アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

177 居候1日目 昼

「ついたぞ」
「ゼェ・・・ゼェ・・・」

 ログハウスを出て1時間も経たないうちに、カミラとリアムは目的地へとついてしまった。

「なんで走ってないお前が息を切らしてるんだ?」
「そりゃあ・・・あんな体験をすれば誰だって息の一つも切れますよ」

 今ボク、魔法が使えないんですよ? と、振り切られれば一貫の終わりだったと息を切らしながらカミラに抗議するリアム。

「情けねぇなー。それが、お前が魔法に頼りすぎてたって証拠だろ? もっと体と心を鍛えろ! 特に心をな」

 特に心をとドヤ顔するカミラ。・・・ちょっとムカつく。

『そんなこと言って、行き過ぎた修行をして鍛える前に壊れたらなんの意味もないよな・・・全く』

 そう、彼女の言っていることは少し違えば本末転倒にもなる事案なのである。修行と称して本当に殺されればこちらとしてもたまったものではない・・・が。

「えーお前にはこれから、一人でこのエリアFに入ってもらいます」
「えっ?」

 大きく口を開けた峡谷の入り口を前に、カミラが淡々とこれからの日程について語る。

「この先はあれだ。徐々に坂道になっていて、出口に着く頃にはほら、あの上の方の岩がツルッとした荒地の反対側に出るから・・・」
『いや、底も大概なんですけど』

 そう言って、今立つ場所のはるか上、切り立った崖の上を指差すカミラにリアムは目の前の谷の具合を見比べる。こちらもこちらで陽の光乏しいが、ハゲタカとかサソリとかモンスターの骨とか、そんな乾いた×ジメジメの生態系が根付いてそうな嫌な雰囲気を醸し出している。

「それじゃ、私は先に上に行ってるから」

 が、カミラは一言そう言い残すと──

「よっ──」
「・・・うそ」
「──と」

 たった1跳躍で、高さにして50mは跳んだだろうか。いや、峡谷が壮大すぎて距離感覚が狂っているのか、正確な高さはわからないが、それにしても──

「なにあれすごッ!?」
「あれは魔力を限りなく粘着質なものに変えることで、吸着と脱着を上手くコントロールしているのですね。マスターのダークスーツのように闇属性の魔法を応用した方が色々と便利ですが・・・私にもできます」
「できるの!?」

 まだ崖の高さの10分の1くらいではあるのだが、跳躍したカミラはそのまま両足を岸壁につけると、スイスイとその壁を重力なんて感じさせない優雅さを残しながら普通の平らな道を歩くように登っていく。

