アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

159 憎しみの衝突

──その程度か。

「へぇ」

 瞬間、背後から聞こえてきた声に少年は感心する。

──シュッzユ゛!

 同時に、放たれた熱線は水面を焦がしながら真っ直ぐ下流を3マイル直進し──

「やるじゃん」

 2秒後に、爆ぜる。

「この魔力・・・覚えがあるぞ」

 爆発で打ち上げられた石ころが、周辺に振り注ぐ。

「そうか。ドミナティオスか」

 しかし、彼らにそれが当たることはない。

「その技。もはや間違いはない」

 ドミナティオスが、少年の背中に語りかける。

「しかし貴様、どうやって腕を再生した。事もあろうにその腕は空間ごと物質定義を抹消したはずだが?」

 腕を空間と仮定代替した上での抹消。これを崩壊させることは曰く、この世の空間的情報から少年の腕という情報を抹消したことと同義。

「なぁにお前はただ、俺の腕という空間を崩壊させたにすぎない。ならば──」

 すると少年はクルリと振り返って──

「さっきも言った通り、俺には万能の魔力がついている。であれば空間を再構築したのちに、回復とこの魔眼の力を使って再生するだけだ」

 右腕を黒い霧と化させ、右目の眼光を紫色に鈍く怪しく光らせる。

「魔族の力ですか」
「そだな。ハイブリットってやつかな?」

 少年は、ニコニコとドミナティオスの質問に答える。

「・・・死の深淵を覗いてまで使わなかった。なぜでしょうか」
「シラネ。バカなんだよこいつは」
「・・・こいつ」
「深い意識の底でこの力は借り物だからとか遠慮してるんだよ」
「・・・そうですか」

 引き続き、続いた少年との会話にドミナティオスが、そうですかと呟くと──

「はぁ・・・」

 大きく息を吐く。

「どした? ドミナティオスともあろうものがそんな大きなため息をついて」

 少年が、ドミナティオスに問いかける。

「俺の、いや僕の前いた世界ではため息を吐くと幸せが逃げるって言われてるんですよ?」

 揚げ足をとるように、煽るように。
 
「俺、そして”こいつ”・・・ですか」

 すると──

「決定。これはどちらにも当てはまらない」

 瞬間──

「よっと♪」

 ドミナティオスが一瞬で詰めた距離から放った拳を──

「よく避けましたね」

 少年は狙われた左側、体を引いて避け──

「お前に褒められても嬉しくない」

 その勢いのままに前に宙転し、ドミナティオスの左寄りのうなじに斜め後ろから入る踵落としを決める。

「ウ゛ッ!?」

 ドミナティオスが一瞬、苦悶の表情を浮かべる。しかし──

「グッ! そんな軽い攻撃など・・・」

 確かに入った踵落としであるが、少年の体重がまだ軽すぎたのか、どちらかというとドミナティオスを踏み台に跳んだだけのような攻撃になった。が──

「竜閃──」

 咄嗟。ドミナティオスが後ろを振り返ると──

──カン。

 いつの間にか、鞘に収められた刀を地面に水平に構える少年がその黒く濡れた刃を見せて──

「離空」

 少年の居合は刹那にドミナティオスの両腕を切り落とし、またもやその背後でまるで何もなかったかのように刀を鞘に納めていた。

「ぐぉぉぉおぉお! 貴様私の腕を──!」

 ドミナティオスの画像、音の処理速度を大きく上回る速さ。

「切ってやったよ。空間ごと」

 普通の人間ならば、刀を抜いたことさえ知覚できない早業。

「なんだその剣は! 魔力体の私の体を切るなどありえぬ!」

 間髪入れなかった少年の攻撃。

「魔装だよ。体の一部を媒介に作り出した魔法武器」

 その正体は、体から少しずつ集めて作り出した黒霧の刀。魔装で作り出した武器は、創造者のあらゆる魔力に耐えうる。つまり──

「武器に魔力を流して──」

「いいや? 直列じゃなくて付与だ。慣れてないせいで、まだ魔族魔力を変質させることができねぇ。だから使ってる魔力は魔装魔力に空間魔力と燃費は悪いが、これは付〜与!はーいわかりやすい説明に拍手〜!」

 曰く、魔族も人と同じように魔法を使える。しかしその変換プロセスは当然、元となる魔力質が大きく異なるために違う。人魔力→火魔力と、魔族魔力→火魔力のといった具合に、一人一人に属性適性があるように魔族魔力を扱うにも適性がなければ限りなく扱えない。しかし──

