすまでにはいかない。
 まさか霧が更に深まって、あらゆる明かりを遮っているのだろうか。
 だとしてもそれは彼女たちが止めに行った筈である。
「随分とお悩みね」
「っ!八雲の使いか!?」
 姿は視えず、何処からともなく聞こえる奴の声。
 それは不思議と頭の中にスッキリした形で届いてくる。
 俺は何故かアイツをそう呼び、アイツを嫌悪している、その理由は自分でも分からずアイツもそれに反応しない事から別段おかしな事でも無いのだろう。
「あの2人は霧の発生源である場へと赴いたわ。少しのトラブルが彼女達を苦しめているだろうけど、この異変は辛うじて解決に導かれるでしょう。尊き犠牲を生んでね。光……そう名付けられた今はまだ弱き人間、貴方に彼女達を手助けしようと思う心意気は有るのかしら」
 前会った時に感じた奴の雰囲気とは何かが違う……まるで別人の様に変わったこいつの対応に相当警戒を高めたが、2人が霧の発生源に向かった事は間違いない。
 加えてこの霧の濃度からして彼女達にも霧の影響が出ているとも考えられる。
 こいつの言っている事は信用したくないが……信用に値する現状の証拠を持って来る時点で信頼性は高いのだと嫌でも認めてしまう。
「俺が行って少しでも良い方向へと変わるんなら2人のとこへ行くよ。害が出ている1人の人間が霧を出す人の事実証拠として文句を言えば嫌でも止めてくれるだろう」
 ──やはり彼は本心からそう思っている。
 記憶を失おうと彼の本質は変わらない。
「では行きましょう彼女たちの死地へ。我らが幻想に顕れた第──の異変。紅霧の異変を見事解決してみせるが良い博雨光!」

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