幻獣保護センターで働くことになりました

山椒魚

8話 パートナー

「ミレー川ってどんなところなの?」

「んーそうだなぁ。少なくともミレー川周辺には人を襲う幻獣なんていないはずだよ」

 ミカとカイトが二人でずっと話している。それを俺とテイラはつまらなさそうに見ていた。

「ちょっとあんた。さっきからずっと黙ってるじゃない。なんか喋りなさいよ」

「お前とは喋りたくない」

「じゃあミカちゃんと話せば?」

 テイラがいやらしく笑いながら俺の背中を押した。こいつ、俺がミカに気があることを知ってやがる。


「ここがミレー川だよ」

 ジャングルを抜けると、そこには濁った大きな川が流れていた。テレビでしか見た事がないが、アマゾン川にそっくりだ。

「じゃあ早速二手に分かれてC班を探そう!」

 突然指揮を取り出したカイトに少しイラッとしたが、俺はグッと怒りを堪えた。

「テイラさんと聖夜君は向こう岸を、僕とミカさんはこっちの岸を探索しよう。」

「おいちょっと待てや。なんでお前が勝手にパートナー決めてんねん。」

 これには流石の優しい俺も許せない。

「なんでお前がミカと一緒やねん」

「じゃあ君がミカさんと二人で探索するかい?」

「いや…。」

 俺は口をつぐんでしまった。ミカと二人きりは流石に緊張する。何を話せばいいか分からない。

「テイラと一緒がいい!」

 ミカが口を開いた。しかしミカとテイラが一緒になると、必然的に俺とカイトがパートナーになってしまう。

「俺こいつとなんか嫌やで」

「面倒臭いわね。じゃああんたがパートナー決めなさいよ」

 俺はまた口をつぐんでしまった。ミカと二人きりは緊張するし、カイトと二人は絶対に嫌だ。
 この中でいうとテイラが一番マシだが、俺は既にカイトの提案を否定してしまっている。
 今更テイラがいいと言ったら、皆から「なんてワガママな奴なんだ」と思われてしまう。

「一人でいいわ。」

 俺の唯一の選択肢だった。

「あんたバカなの?」

「一人の方が動きやすいやろ。」

「ここで遭難事件が起きてるんだよ?一人は危険すぎる」

「大丈夫やからほっといてくれや」

 俺は向こう岸に渡る橋を探すために、一人歩き出した。

「ちょっと待ちなさいよ!」

 テイラが大声で俺を呼んでいるが、無視して前に進む。

「ぴー…」

 ペガサスがテイラの側で悲しそうに俺を見ている。お前は着いてきてくれないんだな。お前は俺よりもテイラ達の方が好きだったんだな…。

 やっぱり俺は一人が好きだ。無駄に気を使わなくてもいいし、ストレスも貯まらない。何も考えなくても済むし、何より楽だ。

 そんな事を思いながらふと振り返ると、もうテイラ達の姿は見えなくなっていた。

コメント

  • 道楽もん

    俺も聖夜の立場だったら、その選択肢を選びそうな気がする……。

    2
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