アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

172 いつの間にかこんなにたくましく育って

「どうしたんだソレは・・・いや、だいたい想像はできた」
「あはは・・・さすが」

 首筋にガブリと噛み付くミリアをようやく離したリアムは、集会後最後のホームルームを終えて後からやってきたという、エリシア、アルフレッド、フラジールが待つという応接室へと入った。

「ちゅー」

 すると──

「あぁぁぁぁ!」
「えっと・・・エリシア?」
「ふわぁぁぁぁ」

 いきなり、挨拶もなしにミリアの噛み跡残る反対の首筋へと、カプリといくエリシア。

「別に・・・私は吸血種の血を引いてるの。だからこのくらい良いでしょ?」

 血を吸う・・・しかしミリアのつけたものと違って、歯型はついていない。いわゆるキスマー・・・

『心拍数急上昇』
『・・・声に出すなよ』
『了解』

 イデアに言われなくてもわかる。いつもの軽口に反論できない。それほどにリアムの心臓は激しく拍動し、自ら認めるところであった。

「ひ・・・久しぶりリアム」
「う、ん・・・久しぶり、エリシア」

 そして、2人とも顔を真っ赤にしながら1年ぶりの再会の喜びを分かち合う。一瞬、目があった後にサッと視線をそらしお互いの顔が見れないのは、まだまだ初な証拠だ。

「ちょ、ちょっと!」

 だが──

「なぁに私の前でそんな羨ま・・・不純な行為に及んでるのよ!」

 それを見て叫んだミリアが、横から慌てて2人の間に割って入る。
 
「私は公爵家の長女なのよ!? その私の前でそんな──」
「まあ落ち着けミリア。ライバルを自称するのであれば、ここは対等にだな、エリシアのソレも許して・・・」
「あんたは黙ってなさい!ヘタレフレッド!」
「ブフッ!?」
「アルフレッド様!?」

 恋の対等について講釈を垂れるアルフレッドの顔面に、ミシリと思いミリアの拳が叩きつけられる。

「イッテェー・・・」
「大丈夫ですか、アルフレッド様」

 殴られた顔面を、尻もちをつきながらさするアルフレッドに、甲斐甲斐しく付きそうフラジール。

「ほら、アルフレッド」
「すまんリアム」

 そんな彼に、リアムはとりあえずハンカチを──

「久しぶりだね。アルフレッド、フラジール。二人とも、背は伸びてるけど内面はあまり変わってないようで安心したよ」
「まあな。ってボクはこれでも結構中身も成長しているぞ? アダルティな大人の紳士にな!」
「アルフレッド様、鼻血が出ています・・・あ、リアムさんお久しぶりです。お身体はもう大丈夫なんですか?」

 大人の紳士と称しつつ、鼻血を流しカッコのつかないアルフレッドには思わず苦笑い。体の心配してくれたフラジールには、大丈夫とだけ答えておく。それにしてもアルフレッドってアダルティって言葉とか使ったっけ?・・・と。ああ、こういう言葉を使う人物は、彼(ダリウス)か。

「随分と賑やかだね・・・」

 すると──

「これはパトリック様・・・それに──」

 いつの間にノックしたのか、賑やかな応接室内に笑顔を浮かべて入ってきたパトリック。そして──

「リアムくん!あぁよかったは無事なようで」
「あ・・・あの・・・」
「どこか痛むところは? 熱は・・・ないわね。そうだ! 花の国から届いたジャスミンティーがあるのだけど、一緒にお茶でも・・・」

 入って来るや否や、速攻でリアムを抱き寄せて体調の心配をしつつお茶に誘う──

「お母様!」
「あらーミリアいいじゃない今日くらい。だって1年もずぅっと眠っていて会えなかったのよ? それに玄関の兵から連絡があった時にはもうあなたが連れっていってて・・・」

 マリアが。ちなみに、今日ずっと城の正門近くでずっとスタンバッていたらしいミリアに捕まってからというものの、今の今まで音楽室に軟禁されていたため、まだ他の公爵家の人たちとは誰とも顔を合わせていなかった。

