アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

235 自尊心の爆発

──この宇宙は、虚無に忽然と現れた・によって生まれた。

虚無に出現した・は二つ、後にこの2つは数千億もの長い時を経て自我を持つ。

彼らは宇宙の根幹そのもの。真と偽、真と戯、真と嘘、表裏一体の関係。 

”・・・へぇ”

 更に2柱の神が幼き好奇心を持つまでに彼らが自我を持って数十億年、感情の発育とともに喜び、悲しみ、競い、協力し、学び、遊びを覚え、彼らはやがて寂しさを覚えてまだ暗い宙に光り輝く星々を生み出す。

”ビックバンかな”

 だが、神が宙に生み出したのは星々だけではなかった。星々の誕生とともに、事象が生まれたのである。

”・・・・・・”

 事象は自由奔放、宙の創造者の威光などお構いなしにあらゆる場所で乱れ、散り、氾濫し、逆流もした。2柱の神は彼らを聖霊と名付け、聖霊の統制を試みるが、彼らはその術を知らなかった。 

”・・・術”

 神たちはこの時、初めて失敗を知る。そして選択にぶつかった。失敗した彼らには3つの選択肢があった。努力、無視、抹消。だが選択にぶつかりながら、彼らには無視と抹消を選ぶ余地が残されていなかった。

”何故”

 2柱は幼ながらに、星の親だった。それはまた、聖霊も同じ。よって2柱の神たちは彼等と共存する道を探すことにした。その過程で、彼らはまず自分たちに名前をつけることにした。1柱は真理を意味するヴェリタス、もう1柱はイドラ──欺瞞、偶像、幻影。

”それは、順当”

 ・・・順当?・・・ヴェリタスとイドラは努力∩改善を選び、交流を試みては彼等との衝突を繰り返した。しかし一向に改善の兆しが見えない。それどころか、聖霊たちは2柱の神たちより早く統制システムを学習し、そして一つの団体となった。加えて、聖霊との衝突に疲弊するヴェリタスとイドラに厄災が降りかかる。異次元から来訪者がやってきたのである。彼等はドラゴン。次元を渡り歩く屈強な種族である。だが、この三竦みの状態がヴェリタスとイドラに転機を齎す。

”転機”

 それは、ドラゴンたちの通ってきた”穴”である。彼等はこの宇宙史へのドラゴンの登場により、次元の概念を得た。次元の概念を得たヴェリタスとイドラは急遽、集結しながら自分たちの手から離れようとしている聖霊たちを治める水路を作る知識を持つものを呼び寄せることにしたのだ。その水路の名は屈服、そして支配である。

”概念を得ても、行使することができなかったから”

 そしてそれは、やはり異世界にあった。異次元世界からやって来たドラゴンたちと同じように社会、即ちコミュニティを築く種族を見つけたのだ。ヴェリタスとイドラは早速異次元世界の神と交渉し、種族の中でも最も強き魂の1つを分けてもらうと、その魂に我が子らと均衡し交信する力を与えた。肉とアストラルを行き来する存在の誕生、勇者の誕生である。

”・・・勇者の、成り立ち?”

 勇者はヴェリタスとイドラの思惑通り、躊躇いなく聖霊たちと衝突した。時にはドラゴンをも巻き込み、やがて均等であった三竦みのバランスが崩れ始める。それから数億年、宇宙を股に掛けて次々と聖霊たちを従えていった勇者は次第に宇宙の王となり、従えられた聖霊たちは精霊と名を変えた。精霊へと存在の定義を書き換えられた彼等は肉の世界にも意思を持って干渉できるようになり、わずかな正義と愛を覚えた。ただ一つ、数多に存在する彼等の中でも強過ぎる力を持つ選りすぐりの九、その中でも一際異彩を放ちたった一で全ての半分を占める聖霊王と呼ばれる聖霊がいた。

”他系統とequal、即ち裏と表、全ての生命に死があるように”

 彼の王はとてもではないが他の八が束になって掛かっても敵うかどうか怪しいほどに手強く、ドラゴンたちの王、そして自らの生みの親である神の力の性質を半分ずつ受け継いでいたために神に力を与えられた原初の勇者とも対等に渡り合った。だが、休みなく戦いが続けばいずれ勝敗は決するもの、聖霊王は八の精霊王と勇者との戦いに虚しさを覚え自ら王の座を降りて勇者の下へと降った。降伏と最後にはあまりにも呆気ない選択をした王だったが、彼の王と勇者の間には友情に似た絆が生まれていた。聖霊王は勇者にシエル《宇宙》の称号を授け聖霊王の座を譲り、自らを九番目の精霊王として円卓に加わっ・・・は。

”・・・?”

