アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
201 決闘前夜
「明日は休みにします。 ただゆっくり体を休ませて、放課後に軽いジョギングだけはしておいて」
「はぁ〜い」
木曜日。特訓終了後開かれるリアムのミーティング。
「──ただし! それ以上の筋トレとか?」
「ヴッ・・・」
「対人(的)の魔法練習とか・・・」
「ギクッ・・・」
「スクールをサボったりとかは許しません」
「お前はエスパーか・・・」
なぜか特訓直後よりゲッソリとするみんな。
「とにかくしっかり・・・あっ! 興奮して体が疼く時は瞑想とかして、明後日の自分の体の動きやできそうな対応のシュミレーションでもするのがおすすめです」
みんなにしっかりと釘を刺した。後は──・・・
──次の日。
「またここに来ちゃった・・・」
リアムは一人、あの一本桜のある湖畔へと来ていた。
「でろ! 烏丸閻魔──!」
・・・──シーン。
『やっぱりでない』
あの日から6日。実は特訓中にも何度も出そうとした烏丸閻魔。しかしリアムの呼びかけには一切応えることなく──
「あー恥ずかしいな! もう──!」
ドサっと湖畔に腰を下ろして、しばらく水面を眺める。
「・・・あっ」
すると──
「蝶だ」
まだ冬。側に根付いた桜の木もまだ芽も閉じて葉もつけていないのに・・・。
「綺麗で青い蝶」
まるでどこかで見た美しい蝶が、リアムの目の前を通り過ぎると同じ空の青へ消えていく。
「寒いし帰ろう」
蝶が見えなくなった頃、唐突に吹いた風とともに姿をくらます。だが──
「明日は・・・」
「・・・はい」
「・・・ごめん」
「・・・はい」
1週間。ここ最近では当たり前になった2人でポツンとテーブルに座り食事を摂る。とても静かな空間。戦いを明日に控え不安そうなティナに気の利いたことも言えない。その日の夜はそんな、心のどこかに隙間風が吹いているような、寂しさを感じる夜だった。
・・・──
「モグリ。重量追加だ」
「モグッ!」
夜、とある森の中のロッジの側で・・・──
「フゥー・・・フゥー・・・」
ある男が逆立ちをしながら、指を地面にめり込ませ片腕を上下に屈伸させていた。
「──ウィル? もうそろそろ休まないと明日に響くわよ?」
すると、灯りの漏れるロッジから一人の女が出てきて男に話しかける。
「・・・アイナか。まだ後少しは大丈夫だ。エドのポーションもあるしな」
男は姿勢を変えることもなく、屈伸しながら女に応える。
「・・・でも」
女が眉をひそめて、心配そうな表情を浮かべる。
「・・・・・・」
しかし男が女にそれ以上言葉を返すことはなかった。
『明日は約束の日。あれだけの見栄を切ったんだ・・・』
明日は恥ずかしいところは見せられない。先輩として、1壁として・・・──親として。
『ちょっとでも油断したらスグにやられちまいそうで・・・怖い』
だがやはり怖い。男の表情が苦悶する。その理由はこんな勝手な動機で大切な者に牙を見せておきながら、その実自分がどこまで張り合えるかわからない未知。また、今自分が支えているモノの重さ。
『それに・・・』
男は更に表情を緊張させる。しかしロッジからわずかに漏れる灯りと、真上に上がる月の光だけのせいかよく分かる。男のその眼に宿った、鈍い灰色の光が──。
『気合い・・・入れなきゃな』
また、その逆立ちする足の先には体積にして125立方メートルはある立法形の大岩が三つ、積み重なっていた。
・
・
・
?