『やっぱり凄い・・・』

 イデアの見栄っ張りな張り合いは置いておいて、やはりあの人は凄いとリアムの心を奮い立たせる。しかし──

「あっ」

 カミラの右足を踏み出そうとした瞬間、その足に直径にして3mほどの岩がくっついてくる。そして──

「ヒョイっと」

 それを──

「ヤバイヤバイヤバイ!」

 リアムのいた下の地面へと、なんの気無しに放り投げてきた。

「死ぬかと思った・・・」

 崩落・・・もとい人為的に起こされた落石をなんとか回避したリアムは、滑り込むようにエリアFへと侵入した。

『くそぉ・・・絶対わざとだ』

 そしてリアムは悟る。今の落石は絶対にリアムに狙いをつけてカミラは落としたのだと。

「やっと入ったか。たく本当に世話の焼ける弟子だ」

 カミラは崖に足をつけながら、ようやく峡谷の中に入ったリアムを見て口角をあげる。後ろに下がらず、前に進んだ世話の焼ける弟子の覚悟を見届けて。

 ・
 ・
 ・

「さて・・・と」

 2階の窓から、カミラとリアムが行ったのを確認して、エドは手にした薬草茶のコップを先ほどよりもかじられているサンドイッチの置かれた皿の横に置く。

「レイア、出ておいで」

 そしてポツリと呼ぶ。この、誰もいない部屋に・・・

「はい」

 が、エドガー以外に誰もいなかったはずの部屋にもう一つの小さな影が現れる。そして──

「カァー! 隠形なんて久しぶりすぎてしんどかった! イデアちゃんは感知してたかな?」
「さぁ、あの子の力は未知数だから」

 それに続き、大きな影がもう2つ。そして──

「ありがとうウィル。レイアをここまで送ってくれて」
「なぁに気にするな。こっちも息子が世話になるんだ」

 エドガーの呼びかけに、大きい影の一つが応える。

「それにアイナも。今回はこちらのわがままを聞いてくれてありがとう」
「気にしないでエド。持ちつ持たれつよ」

 そしてもう一つの影も。

「それじゃあ行きましょうか、レイアちゃん」
「はい、アイナさん」

 それから、間もなくして玄関外に出た4人。

「「いってきます」」

 その内の2人はいってきますと見送るもう2人に手を振って振り返る。

「おう!「いってらっしゃい」」

 そして見送りのもう2人は、森の中に消えていく2人の背中を見えなくなるまで追って手を振るのだ。

「ウィルはよかったの? ついていかなくて」
「なぁに。あそこにいくと、エリアGみたいにリベンジしたくなるしな」

 ウィルがエドガーの質問に答える。

「アイナはアリア1の精霊使いだからね。君の同調も凄いけど・・・」
「ああ。アイナのアレは俺の上を行くからなぁ。俺より当然深いところまで潜れるし、剣なしじゃあアイナが間違いなく最強だ」

 そして2人は同意する。今見送った2人の内の1人、《炎獄の魔女》アイナは我がアリア1の精霊使いであり、魔法勝負になれば確実に彼女が最強だ。

「家庭でもね」
「言ったなこんにゃろう!」

 エドガーのからかい口に、右腕を後ろから回してわしゃわしゃと左手で頭をウリウリするウィル。

「はははっ! やめてよウィル!」
「たくお前だって尻に敷かれてるくせに良く言うぜ!」

 じゃれ合う2人は実に楽しそうである。そんな2人の表情は生意気ないたずら好きの少年、そしてそのイタズラに困りつつも、しょうがないなぁと許してしまう優しい少年。その関係はまるで、生まれた時からの親友のように──

「・・・大丈夫かな」

 ふと、優しい少年男が零す。

「ああ大丈夫だろう。アイナは俺みたいに無茶してバカやったりはしない」

 そしてそんな優しい少年の杞憂を晴らしてくれるのは、いざという時に頼りになるもう一人の生意気な少年の心を持つ男。

「フフッ──」
「アイナさん?」

 すると森の中、突然フフッと笑みをこぼしたアイナに、隣を歩くレイアが話しかける。

「んーん、なんでもないの」

 しかしアイナはそう言ってレイアの心配を払拭すると──

「さぁ急ぎましょう。早く行って陽が昇っているうちになるべく体をならさなくちゃ」

 先を急ごうとレイアを急かす。しかし──

「はい・・・あの、アイナさん。ありがとうございます」

 レイアはそれに同意したものの、突然にしんみりとした様子でアイナにお礼を言う。

「いいのよ。そんなに改まらないでレイアちゃん」

 アイナが答える。気にするな、私たちの仲でしょ・・・と。だが──

「・・・緊張してる?」
「・・・はい。混じり・・・あんな話を聞いたら」

 レイアの体が、小刻みに震える。本当に緊張しているのだろう・・・うちの子みたいに、レイアは素直でいい子だ。

「そんなに気にしなくて大丈夫よ! いい? ウィルなんてね、あそこに100回くらい挑戦して100回とも失敗してるけど、ああしてピンピンしてる」

 アイナは語る。ウィルの恥ずかしい挑戦と失敗のお話を。

「それにエドやカミラにリゲス・・・私だって・・・。今回はレイアちゃんの中に秘められた力を少し刺激してみようってだけだから、私も無茶をさせる気は無いの。さっきはあんなことを言ったけど、修行はゆっくりといきましょう」

 それから励ます。修行とは状況や目指す目標によってその方法も進度の具合も変わるものなのだと。

「それじゃあ行きましょうか?」

 そしてアイナは再び問う。準備はできましたか?・・・覚悟はできましたか・・・と。



──すると。

「はい。よろしくお願いします」

 レイアは今度ははっきりとアイナの誘いを受けた。体の震えももう、止まっている。



 そして──

『カミラとは違う──
『リアムとは違う──

 比べ──

『『私たちの修行場所──』』

 アイナとレイアは再確認する。エリアFへと向かった、大切な友にしてライバルを。そして彼女たちの戦いの場所を──。

 ・
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 2人は再び決意して向かう。そう、ダンジョン1の未知の領域にして、誰も底を知らない未踏破危険区域・・・──

「「エリアEヘ」」



──奈落へと。

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