アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

221 サクリファイス

「どうか・・・アメリアを・・・」

 教会の聖堂から、多くの祈りが重なり合って天へと向けられる。

「・・・たすけて」

 また、静まり返った祈りの時に溢れた一人の少女のそれは、その場にいた全ての者たちの声である・・・

「・・・進化です」
「キィィィィあぁぁああアア!!!」
「耳が・・・!」
『いけない・・・エリアヒール!』

 蹲り耳を抑えたまま動かない皆、そして自分のためにもエドガーが辺り一帯にエリアヒールの魔法をかける。一瞬のことで、皆耳を塞ぐにはあまりにも咄嗟の出来事だった。

「流石エドだ・・・助かった」
「いいや。プロテクトウォールを張るのが間に合えば・・・ゴメン」
「気にするなって! 結果良ければなんとやら」
「全てよし、よ。まあまだ終わったわけじゃなくて始まったばかりなんだけど・・・」 
「どちらにせよ、今直面している状況が厳しすぎるものであることに違いはないわ」

 ファインプレーでここにいる全員の状態を立て直したエドガーを仲間たちが褒めつつ、彼らはこの場におけるリーダーの指示を待つ。

「メフィストの提示・・・【ケース1 : model = エキドナ;成功】」

 一方、サクリファイスを成功させたシルクは──

「ムフフ・・・フフフッ」

 堪えるようにしながらも、その顔を狂気の笑みに歪めていた。

「今・・・なんて?」
「ですから、進化です」
「進化!? 明らかに狂気に満ちた叫び声なんだけど!?」
「正確には、肉体的なハイブリット進化です。知識レベルは著しく低下しているようですが・・・しかしご覧になってください。あの蛇の尾のような下肢、何より彼女を操るようにまとわりついている魔力量(アレ)は異常です」
「その判断(アレ)が優先基準になると既に僕は人じゃなくなってるんだけ・・・ボクは人間だぁ!」
「はい。既に周知された事実です」

 だが──

「どっちが!? ねえ今のどっちよ!」
「さあ? どっちとはどっちがどっちなんですか?」
「だからどっちがどっちでその・・・どっちがこっち?」

 そんな緊張張り詰める現場のはずが、何故かリアムとイデアは落ち着いているというか、巫山戯あっていた。

「リアム・・・なぜお前はそう落ち着いておる」

 すると、目の前で一人の人間が怪物へと姿を変えてしまったのに緊張感のかけらも見せないリアムにブラームスが尋ねる。

「別に、こういう時冷静さを欠くことが一番望まない結末へと僕たちを引き込む可能性を広げるだけです。だから強がって虚勢を張る」

 リアムが答える。もちろん現在自分たちが直面している状況はわかっている。だから虚勢を張って、なるべく余計なことを考えないようにする。 

『いや、虚勢を張っていると自分でわかって口にしている時点で既に混乱しているのか・・・って止めろ! こんなジレンマに嵌らないために強がったんだろ!』

 しかし、こんな時だからこそ余計なことまで心配してしまうのである。実は強がれる根拠も一応に自分の中にはあるのだが、だったらそれをより確実にするべきなのか、それとももっと良い別の手はあるのかと、これは打開策を必死に探す人間の防衛本能で・・・こんなときこそ自己分析をして・・・あ、ループした。やはり焦っているのだろうか。 

「それにここは幸いにもダンジョンの中です。だったら・・・」

 こういう切羽詰まらされている時、一番可能性の高いはずの作戦を最高とせずに、何故か失敗した時の対策よりも上級の作戦を模索することを優先しがちなのは悪い癖だ。だから今は、ただ粛々と自分がまだ大丈夫だと思う根拠を再確認しつつ周りにも伝えることにしよう。尻尾まで含めれば全長10mほどと巨大化はしているが、エキドナの上体にはアメリアの面影も残っているし、強化され暴走しているのであろう魔力も正直言って、いい意味で今のリアムの魔力量とは比べ物にならない・・・そして──

「倒してしまえばいい・・・そして元に戻せば・・・」

 だが、そうした葛藤の末リアムがダンジョンの復活(リヴァイブ)システムを利用してアメリアを元の姿に戻してしまえばいいと周りに告げた時──

「フッフッフッフッフ・・・」

 それを聞いていたシルクが、不敵に笑い始める。

「何かおかしなところでもあったかな・・・?」
「失礼しましたリアム様。ですがどうやらあなた様は、ダンジョンのリヴァイブシステムについてあまりお詳しくないようですので、一つ豆知識を披露させていただきたく・・・」