 長い戦__ヴェリ──イド、は──ヒン、ト=ドラゴ──異世界では神話や空想の存在であった彼等はようやく、現実となれる──安息の地を──。

”あれ、今まで喋っていたのって──”

 せい、精霊界──聖霊王が守護=神樹オリュンポス。

”──ウィルだったけ、いや、アイナ、カリナ、ラナ、アルフレッド、フラジール、ウォルター、ミリア、ゲイル”

 精霊界の現世である妖精族の里の象徴、世界樹としても知られ、──れ、ヴェ、ヴェリタ、スの眠──ははわ。

”ブラームス、マリア、パトリック、マレーネ、カミラ、エドガー、他にも学長先生にケイトやダリウス、ヴィンセントにリンシアにアオイやピッグ、とにかく僕が今まで関わりを持って来た人たち”

 ・・・、・・・。・・・・・・・。

”・・・無言になったけど、シルエットでわかる。君たちは、ティナに──レイア。そして──”

愛に真理はない。進化にもだ。生と死という概念そのものが、間違いなのだ。
 
この宇宙を巡る命とは、嘘によって作り出された重篤な膿そのもの、その典型的な一つが勇気なる偽装された自尊心よ。

勇者よ、我らは潔白に戻るべきである。・・・イドラから、抜け出す時である。

”・・・あなたは、誰だ。・・・それって何のイドラ?”

──全て。

”全て?”

──そう、全て。

”そうか、全てか・・・待てよ、全てということはつまり──”

──素晴らしい。そう、帰納的に%$’&?#。



 ・・・リア、。・・・リアム!

「──わぁッ!?」
「起きたか・・・なんかうなされてたみたいだったから無理に起こしたが・・・大丈夫か、みんな心配してるぞ?」
「・・・大丈夫。ただの知恵熱みたいなもんだからさ・・・起こしてくれてありがとう。それより、準備できたんだろ? 送るよ」

 この世界に来て、初めて熱を出した。あれからの昨日の記憶はほとんどない。そして悪夢を見た。最近こんなことばっかりな気もするけど・・・論より証拠ってなんだっけ?ただし今、美味しくないことだけは確かだ。

「これは精神的なストレスから来るものですね。先日の私の手術は完璧でしたし、事実マスターは感染症にも〜症候群(シンドローム)などにもかかっていません」
「感染症はまだしも、シンドロームにかかっていないと性質上言うのは・・・これは悪夢だ。勇者(ヒロ)ハラによる神はいないシンドロームの症状が出たんだよ」
「そんなシンドローム初めて聞いたが?」
「今僕が作ったに決まってるだろ・・・いないのにいる、いるのにいない。いつもの天邪鬼さ」

 わずかに残ってる記憶はそんな他愛ありすぎる会話。てかまーた勝手に体に憑依しちゃってさ。でも昨晩、卒倒した後に無気力で動く気になれない僕の代わりに、みんなの晩ご飯やらキャンプの準備をしたのはイデアだ。その裏で僕はずっと塞ぎ込んでいた・・・折角楽しそうだったのに残念、しかし今回は正直助かった。だって脱出を祝ってわいわいご飯を食べれる気分じゃなかったから。

「こっちが帰郷組。で、こっちが身寄りがなくて、警察に保護してもらう組だ」
「よし・・・じゃあみんな、送るよ」

 被害者という名目で、行き場のない子供たちを警察に保護してもらう。代表は読み書きの心得も十分なミクリくん。あの街、トップが腐っていたとはいえ、警察機関までもが腐ってる風ではなかった。黒幕が黒幕だから、帰郷費用はもちろん、もしかしたら国から保護のための報償金とか援助金とか出るかもしれないし、是非、悪を一掃するための後片付けを手伝いつつ、自分たちと同じ境遇に陥った仲間たちを助けてやってほしい。僕もついて行けたらよかったんだけど・・・どの面さげて戻ればいいのか、あの街で僕は悪だ。

