異世界のダンジョン講師

Blackliszt

いざ、異世界へ!

「お主らには異世界に行ってもらい、生徒を立派な迷宮攻略者として育成してもらいたい」


「で、話は聞いたが肝心の姉さんはどうしたんだ?」


 俺は姉さんのついでに呼ばれたはず。であれば、姉さんも一緒にここにいるはずだ。だが姉さんはここにいない。


「じゃから儂は今の説明をお主と姉に一度したんじゃ!しかしお主ときたらずっと考え事をしておって人の話をろくに聞いとりもせん」


「失礼な!話すならまず初めに相手の意思確認をするのが当たり前だろ!というか人の心が読めるくせになんで俺が気づいていないことに気づいていないんだよ!」


「あ・・・・・・」


 なんでこの爺さん神様なのにこうも人間くさいんだろう。俺の指摘に今気づいたようにマヌケな声を出す爺さん。


「と、とりあえず、先に話を聞いたお主の姉はその旨に同意してさっさと異世界に行ったぞい!」


 この爺さん誤魔化したぞ。やーいやーい焦ってやんの!


「ガキかお主は!」


 心の中で子供のように煽る俺に爺さんは我慢ならないような怒声をあげる。結局取り乱してんじゃん。


「まぁ、お主の姉は優秀ということじゃな。お主と違って・・・!」


 ここぞとばかりに嫌味を言ってくる神爺。


「姉さんは俺の自慢だからな」


 しかし俺はここで大人の対応を見せる。そんな俺の大人の対応に神爺は悔しそうに地団駄を踏んでいる。


「ところで俺がこの話を断った場合どうなるんだ?」


 俺には異世界に行くかどうかの選択権があったはずだ。その俺の質問に地団駄を踏んでいた神爺はニヤリと口角を上げて悪い顔になる。


「その場合は元の世界に返してやろう。ただし!お主は一度死んだ扱いになっておるので、お主はお主として生き返ることはできん!」


 なんだと・・・・・・。それじゃあ俺は知らない誰かとして元の世界に戻るということか!


「さ、ら、に!じゃ・・・・・・お主はここにきたことで輪廻転生から外れておる。そのため、お主の魂を意識を残したまま戻すには現在の修正された流れに適した形で戻す必要がある。つまりお主は人間として生まれ落ちるかどうかわからんということじゃの!」


「ふざけるな!それじゃあ選択肢があってないようなものじゃないか!」


 その神爺の発言に対して憤る俺をよそに神爺は「フナか?それともミジンコかの?」なんてふざけたことを言っている。


「まあ選択肢はあるじゃろ。さて、お主はどちらを選ぶのかの?」


 こんなの俺が選ぶのは一択しかない。唯一生きていた肉親もすでにそちらを選んで行ってしまっている。


「わかった。わかったよ!いけばいいんだろ、異世界!」


 その俺の答えに神爺は髭をいじりながら満足そうに「ホッホッホ」と笑っている。


「一応これは儂からの依頼じゃ。じゃから教育や研究に必要なスキルを一通りとこの世界の最低限の知識、翻訳スキルもつけといてやるわい。それからアビリティは底上げして不可逆の成長限界なし、そんなところで良いかの?」


「ああ、それでいい」


 それでも結構譲歩した結果らしい。俺は渋々爺さんの提案を飲むことにする。


「それでは、スキルをお主に渡して異世界に行ってもらうとする。最後の選別じゃ、何か質問はあるかの?」


 神爺は最後の選別と言って何か質問はあるかと問いかけてくる。


「なあ爺さんにはあっちに行った後会えないのか?」


 俺はふと思ったことを神爺に質問する。


「儂からコンタクトをとれば会えないこともないが・・・・・・急にどうしたんじゃ?」


「まあ爺さんとのおしゃべりも楽しかったからな。また話せたらと思っただけだよ」


「お主・・・・・・」


 神爺はどこか感慨深そうに俺の言葉に浸っていた。




 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・




 まあ安心材料が多く欲しいだけ、ともいうけど!


「お主!」


 俺の心を読んだ爺さんが激怒する。


「ほれ!これがお主のスキルじゃ!今すぐ異世界のゲートを開くからこれを受け取ってさっさと行ってしまえ!バーカバーカ!」


 そういう神爺の手には一つの光の玉が浮いており、後ろには大きな門が現れる。


「おう、ありがとうな爺さん」


 俺は爺さんにスキルを受け取る。すると光の球は受け取ったてっから俺の中に吸い込まれていった。


「では、達者でな」


「爺さんも長生きしろよ!」


「阿呆!儂は神じゃかからお主よりは長生きするわい!」


「全くこれだからこやつは・・・・・・」と溜息を漏らす爺さんを背中に俺は門に手をかける。


「主人公俺!の物語が今、始まる!」


 そんな俺の宣言に「なんじゃそれは・・・・・・」と呆れたように見届ける神爺の顔はどことなく笑っているようだった。






▽      ▽      ▽      ▽


 門が閉まり、カズキがいて賑やかだった空間に静寂が訪れる。すると神爺の顔がどんどん青くなりその顔には大量の汗が浮かんでいる。


「い、いかん・・・・・・!取り乱しすぎてスキルを渡しすぎた!」




 チート満載の香りする主人公、カズキの物語が今、始まる!

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