アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
206 劇薬もまた薬
『さて。これでより真剣勝負に近づいた』
カミラは昔から、正面きった対決を望む。なぜなら視界が広すぎるせいで先入観が強い傾向にあり、滅多にはないもののそのほぼ無敵の眼を超えて不意をつかれれば、一気に形勢は逆転し脆くなってしまうから・・・である。
『あいつがどんな入れ知恵してるかわからんからな』
だから慎重。その才能に嫉妬したのはこれまでに経験した戦いの中でもたった2人。一人は同じパーティー内にいる仲間と、もう一人はその・・・。
『ウォルターはアレのせいで追撃に有効な魔法は使えない。ということは注意すべきは物理攻撃だけ。つまりは──』
ウォルターに背を向けようとも所詮飛んでくるのは弓の矢ぐらいだ。それだったらキララがいれば簡単に避けれる。よって──
「ゲイル。こいつを常にマークしていればお前らは敵じゃない!」
「瞬間移動!」
「──無駄だ」
「どうなってんだよ! どこに移動しても一瞬で索敵されるぞ!」
次々と森の木々を斬り倒しながら迫ってくる光の刃が正確に、ゲイルに飛ばされてはカミラが距離を一瞬で詰めて・・・
「おいどうなってる」
──次の瞬間。
「この魔力量・・・嘘だ。どうしてお前がこんな量の魔力を練ることができてるんだ・・・」
汗。あるはずのない方向からの魔力の蠢きを感知したカミラが体の動きをピタッと止める。
「フレイムアロー」
「なぁ・・・ウォルター」
急激に冷めた身体の中で激しく拍動する心臓の感覚が強く、カミラの胸を内側から叩く。
・
・
・
【エリアDの木々より少し小高い丘】にて──
「せっかく身構えてたのに父さんってばなんでそんな緊張感ないのさ」
「不貞腐れないでよラナ。ボクは元々パーティーの中では戦闘向きじゃなくてサポーターの役割なんだから」
ゆっくりと歩みを進めながら、結構広くエリアDの一部が見渡せる丘の上に登るラナ、エドガー、そしてレイア。
「じゃあ父さん。私たちの勝負はどうやってつけるの?」
その様子はさながら仲の良い親子のハイキングである。
「そうだね・・・よし。上についたし説明するよ」
前を見れば森が広がり、後ろを見ればコルトと山脈が広がっている。
「これを見てくれ」
エドガーが、ポーチから何やら小さい物体を二つ取り出してラナとレイアに見せる。
「これは・・・」
「この錠剤はボクがあるエリアに蔓延する特別な魔力から抽出して調剤したものだ」
手の平の上に乗っていたのはエドガーの言う通り錠剤。ただし色は白ではなく灰色で、何やら不気味だ。
「これを飲めば、一種の仮死状態になる。そして同時に、生物の生存本能を刺激する」
「仮死状態って・・・」
エドガーからの説明を聞いてラナが生唾を飲む。
「レイアには混じりのことは結構最近に話したんだけど、ラナはいつだったかな・・・覚えてるかな?」
「・・・覚えてる」
ラナに混じりの話をしたのはまだ、彼女がスクールに入学する直前のことだった。しかし・・・いや、ラナにとってソレは大事なことだから、忘れられるはずもない。
「ラナはまず、これを飲んで己の中に潜むもう一つの存在を知覚するんだ。そして制御し、己の力として昇華させる」
また、「本当はウォルターにも飲ませて一緒に覚醒させたかったんだけど・・・」と、手の平にある二つの薬を見て小言を漏らすエドガー。
「多分ウォル兄なら心配いらないと思うよ? 父さん」
「どうしてだい?」
ラナがニッコリと屈託ない純粋な笑顔を浮かべてエドガーを安心させる。
エドガーが、まるで幼いあの頃を思い出すような笑顔を見て油断していると──
「ニシシ・・・秘密」
今度は年相応の少し悪い笑顔を見せて、ヒョイっとエドガーの手から薬をとって飲んでしまった。
「こんな危ない薬をなんのためらいもなしに飲んでしまうなんて・・・」
「きっとラナ姉はそれでけ父さんのこと信じているんだよ?」
なんのためらいもなく、危険だと説明したばかりの薬を飲んでしまったラナに驚きつつも、薬を飲んだ途端に、現実から意識を手放したラナの体をソッと支え寝かせてあげる。
「それで父さん。私には一体どんな試練を与えるつもり?」
「レイアには・・・」
だが、レイアがそうエドガーに自分の試練を聞こうとすると──
「・・・この魔力の高まりは!」
まさか・・・と、エドガーがある方向から感じた大きな魔力の反応を感じ取り驚愕する。
「ありえない・・・ウォルターは一人で克服してしまったのか・・・!?」
肉眼でもはっきりと捉えることができたソレ。森の中を一直線に進む炎の弾。
「実はね・・・父さん」
すると、ニコリとサプライズに成功して嬉しそうな表情のレイアが、エドガーを呼んでその耳元で何かを囁く。
「そんな・・・ことが」
エドガーは益々驚きながらも困惑する。レイアが囁いた情報に・・・しかし間違いない。この自分の中の魔力が大きく共鳴するように高鳴る感覚は・・・──!