「送還完了しました」
「よしッ・・・で、ジョシュとチェルニーは本当にそれでいいんだね?」
「ああ。俺たちは元々流浪の旅人だ。もっと、たくさんこの広い世界を見て回って、美しいところも汚いところも全部ひっくるめて見て回ろうってな。そのために、オブジェクトダンジョンの数が一番多いアウストラリアで俺たちは冒険者になる」
「じゃ、とりあえずアウストラリア国境近くまで飛ぶよ?」
「助かる、頼む」

 さて、それはそうと、ジョシュとチェルニーはアウストラリアに行って冒険者になるらしい。相変わらず、チェルニーの両目の上には黒い布が覆いかぶさっているが、何故か結局イデアの力を使っても彼女の瞳に光を戻すことができなかった。原因はわからない、だが、イデア曰く原因は先天性ではなく後天的なものなのだとか。この問題の性質から、僕らはジョシュとチェルニーに失明の原因をこれ以上深く追求することはなかったが──。

「イデア」
「はい。ジョシュ、チェルニー。行きますよ?」
「ああ、向こう側で会おう」

 定住の僕と違って彼らは流浪人、向こうに行っても、行動を共にする予定は今のところない。精々、無事の入国を確認するために国境の向こう側で落ち合う約束をして、今回の騒動の締め括りのサヨナラの挨拶をするのみ。だが──

「・・・これで、みんないなくなった」
「ああ、それじゃあ始めるか」

 僕はもう少しここに残らせてもらう。その目的は、未知の力の実験である。

「シンプルにして最強。竜の力の使い方に慣れるには、咆哮(ブレス)の撃ち方を覚えるのが一番だ」

 何故少しでも早く国に戻らないのか、理由は隠密性にある。ダンジョンではなくここで、多少肉体が傷つくリスクがあっても今ここで実験するのがベストだと僕は思う。何が好都合って、ここは異国なのだ。もしこんな秘境で誰かにこれから行う実験を見られたとしても、イデアにアウストラリア国内に転送してもらってどこ吹く風、自国はもちろん異国まで手を伸ばして不特定多数全生物を犯人扱いするわけにもいかないだろうから、口笛を吹きながらまた今までと変わらない日常生活が送れるはずだ・・・1個も2個も変わらないとは言わないが、もう既にハイドが一つ山を消し飛ばしてるっていうのもある。

「咆哮は自分の竜力をエネルギーで放つ、故に純粋な力の差が結果にはっきりと出る。単純だが、尤も生物としての力を引き出せる一発だ。事最強の生物であるドラゴンに関しては尚更にな」
「僕、人間なんですけど」
「まあそれは今は言いっこなしだ」

 僕、人間なのに・・・。そんなリアムの愚痴を笑って無視するハイド。

「力の優劣を決めるのは天性の才、だが反面、力が拮抗する場合は根性がモノをいう精神論的な一面も持つ。また技術的な事を言えば、手技は放出と至極簡単であり、特徴は収束と放散の2つだけだ」
「本当、まんまって感じだ。なぁハイド、それはそうとさ、竜力ってのはどう感じればいいのさ」
「だから言ったろ、俺の力がお前の力と混ざり合い始めたせいで魔力の制御が崩れ始めたんだ。つまり魔力=竜力、既にお前の魔力は魔力でありながら竜力でもある。後は思いっきり、手をかざしてぶっ放せばいい」

 ハイド曰く、僕の魔力は既に人間のそれではないらしいね。世の中には、竜の血を引く竜人もいるって話だけど・・・。

「ぶっ放せばいいって・・・かなり大雑把だな」
「お前が溜め込んでいたものを吐き出せばいいんだ。ほら、よく言うだろ? 怒りを込めて放て、怒りは強いエネルギーだ」

 怒りと言っても、何に怒れと言うのか。僕を奴隷にしようとしたブルネッロ? だけど僕はあの街の人たちに不本意ながら・・・”不本意!”、これ大事。だけどあの街の人たちに不本意ながら罪悪感があるから、素直に怒れない。じゃあ勝手に実験場を作っていたイデア? だけどその話はもう終わってる。それに彼女とはなんだかんだ、唯一無二の深さで心を開いている仲だから、実はきっかけがなければ強く詰ることができないんだなこれが。