 思わず敵である彼女に不機嫌そうに笑ってリアムが問題を尋ねれば、シルクは畏まって頭にかぶっていた帽子を取って胸の前に抱える。

「ご存知ですか? ダンジョンはその日変形した地形や採集された資源をデフォルトのものへと修復しますが、生き返らせリヴァイブに送るのは人間だけなんです」

 そしてシルクは、そんなダンジョンの神秘の一つ、リヴァイブについての知識を披露する。

「はてさて・・・資源(モンスター)でも人間でもない今の彼女が果たしてどうダンジョンに認識されるのか?」
「アメリアはモンスターなんかじゃない・・・」
「そうですか? 私の目から見ればどう見てもモンスター。人間とは知性と理性を持ち合わせて初めて人間なのです。こんな知性のかけらもない不安定な異形と私は同類に分類されるのは嫌ですが・・・」
「そんなの妄想だ! だって彼女はモンスターじゃない! 人間だ!」

 そして、リアムが問いかければ──

「そうだよね。アメリ・・・!」
「・・・?」

 素っ頓狂に首をひねる、アメリアだったそれ。

「アメリア・・・?」
「・・・チロッ」
「・・・嘘だ・・・彼女はモンスターじゃ・・・」

 顔のところどころから下に行くにつれ増えていく鱗に完全に蛇と化した下肢、夜行性の獣に見られるような縦に長く細い目に先っちょが二股に分かれた舌。

「リアム・・・お前はダンジョンが人しか生き返らせない・・・そのことを身を以て知っているはずだ」
「身を以て知っている? そんな・・・」
「・・・1年生。お前が初めて魔法を使った日のことだ・・・」

 すると、リアムがアメリアの奇行に戸惑っていると、先ほど何故落ち着いているのかと尋ねたブラームスがリアムに──

『というわけで、ポイントの返還と、謝罪に来ました』
『いいっていいって、別に気にして無いから』

 ・・・それは、リアムがスクール所有の森を半壊させてしまってから2年が経ち、初めて公爵城へと出向いた日の学長室での出来事だ。

『確かにあの時外部から持ち込んだモンスターたちが蘇ることはなかったけど』

 2年越しにリアムが吹っ飛ばしたの森が実はスクールの研究施設を兼ねていたと聞き、316万のポイントの返還と謝罪を申し出た時にルキウスが告げた当時の森の状況を説明した際の抜粋である。

「ダンジョンの地形は復元力によって戻るけど・・・外から連れてきて失ったモンスターは・・・」

 想起のために視線が下がり俯いたリアムの顔に急激な焦りが生まれる。モンスター・・・さらに外からという条件は──。

「復活しない」

 今のアメリアを、果たしてダンジョンは人だと判断するのか。

「・・・」

 ふと、ルキウスとの昔のやり取りを思い出したリアムが顔を上げる。

「・・・?」

 すると、リアムとアメリアだったソレとの目が合えば、エキドナは所々に鱗を生やしたアメリアの顔で再び今度は逆向きにきょとんと首を傾げる。

「・・・ッ!?」

 途端、リアムの頭から脊髄にかけ、そして足の指先までに悪寒が駆け抜ける。

「物語(ストーリー)は、物語(ゲーム)じゃなかった・・・」

 リアムはオブジェクトダンジョンというものが、ひとりでに自然に発生したものではないと知っている。それはゲームのように生き返ることのできるシステム、ポイントシステムとと便利な交換所、そしてエリアボス戦をクリアした時に打ち上がる花火・・・これらの要素を総合的に判断すれば、信じがたいが自分のような転生者の誰かが設計に携わり生み出したということは明白である。

「ダンジョンへの信頼に足をすくわれましたね。マスター」

 やはり焦っていたらしい。最良からそれ以上を考える愚かな答えのないパターンを連想し、最悪の場合の判断および目測を見誤りないがしろにしていた。
 ・・・ダンジョンのシステムは万能で、侵入した人の命を絶対に保護するよう設計されているから大丈夫だと浮かれていた。しかし誰が想像するだろうか。突然人が人の手によってモンスターへと変えられてしまう・・・そんな非現実的な、非人道を。

