アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

215 親と子。それぞれの夢と懺悔

「さすがはリトルウルフってか」

 拘束を解かれ、地面に寝っ転がるウィル。

「それを言ったら父さんも剣の狼でしょ?」

 そんなウィルの傍で、リアムもまた腰を落とし緊張の連続で疲弊した心と体を労わる。

「そんな大したもんじゃない。ラストボスに負けてからパーティーを解散してしばらく俺はこう呼ばれてた・・・」

 寝転んでいたウィルがバッと上体を起こしリアムと目を合わせる。

「焼きなまし。牙を鈍らにされた灰かぶりの狼・・・剣狼ってな」

 その昔を懐かしむように細められた目。元の父親ウィリアムの優しい目。

「どうして・・・だって父さんたちは一番最初にあの頂上に手をかけたんでしょ? それなのにまるで負け犬みたいな・・・!・・・ごめん父さん」

 実際リアムが冒険者になってからラストボスへの挑戦記録は片手で数える程であり、タイミング合わずコンテストで見たこともないがまだ誰もソレをクリアしてはいない。そのことから察するに、当時最初にそこまで辿り着いたウィルたちの実力派間違いなくトップクラスで、笑われていいはずがない。

「いやいいんだリアム。実際解散は挑戦の前から決めていたことなんだ・・・それに俺たちが負けたのは本当のことだしな」

 しかしあれはあれで円満的な解散だったのだと当時を懐かしみつつ、サッとリアムの頭に手を置き撫でるあたりもいつもの優しいウィルだ。

「リアム・・・エリアGのラストボスは1頭じゃない・・・2頭だ」

 だが──。

「そのうちの1頭が灰靇と呼ばれるデカイ狼。対となる雷雹とセットでナワバリを張ってるヤバ過ぎる敵・・・そいつは常に口から高温の火の息を吐き、全身を覆う黒い毛からは全てを焦がす雷を生成する」

 一瞬にして、ウィルの表情が真剣なものへと変わる。どうやらそのラストボス2匹に負けてしまったのがウィルが剣狼をイジった灰かぶりの狼の汚名をつけられた理由らしい。

「俺もしばらくヘコんでた・・・けどアイナと結婚してカリナがウチに来てお前が生まれていつの間にかまた、俺はこの遊び場に戻ってきていた」

 遊び場といっても仕事なのだが、やはり彼にとっては青春や仲間との思い出が詰まった場所なのか。

「それにこの前、お前が出したあの黒塗りの刀を見て思い出したんだよ・・・噛み付くための歯は残っているが、とっくの昔に折れた深く突き刺さる俺の牙を・・・物理的にも、精神的にも・・・」
「物理的にも?」
「勝たなければ戻ってこない・・・まあその辺はお前もラストボスのところに行けばわかる。兎にも角にも、俺はお前が進化し続ける姿を見て熱くなったんだ」

 あの日牙を折られてしまうと同時に忘れてしまった情熱・・・絶対に敵わないという恐怖。

「悪いリアム! 実は俺もさ、パーティーの名前を賭けて思いっきりお前と刃を交えられるほど、大層な人間じゃないんだ」
「えっ?」
「今回俺がお前との戦いに賭けていたのは自分自身の覚悟。ある俺の秘密をお前に話すための覚悟で、それを決心するためにこんな馬鹿みたいな決闘をお前に申し込んだ・・・この決闘は、形だけの茶番だった」

 突然のウィルの告白にリアムは目を丸くする。

「でもじゃあなんで・・・カミラさんやエドガーさん、リゲスさんに母さんは・・・」
「そうだな・・・それこそみんなはちゃんと名と誇りを賭けて戦っているんじゃないかと思う。もちろん後付けではあるが俺も同じ気持ちだ。そしてきっとちゃんと、みんなもそれをわかった上で俺に協力してくれている」

 そんな俺についてきてくれるあいつらは最高の仲間たちだと、ウィルが惚気る。

「だけど今、とても不思議な感覚なんだ。こうしてお前に負けた今、なぜか茶番だったとは思えないほどに真剣にお前とぶつかれた気がする・・・どうしてだろうな」

 どうしてなのか。そう言われればきっとボクも、自分自身の一番大切な秘密を賭けて戦っていたからだろう。

「そしてこんな俺が言うのもなんだが・・・」
「?」
「リアム・・・仲間を大事にしろ」
「うん」

 きっとその言葉には色々な意味が詰まっていた。ウィルは次の敵はリアムのワンマンでは勝てないと確信しているのか、また素直なこの前の戦いを総評した結果のお叱りか・・・その両方は絶対に含まれていて、その他にも彼が経験から学び育んだ様々な思いが込められた後押しだったのだと思う。

「ところでリアム。お前・・・何か俺に話したいことがあるんだったよな?」

 少しの間しんみりとしたところで、ウィルが話題を戦いの中2人が交わした会話の内容へと転換する。

「・・・うん。とても大事な話がある」
「そうか・・・俺もだ」

 戦いの最中確かに約束した。それは互いにリアムが勝利した場合に・・・ということで。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 さて・・・どちらが先に口を開くのか・・・。
 
「父さん・・・ボクは・・・」

 結果、やがて僅かな重い沈黙の後に先に口を開いたのは──

「転生者だ」

 ・・・リアムだった。
 

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