アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

218 ミリア&フラジールVSアイナ?

「嫉妬しちゃう」

 ・・・止められた。水と雷のコンボで絶対に決まったと思われた渾身の雷が、アイナの翳した手の前で放散すると同時にとてつもない高温を発する炎に包まれていきコントロールされる。

「うそォォォ!?」

 ましてや公爵令嬢であるミリアが結構本気で放った眷属魔法だったというのに・・・。

「神様って本当にいるのね・・・まさかこの機会にあなたと私を対峙させてくれるなんて・・・」

 アイナを濡らした水が一瞬のうちに蒸発する。

「けどやっぱり嫌い。神様は色んな出会いを私たちにくれるけど、いざって時には全く導きも助けもしてはくれないの・・・」

 やがて全ての雷を包み切った灼熱の炎球の傍らで、アイナがニヤリと口角を上げる。しかしそれも一瞬、束の間に寂しげな表情を浮かべそんな台詞を吐くと・・・

「だから光の神を信仰する正光教会もリアムを狙ってるファウストとかいう邪教集団も神竜教も全部嫌い___!」

 自らの不満をぶつけるかの様に、一気に球体を周辺の森へと散らせる。
 
「私は自分の欲しいものは自分で掴み取るって決めたわ・・・運命なんて理不尽に付き纏われてるリアムにカリナ、ティナちゃんのためにも・・・」

 森が燃える。空気は不安定に揺れ、パチパチと小さく爆ぜる音がそこら中から聞こえてくる。 

「こんな私と結ばれるために家を捨ててくれた旦那(ウィル)のためにも・・・」

 だがまだどの木も倒れはしない。悲しみの火はまだ広がったばかり・・・しかし明らかに耐えてはいる。まるで流す天からこぼれ落ちる涙を待つかの様に・・・。

「──アダプト」

 ブロンドの髪がオレンジ色に染まる。

「精霊同化(コントラクト)──model : バルサ」

 炎の化身。

「精霊と・・・!」

 その化身は果たして涙を落とす救いの女神か・・・全てを燃やし尽くすまで止まない炎獄からの使いか。

「合体した・・・」

 精霊との合体。にわかには信じがたいその力。
 しかし何よりも驚くべきことは──

「そんな・・・眷属魔法、それも精霊王と契約する私の魔法に対抗する力なんて・・・!」

 眷属とはいえ、精霊王の加護の力を持つミリアの魔法をいとも簡単に制御してしまったことである。

「あなたのその状態から放つ魔法はあくまでも使用者の魔力に依存する」
「それが普通でしょ・・・」
「けれど私のこの状態は精霊と同等──。魔力そのものとも言えるほどに純粋で神秘的な存在である精霊・・・つまりその精霊と同化し同等である私は魔法を使うのに魔力は使うけれど、同時にそれは精霊魔法であり体力と精神力を代償に魔力を生み出すことができる」

 眷属魔法で武装したミリアから放たれる魔法はあくまでも彼女の魔力に依存し使われるもの。一方アイナは魔力=精神力&体力と代替することができる。

「わかる? つまりこの掛け算は魔力の引き算よりも圧倒的に低コストで魔法を使える方程式なの」
「そんなのデタラメじゃない! ずるいわよ!」
「本当、ずるいかもしれないわね。けれどこれは愛する夫と友人たちから送ってもらったギフトよ」

 自ら反則技だと認めつつも、開き直るアイナ。

「もしかしてその贈り物っていうのは・・・ラストレガシー?」
「・・・そうよ。よく知ってたわね」
「ら、ラストレガシーってあの、ラストレガシーですか!?」
「お父様に聞いたことあるの。約15年ほど前に王都のオブジェクトダンジョンが1つ、この国で初めて攻略された・・・その時初めて発見されたのがラストレガシーで、そのことを知った王国もダンジョンを攻略した冒険者たちの後を追って騎士団を派遣して同じダンジョンを攻略させた。けれどラストレガシーは手に入らず後にも先にもそこで見つかったのはその一つ」
「しかし時すでに遅し。気付いた時にはその冒険者たちは既にラストレガシーを使ってしまった挙句に姿をくらませた・・・」

 ミリアの話を聞きながら、相槌を打ち是正していくアイナ。

「くらませたんですか? それって王都の英雄のことですよね・・・確か事故で亡くなったはずじゃあ?」
「それは国がでっち上げたフェイクよ。ユノは異質なオブジェクトダンジョンの中でも更に異質なダンジョンだったから、普通の攻略以上にそこの制覇は大事で、王都民は当時ダンジョンを最初に攻略した冒険者達を英雄と呼んだ。結果、権力の食い物にされそうになった冒険者パーティーは交友のあったある貴族に匿ってもらい、またそれからその領地に移住していたメンバー1人の姉を頼り身分を隠してただの冒険者に戻った・・・」

