アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

167 爪痕

「そう。つまりは完全に独立した2つが混ざり、1となる現象こそが”混じり”なんだ」

 初めからなかった外部性を内部性に変化させて共存・共生させる。哲学的に言えば、それは常に他と干渉を続け経験を経る人生そのもののように聞こえるが──

「独立している外部性を内部化する。経済の話みたいだ」

 リアムがブツブツと、エドガーの話を聞いて唱える。すると──

「ごめんね。ボクに経済の心得はちょっとないんだ。まいったな」

 それを聞いたエドガーは目を丸くした後に、まいったなと頭を掻く。

「うんうん。どうやらうちの子は、エドガーより優秀なようだぞマレーネ」
「ケッお前さんも、全く嫌味なやつだよ」
「まあまあマレーネ。時間だけが全てじゃないから・・・あ」
「「・・・」」

 わざわざ、遠回しにマレーネに嫌味を言ったウィルであったが、アイナのフォローが全てを物語り、2人は思わず沈黙する。

「それで、その混じりがこの鱗とどう関係があるんでしょうか」

 すると、ここでエドガーのフォローをと、話を戻そうとするリアム。

『『そうだった。これ、竜鱗の話だった』』

 しかしその裏で、すっかり話に置いてけぼりを食らっていた3人が主題を今思い出したことは、恥ずかしくて絶対に誰にも言えない。

「それはね、いわゆる爪痕だよ」
「爪痕・・・」

 エドガーの言葉に、反復し唱えるリアム。

「・・・」

 だが、それから暫く場には沈黙が続いた。そして──

「君は、ウォルターとラナが精霊を使っているところを見たことがあるかい?」

 エドガーは、その重そうな口を開き、恐る恐るリアムに尋ねる。

「えーっと・・・」

 リアムは記憶を辿る。
 エリシアは魔族の血を引いているから、ティナは獣人であるからと、種族的な問題によって精霊契約をしていない。アルフレッドの家では精霊契約は世襲制。家の次期当主となる彼の兄が家の精霊と契約を結ぶため、アルフレッドは兄が次期領主として認められて初めて彼の眷属として契約できる。これは精霊契約の制約によるものであり、人から精霊への並列契約は不可能であるためである。よって、主人であるアルフレッドに仕えるフラジールもまた、主人を尊重して洗礼による精霊契約はしていなかった。もし主人より従者が強い力を持ってしまえば、アルフレッドの立つ瀬がない。だが──

「そういえば・・・ないや」

 ウォルターとラナは違う。彼らは精霊と契約できる人の血を引きながら、彼らと共生するエルフの血を引いている。であれば、おそらくだが精霊契約は可能なはずで、事実末妹であるレイアはアリエルという中級の精霊と契約をしている。

「2人はね。別に洗礼を受けていないわけでも、ましてや君みたいに精霊が呼ばれて来なかったわけじゃないんだ」

 エドガーは語る。魔法、探索、戦闘・・・あらゆる局面で自らの可能性を底上げすることのできる精霊を、ウォルターとラナが使わない理由を。

「ただ、彼らの精霊はもうこの世界には存在しない・・・いや」

 この時、エドガーはあえて、存在しないという言葉を先に使った。

「彼らの精霊は、契約の時に2人と混じったんだ」

 混じった。つまりは正確に彼らに混じった精霊達の観測ができない状態、あるいは段階。

「これは精霊と共生する妖精族と精霊と契約する人族の血を引く者に起こる現象。彼らの精霊はウォルターとラナの中に溶け込み2人の人格を残して新たな命として芽吹き、2人の体の中で今もなお生きている」

 ウォルターとラナの時は特に戸惑ったなぁ・・・と、その時のことを思い出すように目を細めるエドガー。

『父さん! 精霊が俺の中にブワーって入ってきたんだ!スゲェー!』
『それはスゴイね!・・・ありがとう』
『わーん!精霊さんが私の中に入って消えちゃった!』
『泣かないで〜ラナ・・・ごめんね』

 
 ・
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 2人とも、今ではそんなハンデをものともしないほど強くなってくれた。親としては頼もしい限りであり、申し訳なく思う。

「あの、だったらレイアは・・・」
「あの子はまた、特別なんだよ」

 一方、ウォルターとラナの例にそぐわないレイアについてリアムが尋ねるが、エドガーはそのことについて、特別とだけ述べてお茶を濁す。 

 ここで、リアムはふとこの話の最初にエドガーがとった行動、そして、彼の言動を思い出す。

「契約でも、共生でも、共存でもない・・・」

 ブツブツと、想像してしまった事を辿り確かめるように呟くリアム。

「それら全てを内包するものこそが・・・混じり」

 ん・・・? そう考えると、ウチのパーティーって精霊の力を使えるのはミリアとレイアだけ・・・。

「あの、その混じってしまった精霊の力を2人が使うことは?」
「そうだね。それは実は可能ではある。だけど──」

 リアムの質問に、イエスで答えるエドガー。しかし──

「ボク自身。その領域に辿り着くまでに相当な年月を要した」

 それはとても困難で、長く険しい道のりのようだ。

「・・・エド」
「・・・・・」 

 ふと、後ろで話を聞いていた3人のうちのアイナ、ウィルに目を向けてみれば、2人は心配そうな目でエドガーの後ろ姿を眺めていた。
 ウィルとアイナがあんな反応を見せるということは、きっとそれは最近のことなのだろう。既に300年ほど生きているというエドガーにとっては本当に、最近・・・。

「さて、話をまた逸らしてしまったね!」

 しんみりさせてごめんね・・・と、寂しげな笑みを浮かべて謝るエドガー。

「でもね、一応繋がってはいるんだ」

 しかしそれは束の間の出来事。彼はすぐにいつものみんなに愛される笑顔を浮かべる。

「つまり!竜鱗症も、一種の混じりなんだ」

 そして、リアムの背中に現れた鱗について、改めて説明する。

「君は、きっとどこかで竜の力を体に注ぎ込まれたんだ。君の生まれ持った魔法防御をも軽く凌駕するほどの強力な竜力を持った何者かに」

 だが──

「・・・まさか」
「・・・多分。君と僕が考えていることは一緒だと思うよ」

 明るい雰囲気はまた、スグに真剣なものへと変わってしまった。

「あの、突然ボクを襲ってきた仮面の正体は・・・」

 2人は気づく。この爪痕を残した張本人が誰なのか。

「姿を偽った、竜だった」

 擦り合わせは、ピタリと2人の中で想像を仮定へと嵌めた。


──実像が、虚像に変わる。

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