「むぅぅぅぅぅ」

 そして──

「か・・・快復したようでなによりだ・・・が」

 パトリック、マリアと続き部屋にやってきたのは──

「今すぐミリアとマリアから離れろ!」

 マリアとミリア、二人に取り合いされるように引っ張られているリアムに怒る、ブラームスであった。

「あらやだあなたったら子供に嫉妬して。器が小さすぎて公爵の名が泣きますわよ」
「ベーッ!」

 しかし──

「マリア・・・ミリア・・・」

 ブラームスの愛ゆえの叫びも虚しく、マリアとミリアから冷たいお言葉を貰い凹むブラームス・・・なんか可哀想になってきた。

「皆、席に着いたな」
「さて、それじゃあ早速だけど──」

 1騒ぎしたのち、席に着いた皆を見渡して、ブラームスが確認し、パトリックが話を──

「これから話すことは領地の安全と機密にも関わる重大な話だ。だから、話を聞く者はこの魔力契約書にサインを。そして──」

 しかし──

「これに署名できないものは、すまないがこの部屋から退出してくれ」

 明るい雰囲気も一転、シリアスで重苦しい雰囲気が一気に場を支配する。 

「えーっと・・・」

 そして──

 1. これから話す__と__について、アウストラリア王国公爵ブラームス・テラ・ノーフォーク、並びに公爵家が機密とするものについての一切の無闇な口外を禁ずる。ただし、これには特例を設けるものとし、また、本項が効果を発揮する条件については条項2以下に記す。 
 2.第一に、この契約は契約者の安全を脅かすものであってはならない。そのため、特例として条項5を設け、発行者、署名者両方の契約者の安全を第一に保障するものとする
 3.第二に、この契約の詳しい手順、際し機密保持魔法陣に対する理解と了承である。まず初めに、契約署名者諸君は書類に署名を。これがなされない場合、発行者である公爵家からの機密の伝達はなされない。また、署名すればその時点で、署名者諸君には機密保持のための特別な魔法陣が埋め込まれる。これは機密保持の観点から実行されるもので、条項2の保障によって署名者に害を為すものではない
 4.第三に、署名後、諸君には公爵ブラームス・テラ・ノーフォークから口頭にて、機密対象の情報について説明、及び伝達がなされる。また、伝達後は発行者ブラームスによる1の__欄へのとある機密に関わる名称の記入がなされ、諸君に署名欄へ拇印を押す義務を命ずる。この義務が下線部への記入から10分、また署名から1時間以内に果たされなかった時、3の機密保持魔法陣によって諸君の機密に関する記憶は消去される
 5.特例。口外の禁に関して、第3者から危害を加えられその命が脅かされようものならば、その限りではない。この項において特例が適用された場合は、適用者は可能な限り早く、その旨を公爵ブラームスに伝達するよう努めること
 6.以上 5 以外の事項のことが守られなかった場合、あるいは拇印による本契約締結後に当契約に関し意図に反逆と相当する行為が確認された場合、署名者は当魔力契約書により埋め込まれる機密保持の魔法陣のため、この件に関する記憶の消去を実行されるものとする。これら全てを了承するものは、下の署名欄い名前を署名、後に話を聞き1の下線に発行者による 名称 が書き込まれた後、速やかに拇印を押すこと

 リアムは、渡された魔力契約の書類に書かれた事項に目を通す。そして──

「わかりました」

 よく読み、内容を確認したのち、リアムはペンを手にとって、契約書の署名欄にまずはサインのみを記す。すると──

『これは、興味深い魔法ですね・・・』
『イデア?』

 ポウッ・・・と光った契約書から、光の球が飛びリアムの中に吸い込まれるのだが──

『なるほど・・・どうやら、これは指定した一定空間の魔力情報を随時記録し切り取って保存する魔法のようです。だから密閉された一定の広さの空間でしか効果を発揮せず、この時、脳の記憶領域との接続を確立しておくことで部分的な切り離しを可能としているようです。ただし、切り離しというより塗り潰し。おそらくこれは2項の内容に対する配慮で、契約者にもしものことがあった場合、健康を害さないようになされた処置ブツブツ・・・』
『・・・・・・』