 ラストレガシーはオブジェクトダンジョンのラストボスを倒すと手に入ると言われる貴重なレガシーの中でも伝説とされている宝。
 なぜ伝説なのかと言えばミリアの説明にあった通り王国が攻略に騎士団を派遣し後にも先にも見つかったのはその一つ・・・つまりダンジョンの初攻略者しか手に入れることのできない宝であり、国宝級レベルの逸品であるからで現在は存在自体が噂が一人歩きをしている状態にある。

「でも、流石にその伝説のパーティーでも2個目のダンジョン制覇となるとかなり厳しかったようね」
「じゃあ・・・その、パーティーというのは・・・」
「ええ。王都にある4つのダンジョンの内の一つ、”ユノ”を攻略したのは私の夫と、そしてカミラ」

 スクールの歴史や魔道工学、ダンジョン学の授業でも国によって編集され隠蔽されている機密を、アイナはサラッと暴露してしまう。

「ふぇぇぇぇ!?」
「あなたのお父様は本当おしゃべりね・・・昔から。ミリアちゃんもフラジールちゃんも、今の話はリアムの前ではもちろん他でも絶対にしちゃダメよ?」
「怖くて誰にも話せませんよぉ〜!」
「お父様にもそう言われたけど、なんで喋ってないの? それとも他に何か言えない理由でもあるの?」
「さぁて、どうかしら? でも近いうちにあの子にもきっと話はする。それまではせめて待ってあげて」

 しかしリアムにソレを打ち明けるのは他にも隠し事をしているウィルの役目である。 

「でもどうして国は手出ししてこないんでしょうか?」
「それはウィルが強すぎるからよ。貴族が他領地、それも現王弟である公爵の領地でとなるとね・・・貴族に勝てるのは同じ貴族か反乱だけ」
「どういうこと?」
「あらやっぱり・・・流石にそこまではブラームス様も話してはいなかったのね。悪いけれどこれ以上は話せないわ。知りたかったら秘密を知った後のリアムに聞いてちょうだい」

 そしてそれを友達に話すかどうかはリアムが擁する権利だ。

「わかった。そのうちリアムに聞く」
「聞き分けが良くて助かるわ」
「でもそんな強過ぎる反則技ならきっと欠点もあるはずじゃない?」

 ミリアは素直にアイナに言われた通りこれ以上の詮索をしないとするが、同時にアイナの同化の弱点についての探りを入れる。

「そうね。これ、結構疲れるの」
「・・・それだけ?」
「ええ。それだけね」

 しかし転んでもただでは起きないとしたが、当てが外れた。

「この戦いは、私とフラジールちゃん、そしてあなたとの精神力の勝負ってことになるわね」

 つまり──

「私あんまり我慢するのとか好きじゃないのよね」

 掛け算 対 掛け算の戦い。アイナの掛け算に果たしてミリアとフラジールが力を合わせてどれだけのものを生み出すことができるのか。

「豪雷攻城砲(ヘビーサンダーガン)!」
「第3位守護聖火 = アードゥル・ブルゼーンミフル」

 刹那、突然にぶつかり合う大規模魔法。

「危ない・・・後ちょっとで谷に落ちるとこだった」

 また止められた。ウズウズしてつい思いっきり殴ってしまったが、アイナには通用せずあっさりと止められた。それに後ろをみればいつの間にか、谷の淵まで体を押され後もう一歩のところで落ちてしまうところだッ──
 
「ドーン♪」
「・・・わッ?」

 ・・・た?

「へっ?」

 束の間、自らの魔法の勢いで谷の淵まで追い詰められ冷や汗をかいていたミリアが──

「きゃぁぁぁあー!!!」
「ミリアちゃん!?」
「ミリア様!?」

 後ろ向きに倒れ、谷に落ちた。

「ミリア様ぁッ!」
「待ってフラジールちゃん!!!」

 途端、ミリアを助けようと走り出したフラジールをアイナが制止する。

「あなたは・・・誰?」

 そしてアイナは谷の底にではなく、顔を上にあげ空を見上げると──

「私は通りすがりの敬虔なる常世の教徒、現世ではしがない帽子屋を営む女にございます」

 そこに浮かんでいた、怪しげな女に問いかける。

「本日はお日柄もよく神の使徒であらせられる御方に我らが教会の成果をお披露目しようと旅歩き、ふと休憩に森林の空気を満喫しようと深呼吸してみればこの場所から強い邪教の香りが臭ってきまして・・・」

 すると女は自分に気づいたアイナ達にご機嫌な台詞を吐いては──

「寄り道してしまいましたぁ・・・フフッ」

──見下す様に、嗤う。

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