アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
179 居候1日目 夜
「本当にだらしない弟子だ」
2つの首が断頭されて落ちる胴体の前に、ため息をついて立つカミラ。
「まあとにかく、お前の目標はわかっただろう。ここでの最終目標はこいつをその刀で倒すことだ」
僅かにリアムの奮闘により剥がれたウロコを手に取り、カミラがこの場での修行の最終目標を告げる。今日はなんとか、運よく攻撃を避けられ懐に飛び込み、ウロコの隙間に刀が刺さることでようやく1枚を刈り取れたのだが──
「そんな・・・いきなりここの最終目標と戦わせるとか無茶すぎる!」
当然、リアムはその無茶すぎるオーダーに抗議する。
『倒せない・・・とは言わないのか』
が、その裏でカミラは意外にリアムに感心していた。斬るのは無理だ、いきなりは無茶だとなんだかんだは言ってはいたが、こんなやつは倒せないとは、リアムは一言も言わなかった。
「はぁ? 無茶だと?」
しかし──
「言っとくがな、このエリアにはこいつより強いのがゴロゴロいるぞ?」
「へっ?」
「こいつはな、この厚い胴の肉を切ることができればオークの皮なんてケーキ同然。さらに別の2つの動きをする頭の攻撃をかわしいなすことで予測不能な事態に対処する応用力、乱戦の中で必要な注意力を育むことができるからお前にはぴったりの敵なんだ。で、ついでにお前には気配を絶って他のモンスターたちから隠れながらだな、精神力、サバイバル力を身につけると言う一石三鳥も四鳥もある・・・」
カミラから告げられたのは、反論するどころか、リアムの恐怖をさらに増長させる情報・・・
──シュン。
「へっ?」
突然、カミラが上空に向かって剣を立てるとそれを軽く振って光の刃を飛ばす。
「キャースッ!」
「ラッキー。まさか頭上を極彩鳥が飛ぶとは」
すると上空から落ちてきたのは、最後の遊覧をと必死にバランスをとろうとしながらも、悲痛な断末魔をあげ落下する極彩鳥と呼ばれた色彩豊かな羽を持つ鳥だった。
「こいつも酒のつまみには最高なんだよな〜」
カミラが落ちて力尽きた鳥の足を持って掲げる。しかし──
『今のだ・・・さっきボクを蛇から守った技も──』
リアムは思い出す。上から光の刃が降ってきたて、蛇の首のうちの一つを落とした。そして──
──ヒュン。
と、もう一つ。峡谷の上から振ってきた刃がリアムを追い詰めたもう一つの頭も切り落とし、ツインヘッドスネークを葬り去ってしまったことを。その後──
「所詮、お前の威勢を一丁前にしていたのは、その身に秘めた膨大な魔力と魔法の才能によって武装されていた安心感だ」
間も無くして、上から落ちてきた影がもう一つ。
「だが今は違う。魔法を使うことはおろか、魔力で体を強化することも、武器を強化することもできねぇ」
その影は重い着地音を谷に反響として響かせると──
「それで初陣。ウロコ一枚だが、剥がせただけでも上出来か・・・」
リアムが剥がした蛇のウロコを手にとって、ブツブツと何やら念じていた。
・
・
・
「ってことがあってですね。さすがに事前説明もなしにあんなバケモノの前に放り出されるとは思いませんでした」
「ッバカ! 放り出すっつってもな・・・そう、コソコソ奇襲して勝ってもそれはお前の求める自信には繋がらん。いわゆる私の親心ってやつでだな」
「ハハッそうか、そんなことがあったのか」
時刻は夜。テーブルに並べられた食事を前に、今日の出来事をエドガーに報告するリアムとカミラ。
「だが・・・思ったよりもお前武器は使えんじゃん。そこらの冒険者でも、あいつのウロコを魔法なしに剥がすなんざなかなかできねぇ」
すると、意外にもリアムを褒めるカミラ。
「へぇ・・・カミラがレイア以外の誰かを褒めるなんてめずらしい」
が、どうやら本当にカミラが人を褒めるのはめずらしいらしく、エドガーがそんなカミラを見て暖かい目を浮かべると──
「ほう・・・そんなに私が人を褒めるのがめずらしいか・・・えぇ? エド」
「いや、えっとその・・・」
そこをピンポイントで拾ったカミラが、薄い青筋を額に浮かべる。
「ならば私がいかに人を褒め、思いやりにあふれた人間かを教えてやろう」
そしてカミラはそういうと、今日も腰に携帯していた魔法鞄をゴソゴソと──
「ほーらエド、蛇の丸目玉だ。とれたてだから、そのままいけ」
テーブルの空いた数枚の皿の上に、ポンとエドガーの頭より大きい蛇の目を──
「──フッ」
クリンと艶やかに照り、比較的開かれた有鱗目特有のちょっと縦に長いトカゲの目がキューと・・・
「エドガーさーん!」
とれたてとか、そういう問題じゃないと思う。
「リアムくん・・・すまないがあとは、ボクの代わりに・・・ガクッ」
「あとはって・・・一口も食べてないじゃないですか!」
「なっはっは!ジョークだってジョーク。笑えるだろ?」
「笑えないよカミラ」
「あ、復活した」
とまあそんなこんなで、なんとか蛇の目玉を食べることは避けられた夕食の一幕。その後今日1日の反省をしつつスタミナをつけて疲れをとるためにゆっくりと──
「そうだリアム。風呂沸かしといてくれ」
「えっ・・・」
「それから明日は4時起きな。イデアに手伝ってもらって今日獲った極彩鳥の羽を売りに行くから」
は、出来なさそうだ。リアムも所詮は居候の身、食住を借りて教えを乞うている身としては、拒否することのできぬ厳しい道のりであった。
