アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

217 少女の魅力

「さて。谷の近くだけれどこの辺でいいでしょ!」

──時は少し遡って事件が起こる約30分前。

「・・・なんか審判みたいな立会人がいないとやりにくいわね」
「本当。みんなどうやって始めてるのかしら?」

 他のメンバーたちからなるべく遠くへ離れるため、ゆっくりと森の中を散歩していたために戦いを始めるタイミングを見失っていたミリアとフラジールにアイナ。

「あの・・・その・・・」
「フラジール・・・あなたちょっと緊張しすぎなのよ」
「そうね。この勝負、勝っても負けても恨みっこなしの戦いよ?」

 終わった後のことは気にするなと、アイナが緊張でガチガチのフラジールに優しく微笑みかける。

「でも・・・私その、戦闘員というよりバッファーですから・・・」
「そっか・・・そうよね」

 しかしフラジールはやはり戦いには消極的で、元々普段の狩から敵と面と向って対峙することも少ないせいか、対人戦ともなればなおさら・・・。今日まで1週間練習はしてきたものの、悪い緊張のせいで完全に自分のペースがつかめずにいた。

「だったらフラジールは審判してよ・・・そうよそれがいいんじゃない!?」
「審判・・・ですか?」
「そ。バフだけかけて、あとは見学。ただ緊張が和らいで参戦できるって思ったら参加してくれればいいから」

 するとこちらはフラジールとは正反対に随分とマイペース。早く戦いたくてウズウズしているミリアは、今にもアイナに飛びかかって行ってしまいそうなほどに落ち着きがない。

「いい? アイナさん」
「そのくらいのハンデならあげてもいいわ。私も今日は思いっきりやるつもりだから、フラジールちゃんは自分のタイミングで戦いに入ってきなさい」
「は、はぃ〜!」

 結果、いつの間にかトントン拍子でフラジールは途中参加自由のリベロ兼コール役となってしまった。ミリアといいアイナいい、戦いを前にここまで落ち着いているのはすごいな・・・と、この時フラジールは思った。

「そ、それではぁ!・・・アリア第2世代ミリアたぃ〜初代アイナのぉ・・・」

 そして──

「勝負はじめぇ!」

 ミリアとアイナの戦いが始まる。

「先手をどうぞ?」
「いいの?」
「いらっしゃい。軽くあしらってあげるわ」

 ミリアに先手を譲り余裕を見せるアイナ。

「ヤァァァァ!」

 ミリアは腰につけたポーチから短剣を取り出すと、一直線にアイナに突っ込んでいく。

「ヒートヘイズ」
「アイナが消えた!?」

 しかしミリアはさっきまでアイナがいたところで止まることはなく、そのまま突き抜ける。

「火の中級魔法テクニックの応用ね」
「そうよ。よく勉強してるわね」
「同じような技を特訓の時リアムが使ってたの!」

 アイナを捉えきれなかったミリアが冷静に分析する。

「あなた、リアムに気があるでしょ」
「・・・!」

 すると唐突にアイナがミリアに問いかける。

「けどダメよ〜? リアムはあなたにはあげられない」
「なんでよ!?」
「だってあなたはそもそも貴族、それもトップクラスの権力を持つブラームス様のご令嬢でしょ? まだお披露目会前の身だから今は自由なのかもしれないけど、平民と公爵令嬢がくっつくなんてそんなデタラメが通るはずもない」

 ミリアはあくまでも公爵令嬢。家は大きな権力を持つ貴族の中でも最高クラスの権力を持つ象徴の一つ。

「でも・・・私はリアムが好きで・・・!」
「大丈夫。少女の乙女心なんて揺れやすくやがて消えるロウソクの火の様なもの・・・いずれ成長してロウソクがランプに変わればいずれ消され忘れてしまう微熱」
「そんなこと・・・!」
「それからもう一つ。私に言われてやっとあなたはリアムが好きだって明言したけど、果たしてあなたがリアムを好きな理由って何なのかしら?」
「・・・それは」
「あなたには魅力がない・・・平民のリアムに例え国から追われることになろうとも駆け落ちしようと言わせるほどの魅力が・・・」