「さあ皆さん・・・もう寝る時間ですよ」
「「はぁーい!!!」」
──とある教会と隣接する孤児院にて。
「アストル様、アメリアは?」
「そういえば、アメリアの姿が見えませんね・・・」
親はいない。しかし優しい司祭と家族たちに囲まれて小さな幸せを共有する空間に──。
「んーんんんー!」
「ククク・・・どんなに叫ぼうとしてもそうはさせませんよ・・・さぁ行きましょう。我らが生贄よ」
闇の一枝が、潜んでいた。
「はぁ〜い」
木曜日。特訓終了後開かれるリアムのミーティング。
「──ただし! それ以上の筋トレとか?」
「ヴッ・・・」
「対人(的)の魔法練習とか・・・」
「ギクッ・・・」
「スクールをサボったりとかは許しません」
「お前はエスパーか・・・」
なぜか特訓直後よりゲッソリとするみんな。
「とにかくしっかり・・・あっ! 興奮して体が疼く時は瞑想とかして、明後日の自分の体の動きやできそうな対応のシュミレーションでもするのがおすすめです」
みんなにしっかりと釘を刺した。後は──・・・
──次の日。
「またここに来ちゃった・・・」
リアムは一人、あの一本桜のある湖畔へと来ていた。
「でろ! 烏丸閻魔──!」
・・・──シーン。
『やっぱりでない』
あの日から6日。実は特訓中にも何度も出そうとした烏丸閻魔。しかしリアムの呼びかけには一切応えることなく──
「あー恥ずかしいな! もう──!」
ドサっと湖畔に腰を下ろして、しばらく水面を眺める。
「・・・あっ」
すると──
「蝶だ」
まだ冬。側に根付いた桜の木もまだ芽も閉じて葉もつけていないのに・・・。
「綺麗で青い蝶」
まるでどこかで見た美しい蝶が、リアムの目の前を通り過ぎると同じ空の青へ消えていく。
「寒いし帰ろう」
蝶が見えなくなった頃、唐突に吹いた風とともに姿をくらます。だが──
「明日は・・・」
「・・・はい」
「・・・ごめん」
「・・・はい」
1週間。ここ最近では当たり前になった2人でポツンとテーブルに座り食事を摂る。とても静かな空間。戦いを明日に控え不安そうなティナに気の利いたことも言えない。その日の夜はそんな、心のどこかに隙間風が吹いているような、寂しさを感じる夜だった。
・・・──
「モグリ。重量追加だ」
「モグッ!」
夜、とある森の中のロッジの側で・・・──
「フゥー・・・フゥー・・・」
ある男が逆立ちをしながら、指を地面にめり込ませ片腕を上下に屈伸させていた。
「──ウィル? もうそろそろ休まないと明日に響くわよ?」
すると、灯りの漏れるロッジから一人の女が出てきて男に話しかける。
「・・・アイナか。まだ後少しは大丈夫だ。エドのポーションもあるしな」
男は姿勢を変えることもなく、屈伸しながら女に応える。
「・・・でも」
女が眉をひそめて、心配そうな表情を浮かべる。
「・・・・・・」
しかし男が女にそれ以上言葉を返すことはなかった。
『明日は約束の日。あれだけの見栄を切ったんだ・・・』
明日は恥ずかしいところは見せられない。先輩として、1壁として・・・──親として。
『ちょっとでも油断したらスグにやられちまいそうで・・・怖い』
だがやはり怖い。男の表情が苦悶する。その理由はこんな勝手な動機で大切な者に牙を見せておきながら、その実自分がどこまで張り合えるかわからない未知。また、今自分が支えているモノの重さ。
『それに・・・』
男は更に表情を緊張させる。しかしロッジからわずかに漏れる灯りと、真上に上がる月の光だけのせいかよく分かる。男のその眼に宿った、鈍い灰色の光が──。
『気合い・・・入れなきゃな』
また、その逆立ちする足の先には体積にして125立方メートルはある立法形の大岩が三つ、積み重なっていた。
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「さあ皆さん・・・もう寝る時間ですよ」
「「はぁーい!!!」」
──とある教会と隣接する孤児院にて。
「アストル様、アメリアは?」
「そういえば、アメリアの姿が見えませんね・・・」
親はいない。しかし優しい司祭と家族たちに囲まれて小さな幸せを共有する空間に──。
「んーんんんー!」
「ククク・・・どんなに叫ぼうとしてもそうはさせませんよ・・・さぁ行きましょう。我らが生贄よ」
闇の一枝が、潜んでいた。
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