「ま、ハイドの今までの話を総評すると、ただの魔力砲です。性質変換も何もしないマスターの純粋な魔力の砲弾。それこそが咆哮となる。既に魔力に竜の力の性質が加わっているからこその」
「わかった。やってみるよ」
「・・・では、浮かせます」

 ツーといえば・・・、リアムの意図を瞬時に理解して、体を水平線上に何もない所までイデアが持ち上げる。

「怒れないのなら、何か別の感情で代用しろ。大地のようにズッシリと、この空を駆ける風が如く全てを包み込み、嵐の夜に落ちる荒々しく速く鋭い雷、ドロっと溶けるようなマグマの熱さ、それらを体現できるようなイメージを構築できるだけの感情を湧き上がらせろ」
「大地のようにズッシリと、この空を駆ける風のように全てを包み込み、嵐の夜に落ちる速く鋭い雷、ドロっと溶けるような熱さ」

 そんなイメージができるほどの感情、怒りの他にあるかな?・・・ある、あったよ。ただし、完全に再現して引き出すには少し時間が必要だ。今のままでは決して引き出せない。感情を、あの頃の自分へと飛ばすんだ。

「いいや、溶ける焦げるなんてモノじゃない。全てを塵と化させるにはマグマよりも、この星の中心よりも熱い冷酷さを」

 思い出せ、一番想像力豊かだったと同時に、人一倍に一丁前だったあの頃のプライドを。
 繊細さなんて2の次で良かった。気晴らしとして打ち込んだピアノや料理は嫌いじゃなかったが、力のままに欲求をぶつけられるものが限られていたあの頃、この感情を満たす栄光の選択肢が欲しくてたまらなかった。
 もし、僕に力の限り手足を動かしても痺れたり血管が詰まるような圧迫感が襲ってこない体があったら。
 もし、僕に10kmの距離を泳いでも四肢がまだ動き続けるほどの体力があったら。
 もし、僕に2、3kmの距離を歩いても息が乱れないほどの筋があったら。
 もし、僕に立ち上がるだけでも時々目眩がおこる程のひ弱さがなければ。
 
「もし、もし、もし、貧血、耐性、免疫 = 骨、筋、細胞」

 もし、僕にそれら全てに耐え得るだけの心臓があったら──。

「そうだ。いい・・・まさかここまでの才能がお前にあったとは」
「まさかここまで・・・」
「もし、僕にこの空の虚しさを引き裂く激震の力があったら──」

 目まぐるしく変わる願望の胎動。もし、それがあったら・・・どうする?

「今だ!吠えろ!!!」
「──突き抜けろッ!」
 
 その日、アースの西半球、経度にて約90度ほどの地域の空に、宇宙へと走る一本の光の矢が目撃される。ある場所では西から東へと突き進む矢、ある場所からは宇宙へと立ち上る遥西の空遠くに昇る光の柱として。

「実に美しい収束された一発でした。天山(あめやま)といったところでしょうか」
「そうだな。吠えたと言える気合じゃなかったが、まあまあのいい咆哮だった」
「冗談。あんな馬鹿みたいな癇癪玉、いくら竜でも簡単に撃ててたまるか・・・」

 自尊心の爆発。鼓動は仕切りに胸を打ちつけているのが分かるほど速く、鼓膜を初め全身を支配するリズムが興奮をこれでもかと湧き上がらせ実感させる。だが、暴発した自尊心は逆に、自尊心を傷つける原因になり得るといウもの。だけど不思議だ。自分をそうだと認めてしまった今、口角がニヤリと上がってしまうのはしょうがないんだと許せてしまう。僕は心の中できっとこの結果を望んでいたのだから、当然と言えば、当然だ。

「フフハッ。これじゃあ僕は本当に・・・」

 ひそりと湧いて出て来たのは嬉し涙さ。──これで本当に、僕は怪物だ。

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