「どうして・・・どうしてなんだ」

 自分の認識不足に対してはもちろん・・・だが。

「どうしてなんだハッター! どうして・・・!」
「私のことは是非親しみを込めてシルク、とおよびください♪」
「そんな呼び名なんてどうでもいい! どうして君達はアメリアにこんな仕打ちを・・・!」

 なんの繋がりもない、関係のないアメリアを巻き込んで・・・

「シルク・・・?」
「おや・・・?」

 が、リアムがそれを叫ぼうとした瞬間──

「シルク・・・ヴィクトリア・・・」

 突如、自我がぐちゃぐちゃにかき回されてしまったと思っていたアメリアの口から──

「・・・ゲオルク」
「まさかおもちゃ箱トイ・ボックスに入っていた時の記憶が・・・」

 シルクを始めとする、謎の2人の名前が呼ばれる。

「シルクです。全くお姉さまも余計なことを・・・」
『お姉様・・・? もしかして顔見知り・・・なのか?』

 考察。まさか・・・。

「しかし、まさか失敗と思いきや古い根幹の記憶は残っているとは・・・」

 一部、アメリアの記憶があのエキドナに残っているというのか。

「これはやはり成功ですね」
「意味がわからん。今までの会話から察するに、貴様らの目的は人を完全にモンスターに変えてしまうとても正気とは思えん兵器の開発ではないのか?」
「完全に自我を失わせるより、わずかに残っていたほうが破壊にとって都合がいい。感情とは、本能を思考とするための理由ですよ? 行為システムにアクセスする感情システムはその複雑性を増していくことで、より深い業へと接続していくものです」

 シルクは語る。あくまでもエキドナに残るアメリアの記憶とは曖昧なもので最早記憶と言えるかどうか・・・それでも、たった数個の曖昧な記憶が動かす限られた、破壊された信念の正当化システムで動く怪物を、少なくとも人はモンスターと呼ぶ。

「ただしそれをコントロールする術は完全に取り払わせていただきました。認知システムによる判断の力は圧倒的破壊とその権化にはいらないし、何より一から感情構築をしてすり替えるより、初めからあるものを排除して取り除く方がよっぽど楽だった・・・その結果がこれなんですよ」

 一瞬、話の途中で放心中のリアムの方をシルクが一瞥したような気もしたのだが、気のせいだろうか。

「いっそ・・・」

 すると、リアムの頭の中に──

『ダメだ! なんのために僕たちは我慢を強いて戦っている! そんな考え・・・本と末が転倒してる!』

 いや、なんとか一歩手前で踏みとどまる。

 ・
 ・
 ・

──次の瞬間。

「ッ! マジックウォール!」

 リアムたちとエキドナの間に──

「ギシャアアァァァア!」
「今度は間に合った・・・!」

 エドガーが発生させた魔力の壁が出現する。しかし──

「・・・冗談きついよ」

 またも次の瞬間、魔力障壁を維持するエドガーの表情が苦痛に歪む。

「あららー・・・あなたハーフエルフでしたっけ? その割には・・・」
「クッ!」
「弱いですねー・・・魔力も下級貴族程度でしょうか? 本当にエルフの血を引いてるんです?」

 エキドナの尻尾の連打が魔力の壁を叩く。シルクはいつの間にやら戦闘の様子が綺麗に見える空の特等席にテレポートして呑気に観戦していた。

「おいリアム!しっかりしろ!」

 そしてみるみるうちに、壁にヒビが入ると──

「もう・・・ダメだッ!」

 壁が破られガラスの破片のように魔力が飛び散っては衝突し霧散していく最中──
 
「お前が今この場のリーダーだ! 指示を出せ!」

 一瞬のうちにリアムの前に立ったウィルが、リアムの肩を掴んで指示を仰ぐ。

「・・・!・・・とりあえず防る! ただしアメリアのあの根や種子には触れないように、あと傷をつけないように細心の注意を払いながら時間稼ぎを!」
「よしきた! 任せろ!」

