アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

164 残響の深さ

「1年・・・」

 マレーネから唐突に告げられた言葉に、リアムはしばらく放心する。

「おいマレーネ!なんでそんなサラッと言っちまったんだ!」

 そんな彼の隣では、サラッとリアムにとって重大な事実を告げてしまったマレーネに、もっと慎重をきして話すべきだったと主張するウィルが抗議する。

「うるさいねぇ。だからちゃんとワントラップ入れたじゃろう」
「入ってねぇよ!クッション硬いどころか尖ってんぞ!」
「はんッ! こんな大事は、重要だからこそサラッと言ってしまう方が本人として残る傷は案外小さいものさね。私だってその辺は考えてるよ! 何年生きてると思ってんだい!」
「ね、年齢を引き合いに出すのは卑怯だぞ・・・」
「ふん。エルフの特権さね」

 が、すぐさまに彼女なりの人生経験から導き出した理論で武装され、ウィルは呆気なく撤退する。事実──

「そっか・・・」

 自分が気を失ってからもう1年が経とうとしていると告げられてから10分ほど、リアムはそう一言呟くと──

「あれ? でも点滴もないのにボクの体、どうして痩せるどころか成長?・・・してるんだろう」

 案外、すんなりと事実を受け入れ、挙句にどうやって自分の体がこの1年の間飲み食いもせずに生きていたのかという点について考え込み始めてしまった。すると──

「正解は私です。マスター」

 答えがわからず悩んでいたリアムを見かねてか、イデアが彼に話しかけてくる。

「どういうこと?」

 そんな久々・・・いや、実際彼女の声を聞くととても懐かしい気分になった。イデアの言葉を聞いて、リアムが尋ね返す。

「はい。マスターの意識はここ1年ほど、こびりつく謎のヘドロによって閉じ込められていました。とても邪悪で、しかしスデにソレはそこにないかのようにまるで残骸のように少しずつ、少しずつ崩れていくナニカです」
「・・・・・・」

 こびりつく謎のヘドロ。トッコミどころは他にもあるし、邪悪というのも気になるが、どうしてかそのワードが一番気になってしまう。

「意識、つまりは魂にも近いソレが閉じ込められているというのは由々しき事態。ですが、かと言って未知のものを無理やり剥がそうとしてマスターの魂を傷つけてしまえば、マスターの自我ごと崩壊しかねません。そこで──!」

 ここにいる全員に聞こえるように話すイデアが、とても得意げな口調で話しを進める。だが──

「私はソレの自然崩壊を待つことにして、自然治癒を目指しマスターの肉体を保存するべく──」

 イデアはそうリアムに言い残すと──

「ということです」

 唐突に話しを締める。しかし──

「ねぇ。イデア?」
「はい。なんでしょうマスター」
「たしか、乗っ取りは禁止だって言ったはずなんだけど」
「ソレは、臨機応変という言葉がありまして」
「それに、なんだか喜怒哀楽がわかりやすくなったというか、ちょっと豊かになっているというか」
「進化です」
「進化!? いや絶対慣れでしょう!?」

 なにかとかこつけて進化という言葉を使う彼女にはもう慣れっこだが・・・そんな締めの言葉とは裏腹に、突如変身したのち元に戻った自分の体をみて、リアムはイデアを問い詰める。

「まあ落ち着いてリアム。イデアちゃんはあなたの代わりに色々としてくれていたのよ」

 だが──

「それに、今日お前が目覚めるって教えてくれたのもイデアちゃんだ」
「そうだね。いちスキルとしては信じられない独立性だよ」

 アイナ、ウィル、そして今日初めて話しをしたエドガーまでもが、口を揃えてイデアの味方をするのだ。

「なんで父さんたちも受け入れちゃったの!?」
「いやソレはなんというか・・・」
「ほ、ほら、リアムの体を守るためよ!」

 一体このスキルはどんな好感度アップキャンペーンを図ったのか。まさか洗脳なんてしたんじゃあるまい・・・

「あと・・・はいこれ」

 な。と、リアムが不穏な陰謀説を考察していると──

「なにこの手紙の山」

 アイナの手によって、ベッドの上に大量の手紙の山が置かれる。

「これは、リアムの代わりにスクールに通っていたイデアちゃんがもらってきたラブレターだ」

 そしてそれが何なのか──

「ブッ・・・!」

 父であるウィリアムから告げられるのだが──

「ゴホゴホッ!・・・その、イデアがもらってきたってことは」
「まあ、そういうことだな」

 スグに、一体それをイデアが誰、もといどちらの方面からもらってきたのかということを察知する。・・・吹き出しむせてしまうのも、当然である。

「イデアちゃんはリアムのお休みと入れ替わるように、転校生という名目でスクールに通っていたのだけれど」
「学長先生の計らいでな。リアムは元々スグにでも卒業できるくらい優秀だし、休学分をイデアちゃんが埋めることで代替してくれるっていうことで事情を知った先生が申し出てくれたんだ」

 アイナとウィルが、ありがたい話だとしみじみとした様子で、ルキウスへの感謝をにじませながら事情を話す。だが──

『絶対裏がある・・・』

 これには、当然ルキウスの性格を知るリアムは疑いの眼差しで話を解釈していた。きっと・・・いや絶対に彼は、『起きた時に同一人物 (ほぼ)が知らないうちに自分のホームで好き勝手やっていたとか、それを後から知った時の本人の反応は絶対面白い』とか、考えていたに違いない。

「そのことってみんなは知って・・・」

 リアムは、そんなルキウスの陰謀論からなる処置に辟易としながらも、この事実を知るものをウィル達に尋ねる。すると──

「みんなて言うと、”アリエッタ”のみんなはそうだが」
「スクールのみんなは知らないと思うわよ」

 ウィルが口にしたのは、何やら聞きなれない単語──

「アリエッタ?」

 リアムはスグにその聞きなれない語について尋ねる。だが──

「まあ、それは・・・ね?」
「リアムくんも病み上がりだし、この話は後からの方がいいんじゃないかな?」
「だな。擦り合わせは一旦お開きにして、リアムは今晩ゆっくりと休め」

 病み上がりだから、と大人達にお茶を濁されて、急に錯誤する記憶と現実の擦り合わせは終わることになった。しかし──

「じゃあ最後の質問なんだけど・・・」

 リアムは大人達の提案を半分は呑みながらも、もう半分を聞くことはなく──

「この、背中の硬いのはなに?」

 最後の質問にと、起きてからずっと背中に感じている違和感は何なのかと問いかける。

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