 早速、やらかしてしまった。

「あの・・・」
「なんだいリアムくん?」
「その、とても言いにくいんですが、どうやらイデアが勝手に機密保持の魔法陣を分析しちゃったようで・・・」

 その旨を、発行者である公爵家、主に話を取り仕切るブラームスとその息子であるパトリックに正直に告げる。

「・・・それは、解呪できたと?」

 パトリックが尋ねる。

「イデア」
「はい。なんでしょうかマスター」
「もしかして、埋め込まれた魔法陣の解呪ができちゃったりとかは・・・」
「はい。もちろんなんの問題もなく、解呪したことすら悟られずに破約実行できます」

 ・・・いや、問題ありまくりだから。

「実行なさいますか?」
「いやしなくていいから!」

 リアムが、イデアのあまりの気の利かなさに頭を抱えて黙っていると、彼女が提案するは超! 余計なお世話。

「これはこちらのミスだな。魔法陣の分析まで禁止しておくことを忘れていた。ただ──」
「ええ。これは本当に異例ですね。そもそも、契約書が認識できない2つ目の人格となると、それを実行できるのは彼くらいでしょうから・・・」

 そもそも、この書類は魔法陣が分析された本契約までの間に破られることを想定していなかった。これには、契約書の発行者であるブラームス、そしてパトリックが頭を抱える。そして──

「いいでしょう。この件に関し、署名していただいた他の皆さんには申し訳ないですが、一番巻き込まれる危険があるのはリアムくん、君だ。であれば、自ら魔法陣の看破を申告した彼を信じてこのまま話す他ないのでは? 父上」

 パトリックから、リアムにとってとてもありがたい提案がなされる。

「はぁ・・・」

 すると、ブラームスは一つため息を吐くと──

「おいリアム。今、自分にかけられた魔法陣の解呪をしておけ。もしお前たちが言うことが本当であるならば、話が終わった後でも記憶を失うことはないだろう」

 グシャグシャと、リアムの署名がなされた紙を丸めて捨てる。

「公爵ブラームス。その言い様は私の能力を疑っているのですか?」
「いや、そういうことではない。要は、我々の沽券の問題なのだ。この、国でも最高レベルの機密を扱う陣の応用を看破されたとなれば、もうそれ以上に我々がどうこうして足掻くことはない。こちらから話を持ち出した以上、つまりは仕方がない問題ということだ」

 話をややこしくした張本人のイデアが、ブラームスの言い様に突っかかる。そして──

「それに、リアムには借りがある。こちらの都合で、勝手にイデアの存在を暴露させたからな・・・」

 そんな、申し訳ないとするブラームスの言葉に何故と問いただしたいが、同時に、リアムはどうしてイデアがこんなに自立たくましく育ってしまったのかと、シクシクといろんな意味で心の中で泣いていた。
 それから──

「あれ? アルフレッド達はサインしないの?」
「ふっふっふ。それはだな、リアム。ボク達は・・・」
「私たちはもうとっくにサインして、話の内容も知ってるのよ」

 リアムからの質問に、アルフレッド・・・もといエリシアが答える。・・・ちょっと横入りされたくらいでそんなに落ち込まないの。

「それじゃあ・・・」

 一方──

「そうだね。一応、選択の余地を残しておいたんだけど・・・」

 項垂れるアルフレッドは置いておいて、リアムの疑問にパトリックが答える。

「まさか彼らがいたのは誤算で、結果集団的な圧力をかけることとなってしまったかもね」

 そしてはぐらかす。だが、リアムもこれには抗議できない。そもそもエリシアたちをここに呼んだのは、自分だからだ。しかし──

「ああだけど安心して。ティナちゃんだけはまだ、契約も話も聞いてないから」

 この中にもう一人、公爵家以外の人間で契約を結んでいない者がいたようだ。すると──

「私はリアムの所有物ですから・・・」

 自分の顔を見たリアムに、健気にそう答えるティナ。全くこの子ときたら純真というか真面目というか、周りが事情を知っていく中一人待ち続けるのも辛かったろうに・・・。

「そういうこと。さて・・・改めて、君に話したい事が──」
 
 パトリックは手を一度パンと叩き場の雰囲気をリセットする。どうやら、リアム同様にティナの署名も免除してくれるようだ。

「それは、神竜教と邪神教、後者通称ファウストと呼ばれる宗教集団について、だ」

 それから、パトリックに続いたブラームスから告げられたのは、とあるアウストラリアに巣食う2つの宗教団体の名前だった。

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