 親子のやり取りはいたってシンプルだった。一番身近な人物だからこそ与えることができるもの、それは安心である。

「もう負け格だからこの名前を使うのはちょっと気がひけるが・・・アリア! いつもの1- 2 -2のフォーメーションだ! リアムの指示にもあった通り、なるべくエキドナとやらとの接触は避けろ!」
「了解・・・!いつものってことは・・・同化は一旦とかなきゃ」
「はぁーん。ひっさしぶりの感覚だなおい」
「攻撃は全部防ぐから、回復をお願いね」
「頼りにしてるよリゲス」
「・・・いくぞ!」

 そして──

「ラァァァ!」
「シャァァァ!」
「マジックアーマー!」
「ライトニング!」
「ファイアフライ!」
「ガード・・・クイック・・・パワー・・・エリアヒール・・・」

 リアムから下されたオーダーをこなすべく、エキドナに立ち向かっていく初代アリアのメンバーたち。最前衛にタンク1、前衛にアタッカー2、後衛に魔術師とヒーラーという超攻撃的な陣営である。

「惚れ惚れするほどの連携だ・・・」

 ウィルの気迫の突進と見せかけてからのカウンターの受け流しに、何層もの特殊な魔力膜を重ねて作り出した鎧を着たリゲスが受け流された尻尾をがっしりホルードしつつ、魔力越しの間接的な接触ならば影響がないとエキドナの体から発せられる瘴気の検証をして、光に体を包んだカミラとアイナが作り出した複数の火の玉がエキドナの周りを飛び回り混乱をさせ、そのうちにエドガーが次々とチームにバフをかけていく。

「最前衛のタンクで足止めしているうちにアタッカーの3人が翻弄する・・・サポートのヒーラーもバフや回復を自分の魔力量と相談しながら都度的確に戦況に合わせて使いこなしてる・・・」

 それはオーダーを出したリアムが思わず体の震えを止めて見入ってしまうほどの光景だった。燃える森の中、赤や黄、白色の光が飛ぶエキドナの周りを、華麗に舞って翻弄する狩人たち。ただし狩りはしない。あくまでも今の目的は研究者のための獲物の観察だ。

「何をしている! ぼーっと突っ立ってないでさっさと打開策を打ち出せ!」
「ゲッ・・・あんな戦いしながらこっちも見えてやがる」
「リアム・・・何か思いついたか?」
「えっ? ああゴメン・・・まだ何も思いついてなくて・・・」

 リアムを取り囲むようにエキドナたちの間に立って守る第2世代のメンバーたち。

「・・・」
「どうした?」
「合成したものを元に戻すには・・・やっぱり・・・」

 するとふと、辺りを見渡したリアムの視界に、ウォルターが呼び出した炎天馬のブレイフの姿が目に入る。

「分解・・・当たり前のことだけど・・・」
「リアム? いくらあなたでもそれは・・・」
「わかってる・・・そんな力は僕にはない・・・だから別の何かを利用して・・・」
「そ、そんな凄そうなもの・・・あるんでしょうか?」
「だから考えているのだろう? 今できることを組み合わせて何が一番最適解なのかを」

 兎にも角にも、答えが見つかっても手段がなければ話にならない。ならば答えから逆に手段を辿る。

「ふふふ・・・」

 だがその時──

「スティッチ《闇》」
「・・・リアム!」
「えっ──」

 突如、リアムの体に二つの何か触れて、ふわりとした感覚が襲う。

「グハッ!」
「さーすが私の元生徒・・・それにしても当たりどころは最悪・・・ですか♪」
「ゲイル!」

 次の瞬間、リアムを押して場所を入れ替わったゲイルの背中から胸の中心にかけて、太さが親指ほどの一本の黒く太めの針が貫通する。

「・・・」
「ゲイルしっかり! 今すぐ回復を・・・!」

 そのまま、地面に倒れぐったりと伏せてまま動かなくなったゲイルに直ぐにリアムが回復魔法をかける。しかし──

「どうしてだ! 何故お前がリアムを攻撃する!」
「どうしてって・・・試練? でしょうか?」
「試練だと?」
「はい。本来私のようなしもべの醜女が試練などおこがましいほどにもほどがあるのですが、これも時期にリアム様が覚醒するためのお手伝いです。全ては使徒のため・・・であれば、この行為も許されるというもの。それに、そこに倒れている我が元生徒に空間認知を教えたのは私です。態とそういう動きをすれば、簡単に引っかかって本当にいい生徒です・・・羨ましい! リアム様自ら回復魔法をかけていただき・・・看取ってもらえるのですから!!!」