「これだけの凄まじい才能であるのに、まだ先があるというわけか」

 ドミナティオスは瞬時に理解した。膨大な属性魔力を流しても壊れない器の武器というだけでも十分脅威である。しかし彼はまだ(傍点)と言った。そう、彼ならばいずれ人から属性魔力の変換のみにならず、魔族魔力から属性魔力への魔力変換もできる可能性を秘めている。なぜなら彼は人から全ての属性魔力への適性を持ち、かつ根本的な魔族の基本魔力を有しているのだから。2つの異なる魔力は属性という結果でつながっている。今は断線中だが、いずれオリジナルの回路を構築して強制的にアクセスできる日も来るかもしれない。

「ですが・・・」

 すると、突然ドミナティオスの顔に影が落ちる。そして──

「なんですかその態度は・・・なんですかその喋り方は!」

 あまりにも唐突に、先ほどからふざけた少年の態度に怒り始めた。

「あなたはもっと寡黙で、放たれる言葉の一言一言に重みを乗せて全てを支配するような圧倒的強者の器だったはずです。昔の私が敵ながらも、その高貴なカリスマに恐れを抱き、アストラルを震わせていたほどに」

 記憶の中と今現実とのあまりの違いよう。

「それが今や薬に溺れトチ狂った狂者のよう。あまりにも軽く、度し難い」

 腕を切られたこと以上に、ドミナティオスにとって大切なこと。

「それは互い様だろ?お前だってもっと爺むさい喋り方してたじゃねぇか」

 少年が反問する。

「これは、この人形に合わせて喋り方を変えているだけです。それ以外の意味はありませんよ」

 ドミナティオスが答える。事実、彼の体はいわば容れ物、本物ではなかったのだ。

「なっはっは!だったら──」

 すると、少年は大きく笑う。

「俺も同じだよ」

 不敵。あまりにも怒りに満ちた顔を、対面するドミナティオスにみせたのである。

「だいたいさー。お前の主人もやることセコイよなー」

 しかし──

「・・・なに?」
「だってさー。大人どころか毒を盛られた所為で素の弱っちぃ筋力しか使えない子供を血塗れになるまで痛めつけた後、全ての罪を押し付けて消そうとするんだもんなー」

 次のワンシーンでは、ブラブラと片足を前に後ろにとしながらリンチまがいなことをした彼らを非難する少年。

「私怨。お前らってそんな自分勝手な振る舞いが許されるほど甘い存在なの?」

 先ほどまでとは──

「・・・黙れ」

「臭いものには蓋。毎日体は洗っているんだがな」

「黙れ黙れ黙れ黙れ・・・」

「それともアレか!井の中の蛙大海を知らず、お山の大将はうっきっき。檻の中から汚物を投げつけるのが日課の──」

「黙らっしゃい」

 立場が綺麗に逆転する。

「数百年前、己が身なるまま自由暴虐のままに我が多くの眷属たちを殺した貴様が何を言うか!」

 ドミナティオスの一喝。

「ですがそうですね。確かに我々はそんな自分勝手で動いていい存在ではありませんでした。しかし──」

 だが彼もまた、長い時を生きてきた皆に愛される存在。一喝だけで留まり、我を忘れることはなかった。

「今こうして巨悪が表に顔を出したのであれば、それを潰すくらいの采配と役目は負っています。ですから──」

 そしてこの展開は、正直、少年の望まないものだった。

「チッ──」

 少年が、言葉を交わしている最中のドミナティオスにも聞こえないほど小さな音で舌を鳴らす。怒りに身を任せてくれていれば、あるいは──

「私はあなたを今から殺します」

 不遜な態度に戻ったドミナティオスが、粛々と宣言する。

「ひっきょー」

 いや、冷静さを取り戻したというべきか。

「だいたいさー。俺を目覚めさせたのって完全にお前だかんな」
「なにを。貴様はその器に宿った時から、密かに暗躍しこうして縛りをといてついに出てくるまでになったのではないか」

 両脇を締めて、構えるドミナティオス。

「まー確かに、俺はこの器を乗っ取ろうとセッセと裏で暗躍していたわけだが・・・」
 
 束の間、一瞬の内にまた距離を詰めた彼の拳をこちらも受け止める。であれば、格好は悪いが──

「後悔しても、知らないからな」
「ぬかしていなさい。すぐにあなたを葬ってあげましょう」

 細められた紅が、ガラスのように透き通った仮面の奥の青紫に写る。──この戦い、負けるしかない。

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