幻獣保護センターで働くことになりました

山椒魚

7話 美少年現る

 俺、テイラ、ミカの3人は、幻獣保護センター1階のロビーでトリードを待っていた。俺達に合わせたい男がいるらしい。

「待たせちまったな!」

「トリードさん遅いですよ!C班が助けを待ってるっていうのに!」

「すまねえミカ。君らだけじゃ不安だったからな。飼育部のカイト君を連れてきた」

 遅れてやってきたトリードの後ろから、さらに遅れて少年が歩いてきた。

「はじめまして、カイトと言います。短い間だと思うけどよろしくね」

 カイトと名乗る金髪の少年は、テイラとミカに爽やかな笑顔を見せた。

「あら、イケメンじゃない…」

「お前には絶対興味ないと思うで」

「あんたいちいちうるさいわね!」

 どうやらテイラ好みの男らしい。しかし俺はこういう爽やか野郎は嫌いだ。どこか感に触る。

「じゃあ早速君たち四人にミレー川へ向かってもらう。ミレー川は保護センターを出てずっと北西の方だ。徒歩1時間くらいで着くだろう。任せたぞ…!」

 俺達はトリードに別れを告げ、ミレー川へ向かい出発した。


 保護センターを出て10分が経ち、俺達はジャングルの中に足を踏み入れていた。昼なのにも関わらず辺りは薄暗く、不気味な雰囲気が漂う。

「この辺りにはどんな幻獣がいるんですか?」

 テイラが怯えたように辺りを見渡しながらカイトに寄り添う。

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ここには大した幻獣はいない。襲われることはないよ」

「よかった…。でもあたし、怖い…。」

 俺は知っている。テイラは嘘を付いている。怯えているふりをして、カイトにベッタリしたいだけだ。

「大丈夫だよ。僕がいるから。」

「ありがとう。カイトさんって優しいのね!」

「フッ」

 テイラのあまりにも臭い演技に、俺は吹き出してしまった。

「ちょっとあんた!何笑ってんのよ!」

「いや、頑張ってるなぁって思って」

「な、なんの事よ…。」

 テイラは少し焦りながらもシラを切る。

「君、女の子にいじわるするのは良くないよ」

「あ?なんやお前。やんのか?」

「え?どうして怒ってるの?僕はただ注意しただけなんだけどなぁ」

 カイトは俺に爽やかな笑顔を見せた。俺を舐めてるとしか思えない。やっぱり俺はこういう男が大嫌いだ。
 俺は一歩前に出て、カイトに威圧的な態度をとった。

「二人ともやめなよ!こんな所で揉めてる間にも助けてを待ってる人がいるんだよ?」

 ミカが俺とカイトの仲裁に入る。

「ああ、せやな。」

「そうだね。まあ原因は僕じゃなくて聖夜くんにあるんだけどね」

「んだと!?」

「やめて聖夜!」

 ミカが俺の手を引っ張る。初めて女の子に手を掴まれて、俺は緊張のあまり声が出なくなった。

コメント

  • 道楽もん

    面白そうな人間関係ですね。続きが楽しみです。

    1
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品