 ミリアはすぐにはアイナの問いかけに答えることができなかった。彼女の立場が、またリアムへの大きな想いが錯綜し邪魔をする。

『・・・魅力』

 だが、この問いかけは意外にも後一人、もう一人の少女の胸へと突き刺さる。

『私に魅力なんてない・・・だからでしゃばり表に立つこと自体おこがましいことだと思っていました』

 自分はアルフレッドが中等部に進学し、王都の学院に入学したら側付きとして一緒に付いていき引き続き身の回りのお世話をすることになっている。それが代々スプリングフィールド家に仕える私の家の役目。

『私が皆さんのパーティーに入れてもらってもらったことも、ほとんど成り行きに近かった』

 ただアルフレッドや友人たちがパーティーを作ったから自分も加入した。このパーティーに参加した初めの頃の動機はそんな腰巾着的な側仕えの考えからだった。

『でも今は違う・・・私はアルフレッド様を守れる様になりたい。私より何倍も強いアルフレッド様を守るなんておこがましいけど、それでも私は・・・』

 自分ごときがしゃしゃり出るなんてとんでもない。だが後ろに控えているのと何もしないのとはまたイコールではないと知った。

『私生活だけじゃない・・・主人が危険にさらされた時に、身を呈してでも前に出て守ってみせることが側仕えの本当の役目。・・・そしてそんな私の役目に気づかせてくれた皆さんの役に立ちたい・・・そのために私はこのパーティーに入れてもらったんだ・・・』

 フラジールがホルダーに入る杖を握る。

「ヘイズ」

 国の中核を担う一族にありながら満足することなく、さらに先へ行こうとするミリア。そんな彼女を今支えることこそが私の役目。

「だいたいなんで私のことそんなに知ってるのよ!・・・まさか!? リアムが言ってたの?」
「いいえ。リアムは別にあなたのことなんとも言ってなかったけれども」
「ムカッ! じゃあなんで知ってるのよ!」

 喋りながら器用に次々と雷と火をぶつけ合う2人。

「ただあなたの質問に答えるなら・・・」
「答えるなら?」
「立場は全くの逆だった・・・けれど私があなたと同じだったからよ」

 1人は驚いたり怒ったりと不安定に質問攻めをし、もう1人は落ち着きながらも自らの過去に想いを馳せる。

「貴族のお披露目会は12になった次の春。王国の貴族は皆中等部から王立学院のパブリックスクールに寄宿して学ぶ決まりだから、嫁婿探しにもタイミングとしてはぴったりなのよね、たしか」
「なんでそんなに詳しいの! 貴族でもないあなたが!」
「それは私は貴族ではなかったけれど王立学院の出だもの。多少の貴族常識くらい知ってるわ!」

 アイナの繰り出す火と、それを受け止める雷がぶつかり合う。

「だったらこれも知ってるでしょうけど、王立学院に入学した貴族は1人、生徒の中から側付きを選ぶものよ。私はその側付きにリアムを選ぶ!」
「そう。それは聞き捨てならないわね」

 今度はミリアが繰り出した雷をアイナが火で受け止める。だが同時に──

「火には水・・・基本よね」
「・・・何か言った?』

 なんと言ったのかはわからない。しかしアイナが他の誰にも聞こえない声で小さく何かを呟く。
 
「コンデンス!」

 次の瞬間──!

「水!? フラジール!?」
「ミリア様!」

 アイナの周り半径5mほどが突然ビッショリと濡れた。杖を大きく振ったフラジールが、辺りに見えない様に漂わせていた霞を一気にアイナを中心点とし集中、凝結させたのだ。

「ナイスフラジール!」
「恥ずかしくない振る舞いをして皆さんを支えることが私の役目ですから」

 またフラジールが叫んだ瞬間、ほぼ同時にミリアが雷神の籠手を顕現させる。

「お腹を痛めて産んだ可愛い私のリアム・・・」

 一方、アイナは下を向いて動かない。まるで濡れた髪の重さに耐えかねるように項垂れて。
 
「色んな困難を乗り越えて、やっとの思いで授かり産んだ私の大切な子供・・・そんなリアムをサラッと貰っていくとか言っちゃうなんて・・・」

 刹那──

「──雷砲!」

 ミリアの籠手から放たれた豪雷が──・・・?

「嫉妬しちゃう」
「受け止めた!?」

 止められた。水と雷のコンボで絶対に決まったと思われた渾身の雷が、アイナの翳した手の前で放散すると同時に、とてつもない高温を発する炎に包まれていきコントロールされる。

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