転生凡人は天才悪役令嬢を幸せにしたい

かごめ@

1

なんだろう、そう、なんていうか、
眠りかけで微睡んでいるような、そんな感じ。何かを考えていたはずなのに次の瞬間には忘れてしまう、そしてたまに感覚のない何かを動かすと壁のようなものに跳ね返ってくる、そして壁の向こうから何かが聞こえる、一定のリズムの何かが。私はそれを聞きながらぼーっとしていた。
そうしていたある日、私は急に今いる場所が狭く感じて、出たい!って思った。そしたらその瞬間に大きなよくわからない力によって私は狭い道に押し付けられた。私はこの押し付けられる力が怖くなって必死にその狭い道を這いずった。
そして頑張ってその狭い道を進んでいたら急に身体がくるりと回って狭い道から引きずり出された。
引きずり出されたその先では身体が急に重くなってしかもよくわからない感覚が私の肌を撫でたそして今まで感じたことのない強い音と光、私は怖くなって泣き出した。

これが私が金城 鈴から
レイ・シャールクルとして生まれた変わった瞬間だった。 


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やっと、やっとこの時が来た!
私、金城鈴はどうやらレイ・シャールクルという女の子として生まれかわったようだ。そしてこのうまれかわった世界は元の世界とは違うらしい、何故なら、まず、文明が発達していないこと、エアコンどころかストーブも固定電話もなかった。しかも文明が発達していないのに髪や目の色が派手すぎる!ピンクの髪の色なんて初めてみた。しかも、根元からピンクだった、多分、地毛だろう。他にも色々と元の世界と違う所があったが、まぁ、大体こんな感じのことから別の世界だと気づくことができた。
そして、何故私がこの時を待っていたのかというと私はついに5歳になったのだ。今までは大変だった。周りにいる大人が何を言っているのか分からないし、何よりも感情のセーブが効かない。少しお腹が空いたくらいで泣いてしまうし、眠りに落ちる感覚も怖くて泣いてしまった。でも、今では言葉も分かるようになったし、あまり泣かなくなった。でも、私がこの時を待っていたのはこれだけが理由では無い。実はこの世界では5歳になるまで子供は神の物とされて、産まれた家の子供としては認められない。なので死んだとしてもお墓すらたててもらえないのだ。だけど、5歳になって教会に行って正式に登録するとその家の子供として認めてもらえるのだ。それに、何なのか分からないが、大人たちが明らかに何か私に隠している事がある。だが、聞いても5歳になれば分かるとしか答えてもらえない。だから、この時を待っていた。やっと分かる、大人達の隠している事が。
「レイ!準備できた?でておいで!」
部屋の前からお母様の呼ぶ声がした。
「はーい、今行きます。」
私は大きい声でそう答え、ドアを開けた。
私は今からお母様と教会に行く、そしてシャールクル家の長女レイとして認めてもらうのだ。

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今私は馬車に揺られている。教会に向かうためだ。
「レイ。気分は大丈夫?」
お母様がそう尋ねた。お母様は栗色の髪と、焦げ茶色の瞳の落ちついた人だ。名前はマリー・シャールクルという。
「はい、お母様大丈夫です。」
そう答えるとお母様はにっこり笑って私の方を向いて話し出した。
「いいこと?貴方は今から教会に行き神に感謝の祈りを捧げ、そして“紋章”をもらうの、そしてその後中央の役所に行き、レイ・シャールクルとして登録するの。わかりましたか?」
……“紋章”?聞いたこと無いぞ、なんだそれ?
「お母様“紋章”とはなんですか?」
私がそう聞くとお母様はふふふと笑いながら
「今は分からなくていいわ、貰ったら分かるもの。」
そう答えた。
成る程、これが大人達が隠している事に繋がっているのかもしれない。
そうしているうちに教会に着いた。馬車から降りると大きな門があり、私は気圧されてしまった。するとお母様が手を引いて
「大丈夫よ、行きましょうか。」
と、言った。
お母様が門番らしき人に声をかけると大きい門がすーっと開いた。
私はお母様に手を引かれながら教会に入って行った。

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