「そうか・・・よかった」
胸の中に感じる温かな感覚。それを噛みしめるように、包み込むようにエドガーは自分の胸に手を当てて感慨に耽る。
カミラは昔から、正面きった対決を望む。なぜなら視界が広すぎるせいで先入観が強い傾向にあり、滅多にはないもののそのほぼ無敵の眼を超えて不意をつかれれば、一気に形勢は逆転し脆くなってしまうから・・・である。
『あいつがどんな入れ知恵してるかわからんからな』
だから慎重。その才能に嫉妬したのはこれまでに経験した戦いの中でもたった2人。一人は同じパーティー内にいる仲間と、もう一人はその・・・。
『ウォルターはアレのせいで追撃に有効な魔法は使えない。ということは注意すべきは物理攻撃だけ。つまりは──』
ウォルターに背を向けようとも所詮飛んでくるのは弓の矢ぐらいだ。それだったらキララがいれば簡単に避けれる。よって──
「ゲイル。こいつを常にマークしていればお前らは敵じゃない!」
「瞬間移動!」
「──無駄だ」
「どうなってんだよ! どこに移動しても一瞬で索敵されるぞ!」
次々と森の木々を斬り倒しながら迫ってくる光の刃が正確に、ゲイルに飛ばされてはカミラが距離を一瞬で詰めて・・・
「おいどうなってる」
──次の瞬間。
「この魔力量・・・嘘だ。どうしてお前がこんな量の魔力を練ることができてるんだ・・・」
汗。あるはずのない方向からの魔力の蠢きを感知したカミラが体の動きをピタッと止める。
「フレイムアロー」
「なぁ・・・ウォルター」
急激に冷めた身体の中で激しく拍動する心臓の感覚が強く、カミラの胸を内側から叩く。
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【エリアDの木々より少し小高い丘】にて──
「せっかく身構えてたのに父さんってばなんでそんな緊張感ないのさ」
「不貞腐れないでよラナ。ボクは元々パーティーの中では戦闘向きじゃなくてサポーターの役割なんだから」
ゆっくりと歩みを進めながら、結構広くエリアDの一部が見渡せる丘の上に登るラナ、エドガー、そしてレイア。
「じゃあ父さん。私たちの勝負はどうやってつけるの?」
その様子はさながら仲の良い親子のハイキングである。
「そうだね・・・よし。上についたし説明するよ」
前を見れば森が広がり、後ろを見ればコルトと山脈が広がっている。
「これを見てくれ」
エドガーが、ポーチから何やら小さい物体を二つ取り出してラナとレイアに見せる。
「これは・・・」
「この錠剤はボクがあるエリアに蔓延する特別な魔力から抽出して調剤したものだ」
手の平の上に乗っていたのはエドガーの言う通り錠剤。ただし色は白ではなく灰色で、何やら不気味だ。
「これを飲めば、一種の仮死状態になる。そして同時に、生物の生存本能を刺激する」
「仮死状態って・・・」
エドガーからの説明を聞いてラナが生唾を飲む。
「レイアには混じりのことは結構最近に話したんだけど、ラナはいつだったかな・・・覚えてるかな?」
「・・・覚えてる」
ラナに混じりの話をしたのはまだ、彼女がスクールに入学する直前のことだった。しかし・・・いや、ラナにとってソレは大事なことだから、忘れられるはずもない。
「ラナはまず、これを飲んで己の中に潜むもう一つの存在を知覚するんだ。そして制御し、己の力として昇華させる」
また、「本当はウォルターにも飲ませて一緒に覚醒させたかったんだけど・・・」と、手の平にある二つの薬を見て小言を漏らすエドガー。
「多分ウォル兄なら心配いらないと思うよ? 父さん」
「どうしてだい?」
ラナがニッコリと屈託ない純粋な笑顔を浮かべてエドガーを安心させる。
エドガーが、まるで幼いあの頃を思い出すような笑顔を見て油断していると──
「ニシシ・・・秘密」
今度は年相応の少し悪い笑顔を見せて、ヒョイっとエドガーの手から薬をとって飲んでしまった。
「こんな危ない薬をなんのためらいもなしに飲んでしまうなんて・・・」
「きっとラナ姉はそれでけ父さんのこと信じているんだよ?」
なんのためらいもなく、危険だと説明したばかりの薬を飲んでしまったラナに驚きつつも、薬を飲んだ途端に、現実から意識を手放したラナの体をソッと支え寝かせてあげる。
「それで父さん。私には一体どんな試練を与えるつもり?」
「レイアには・・・」
だが、レイアがそうエドガーに自分の試練を聞こうとすると──
「・・・この魔力の高まりは!」
まさか・・・と、エドガーがある方向から感じた大きな魔力の反応を感じ取り驚愕する。
「ありえない・・・ウォルターは一人で克服してしまったのか・・・!?」
肉眼でもはっきりと捉えることができたソレ。森の中を一直線に進む炎の弾。
「実はね・・・父さん」
すると、ニコリとサプライズに成功して嬉しそうな表情のレイアが、エドガーを呼んでその耳元で何かを囁く。
「そんな・・・ことが」
エドガーは益々驚きながらも困惑する。レイアが囁いた情報に・・・しかし間違いない。この自分の中の魔力が大きく共鳴するように高鳴る感覚は・・・──!
「そうか・・・よかった」
胸の中に感じる温かな感覚。それを噛みしめるように、包み込むようにエドガーは自分の胸に手を当てて感慨に耽る。
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