アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

160 極右

「お前が言ったんだろ!」
「なにをですかね?」
「そうさ。永遠とも思える寿命を持つ空間にも、崩壊という終わりが待っている!」

 突き出された拳が、頬をかする。

「お前は殺せる存在なんだよ! なぁドミナティオス!」

 同時に、こちらの拳も振り切らず、しかし一撃一撃に力を込めて最高の一手を打っていく。しかし──

「愚か愚か。私を殺すですか・・・」

 目の前で優雅にダンスするように避けていくドミナティオスには、一撃として擦りはしない。

「この体が、仮初めの人形であると私も先ほど言ったはず」

 詰まることのない距離。そして──

「粋がるものほど虚に溺れる。哀れなものです」

 ドミナティオスが、憎しみを込めるように大きく腕を振って激昂する。

「あなたには深い恨みがある」

 これは誘い。

「だからこそ、是非その内面に潜む悪に打ち勝っていただきたい」

 だから乗るな。怒りをコントロールしろ。

「調子に乗んなドミナティオス」

 少年はドミナティオスの懐に飛び込むことはなく、大きく後ろに下がって対処する。

「ほっほっほ。どうやら出てきてはならない方の顔が出てきてしまったようで・・・」

 が──

「非常に、残念です」

 スグにドミナティオスは自分が詰めることができなかった距離を詰める。

「ロック」
「!?」
「こいつなら、どんな名前をつけるだろうなー」

 しかし追い詰められたのは──

「なにを!」
「魔力の手錠だ。そして、手錠の空間座標を固定した」

 ドミナティオスであった。

「そうだな。こいつ風に名前をつけるなら」
「こんなもの・・・!」

 無理やり、錠を引きちぎろうとするドミナティオスであったが──

「これが俺の置き土産だ」

 瞬間──

狂想ブレスカプリチオ!」

 再びかざされた少年の手から、凄まじい熱戦が放たれる。しかし──

「ただのカタストロフでしょう!」

 次の瞬間、少年は背中に強い痛みを感じると──

「ッ正解──」

 ニヤリと笑った後に、上からの凄まじい衝撃に真下の水と浅い底に体を叩きつけられる。

「はぁ・・・クッ!」

 超肉弾の接近戦が繰り広げられ始めてから数分後、決着は先にしびれを切らした方の負けとなった。

「ち・・・くしょう・・・不本意だ・・が・・・・・・」
「・・・全く。小賢しい、しかしあなたにしては些細な一手でしたので何を企んでいるのかと警戒もしたのですが・・・」

 十数、いや数百もの拳の殴り合いを経て、今度はドミナティオスが川の中に背中を沈めた人間を見てニヤリと口角を上げる。

「私の勝ちですね」

 まるで、まだ生きている彼の命はもう自分の所有物だと言わんばかりの傲慢さ。

「おや? これは先ほども見たような光景ですね・・・そういえば!先ほどといえば、もう一人のあなたは出会い頭に執拗に私の名を聞きたがりましたね」

 結果は圧倒的な勝利。倒れた宿敵を前に会話をし、過去を振り返る余裕。

「そして私もまた、それは同じでした」

 この光景はさっきも見た。しかし──

「では、今度はあなたにお尋ねしましょう」

 先ほどと違うのは、今度は彼は岩に体を預けているのではなく、その背中全てがまた水に浸かっていること。そしてもう一つが──

「あなたはいったい、誰ですか?」
「俺は・・・ガッ!」

 質問に答えようとした少年の腹に、ドミナティオスがピックのように尖らせた右手を振り下ろし穴を開ける。地曰く、水に背中がついたのは敗北の証。

「ふふふ。また、意地悪な質問をしてしまいましたね」

 水の中にジワリと広がる血の色を見て、ドミナティオスは嗤う。

「しかし今回はもう答えなくて結構。あなたの正体は既に、戦いの中で押し測ることができました」

 彼が求めるは完全なる勝利、そしてこの上ない屈辱を今対峙している奴に与えること。

「あなたは臆病者。せいぜい部屋の隅っこで大人しく本を読んでいるくらいがちょうど良い」

 だが──

「・・・!」

 その裏でもう一つ、完全なる勝利と天秤にかけているものがあった。

「馬鹿な!?俺はまだ許してない・・・ゾ!」

 少年が、突如苦しそうにもがき──

「・・・・・・」

 苦痛の表情を浮かべた後に、沈黙する。

「でしゃばるな!お前は誰かに助けてもらわねば戦うこともできない弱者だ!」

 すると──

「黙れ・・・」

 自らの言葉を戒めるように、少年が、静かに、静かに反抗する。

「認めなさい。あなたは所詮恵まれた体に依存し、人並みの努力すらも忘れた愚者です」
「黙れ・・・」

 ドミナティオスの追随に、少年は再び呟く。今にも振り切れ爆発しそうな怒りを押して。だが──

「・・・はい?何か言いましたか? 聞こえませんね」
「黙れ! 僕は臆病者でも弱者でも・・・ガフ!」

 少年が再び口から血を吐く。しかし今度は負傷した身で無理して大声を出した結果。ドミナティオスは何もしていない。

「ククク、申し訳ないがもっとましなお返事をいただけないものか。これ以上そんな直情的な嘘と会話に付き合っていたらこそ、時間の無駄というもの」

「はぁ・・はぁ・・・」

 ドミナティオスが、呼吸を整えることに必死な少年の前でまた、嗤う。そして──

「決定。あなたはやはり、死刑及び虚空での無期懲罰です!」

 再び、振り上げられた右腕。先の手にはまっている真っ白だった手袋はもう、赤く黒い色に変色している。

『ぬるい・・・』

 そこからポタポタと垂れて落ちてきた赤が、ツーっと少年の頬に線を描く。

『・・・寒い?』

 滴って頬を伝う血の温度は、ぬるくスグに冷たくなる。

『あれ、これって?・・・なんだっけ』

 また、つい十数分前のことを思い出せないほどに記憶の混濁が激しい。なのに──

「これで終わりです。さようなら」

 なのに──

「死になさい!」

 悔しさと怒りだけは、濁ることなく熱く苦しく燃えていた。

「黙れ・・・」

 ドミナティオスの右腕が振り下ろされる。

「黙れ!僕”私”は・・・リ”ケル”・・ア”ビ”ム! 本当の孤独を知らない者が僕を嗤うな!」

 少年は叫ぶ。目の前に迫る理不尽を呪って、死という孤独を恐れて──。

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