 看取る。その言葉が意味しているものとは・・・。

「心臓を一突きしたのです。いくらリアム様でも、このダンジョンの中では彼を傍若無人なエバの手からは逃がすことはできない」
「ゲイル! ゲイル!」
「どうせ復活する命です。固執することもないでしょう」

 人が死ぬ・・・それも仲間が。
 生き返る? そんなの知ったこっちゃない。そんな理由が今目の前で去ろうとしている命を見捨てていい理由になるはずがない。

「こんなの全部まやかしだ・・・」

 それにさっき確信した。この世界に絶対はない。ゲイルが無事に生き返る保証がどこにある。

「ダメだ!ダメだゲイル! 死なないで!」
『いいんだリアム・・・今ならわかる。俺はちゃんと生き返るさ』
「そんなこと言うな! それに約束はどうしたゲイル!」

 ・・・すると、リアムが必死に回復魔法をかけながら叫びかけていると。

「・・・リアム?」
「どうして・・・どうして僕をかばったんだ・・・」
『咄嗟だったんだ・・・それに、リーダーのお前がよりによってあのあいつに、傷つけられるなんて癪だ』
「よかったんだ・・・傷つくくらい。それなのにこんなことで君にまた足踏みをさせて・・・」
『いいか。俺たちはさっきこの世界にも絶対がないということを知ったんだ。だったら・・・』

 エリシアはこの時何が起こっているのか理解できずにいた。突然叫ぶことをやめ、独り言のように喋り始めてしまったリアム。 

『友達(なかま)を守るのは、友達として当然だ』
「だからって・・・こんな・・・」

 また、リアムの左目にはある変化があって──

『あの輝きは──』

 リアムの変化を敏感に拾ったシルクが現場に少し近づく。

「こんなのダメだ! こんなことで・・・!」
「ご自分が原因で仲間が死ぬのは怖いですか?」
「怖いさ! ああ怖いよ! 怖くて何が悪いんだよ!」

 ただ、シルクの戯言にも反応しているあたり、周りの言葉も聞こえているようだった。

「蝿が!」
「どっちがですか?」
「お前だよ!」

 瞬間、リアムに近づこうとしていたシルクを迎撃するため、ブレイフに跨ったウォルターと、一緒に騎乗したアルフレッドが魔法を使いながらまさに蝿のように辺りを飛び回るシルクと追いかけっこを始める。

「スラッシュ!」
「パワー・・・ガード・・・」

 またラナも持ち前のすばしっこさと脚力を生かし戦いに参戦。そしてフラジールも、彼女らのサポートに回った。

「リアム! 落ち着いて!」
「落ち着いて・・・ッ!」
「まだだ・・・まだ」
「離れろリアム!」

 そしてエリシアとティナの言葉の意味もわかっていないリアムをブラームスが羽交い締めにしてゲイルから引き剥がす。 

「一旦離れて頭を冷やせ!」
「無理だよ放してよ! まだ助かるんだ! ゲイルはそこにいる!」

 最初は緑だった。だが、青から緑へ変化した目は、ドロドロしい何かに濁っていき──

「落ち着いてるなん・・・て・・・何コレ?」

 しかし次の瞬間──

「ゲイルから変な光の玉が・・・」
「光の玉? 私には何も見えないけど・・・」

 ゲイルではない。それは彼のわずか15センチほど上、ゲイルから出てくるとそこで停滞した。

「・・・何故僕のところに・・・今誰か『クソッ』て言った?」

 一瞬、誰かが何かを悔しがるような声が聞こえた・・・だが──

「まあいいか・・・それよりコレ・・・まさか」

 そのことはとりあえず置いといて、ゲイルから出てきた光の玉はフワフワと浮遊するとリアムに近づく。そしてそれは、ブラームスに羽交い締めにされながらも咄嗟に緩んだ腕を振りほどき、こちらもまた駆け寄るリアムの両の手で作りだされた手皿の上に乗る。
 そして──

「まさかゲイルの魂・・・とかじゃないよね?」
『・・・どうやらそのようですね』
「嘘でしょ・・・?」

 イデアが肯定したゲイルの魂を手に、リアムは驚きのあまりその場に尻餅をついてへたり込むのであった。

 

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