2つの首が断頭されて落ちる胴体の前に、ため息をついて立つカミラ。
「まあとにかく、お前の目標はわかっただろう。ここでの最終目標はこいつをその刀で倒すことだ」
僅かにリアムの奮闘により剥がれたウロコを手に取り、カミラがこの場での修行の最終目標を告げる。今日はなんとか、運よく攻撃を避けられ懐に飛び込み、ウロコの隙間に刀が刺さることでようやく1枚を刈り取れたのだが──
「そんな・・・いきなりここの最終目標と戦わせるとか無茶すぎる!」
当然、リアムはその無茶すぎるオーダーに抗議する。
『倒せない・・・とは言わないのか』
が、その裏でカミラは意外にリアムに感心していた。斬るのは無理だ、いきなりは無茶だとなんだかんだは言ってはいたが、こんなやつは倒せないとは、リアムは一言も言わなかった。
「はぁ? 無茶だと?」
しかし──
「言っとくがな、このエリアにはこいつより強いのがゴロゴロいるぞ?」
「へっ?」
「こいつはな、この厚い胴の肉を切ることができればオークの皮なんてケーキ同然。さらに別の2つの動きをする頭の攻撃をかわしいなすことで予測不能な事態に対処する応用力、乱戦の中で必要な注意力を育むことができるからお前にはぴったりの敵なんだ。で、ついでにお前には気配を絶って他のモンスターたちから隠れながらだな、精神力、サバイバル力を身につけると言う一石三鳥も四鳥もある・・・」
カミラから告げられたのは、反論するどころか、リアムの恐怖をさらに増長させる情報・・・
──シュン。
「へっ?」
突然、カミラが上空に向かって剣を立てるとそれを軽く振って光の刃を飛ばす。
「キャースッ!」
「ラッキー。まさか頭上を極彩鳥が飛ぶとは」
すると上空から落ちてきたのは、最後の遊覧をと必死にバランスをとろうとしながらも、悲痛な断末魔をあげ落下する極彩鳥と呼ばれた色彩豊かな羽を持つ鳥だった。
「こいつも酒のつまみには最高なんだよな〜」
カミラが落ちて力尽きた鳥の足を持って掲げる。しかし──
『今のだ・・・さっきボクを蛇から守った技も──』
リアムは思い出す。上から光の刃が降ってきたて、蛇の首のうちの一つを落とした。そして──
──ヒュン。
と、もう一つ。峡谷の上から振ってきた刃がリアムを追い詰めたもう一つの頭も切り落とし、ツインヘッドスネークを葬り去ってしまったことを。その後──
「所詮、お前の威勢を一丁前にしていたのは、その身に秘めた膨大な魔力と魔法の才能によって武装されていた安心感だ」
間も無くして、上から落ちてきた影がもう一つ。
「だが今は違う。魔法を使うことはおろか、魔力で体を強化することも、武器を強化することもできねぇ」
その影は重い着地音を谷に反響として響かせると──
「それで初陣。ウロコ一枚だが、剥がせただけでも上出来か・・・」
リアムが剥がした蛇のウロコを手にとって、ブツブツと何やら念じていた。
・
・
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「ってことがあってですね。さすがに事前説明もなしにあんなバケモノの前に放り出されるとは思いませんでした」
「ッバカ! 放り出すっつってもな・・・そう、コソコソ奇襲して勝ってもそれはお前の求める自信には繋がらん。いわゆる私の親心ってやつでだな」
「ハハッそうか、そんなことがあったのか」
時刻は夜。テーブルに並べられた食事を前に、今日の出来事をエドガーに報告するリアムとカミラ。
「だが・・・思ったよりもお前武器は使えんじゃん。そこらの冒険者でも、あいつのウロコを魔法なしに剥がすなんざなかなかできねぇ」
すると、意外にもリアムを褒めるカミラ。
「へぇ・・・カミラがレイア以外の誰かを褒めるなんてめずらしい」
が、どうやら本当にカミラが人を褒めるのはめずらしいらしく、エドガーがそんなカミラを見て暖かい目を浮かべると──
「ほう・・・そんなに私が人を褒めるのがめずらしいか・・・えぇ? エド」
「いや、えっとその・・・」
そこをピンポイントで拾ったカミラが、薄い青筋を額に浮かべる。
「ならば私がいかに人を褒め、思いやりにあふれた人間かを教えてやろう」
そしてカミラはそういうと、今日も腰に携帯していた魔法鞄をゴソゴソと──
「ほーらエド、蛇の丸目玉だ。とれたてだから、そのままいけ」
テーブルの空いた数枚の皿の上に、ポンとエドガーの頭より大きい蛇の目を──
「──フッ」
クリンと艶やかに照り、比較的開かれた有鱗目特有のちょっと縦に長いトカゲの目がキューと・・・
「エドガーさーん!」
とれたてとか、そういう問題じゃないと思う。
「リアムくん・・・すまないがあとは、ボクの代わりに・・・ガクッ」
「あとはって・・・一口も食べてないじゃないですか!」
「なっはっは!ジョークだってジョーク。笑えるだろ?」
「笑えないよカミラ」
「あ、復活した」
とまあそんなこんなで、なんとか蛇の目玉を食べることは避けられた夕食の一幕。その後今日1日の反省をしつつスタミナをつけて疲れをとるためにゆっくりと──
「そうだリアム。風呂沸かしといてくれ」
「えっ・・・」
「それから明日は4時起きな。イデアに手伝ってもらって今日獲った極彩鳥の羽を売りに行くから」
は、出来なさそうだ。リアムも所詮は居候の身、食住を借りて教えを乞うている身としては、拒否することのできぬ厳しい道のりであった。
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