アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

154 空を見上げる

「続く? リアムは確かに今、そう言ったか?」
「え、ええ。私にもそう聞こえたわ」

 会場のライブスクリーンに現れた謎の文字。その後ろに映るリアムが呟いた声が、はっきりと会場中に響く。

「ちょっと待って! 彼、あの言語が読めるのかい!?」

 その音声、そしてウィルとアイナたちの反応をみたエドが2人に食いかかる。

「あ・・・エドちょっとちょっと・・・あのね、リアムは自動翻訳のスキルを持っているから、多分読めるんだと思うの」

 そんなエドの様子を見たアイナが、そういえばとリアムの保有するスキルについて知らなかった彼にコソコソっと理由を教える。

「それは・・・凄い」

 そしてそれを聞いたエドは、リアムの万能性に感嘆とする。しかし実際には自動翻訳は発動しておらず、リアムがかの言語を読むことができるのはそれが彼の前世の世界で使われていた言語の一つであるという理由なわけなのだが──

「見ろ! また変わったぞ!」
「今度はなんだ?」

 再び、観客たちにどよめきが走る。

「読み込み中…」

 すると、またもや観客たちの疑問に答えたのはスクリーンの映像の中にいるリアムだった。

「読み込み中・・・って、一体なにをだ? 」
「そもそも読み込みってなに? 本を読むこと?」

 空中に浮かぶ文字を読み上げたリアムの言葉に不可解な反応を見せるアルフレッドとミリア。

「読み込むってのは多分、高度な魔道具とかで使われる専門の用語じゃなかったかしら?」
「はい。リアムさん、あとギルドの職員の方なんかがよく使われていますね。私たちが日常的に聞くのはそれくらいですが・・・」

 ミリアの疑問に答えたのはエリシアとフラジール。この世界にはパソコンなどの電子機器はなく、読み込むという言葉は主に魔道具理論方面で使われる言葉である。フラジールのギルド職員がよく使うという例は、彼らはギルドカードから専門の魔道具へと個人情報を読み取ったり取り込むことが多いからそのためであろう。

「読み込み読み取り・・・違いはよくわかんないけど、まあわかったわ!」

 ウンウンと読み込みと読み取りの違いがわからずに唸っていたミリアであったが、3秒たつと顔を上げてケロッとわかったと開き直る。ミリア・・・それはわかったとは言いません。

「お、俺もだ!」
「わ、私も〜!」

 ちなみに、そんなミリアの後に続いたのはウォルターとラナの2人。おいしっかりしてくれ年長組。

「嫌な・・・予感がする」

 一方、この言葉の流れに似た既視感、覚えのあったリアムに悪寒が走る。

「嫌な予感って?」

 エリシアが尋ねる。

「もしかするとまた、戦闘は終わってないかも」

 リアムが答える。

「それってキングトードの時みたいにか?」
「たぶん・・・」

 そしてアルフレッドの質問に再び答える。しかし、多分と答えたはいいが、あの時にはこんな表示も案内もなく、ただ続け様に連戦・・・という流れシステムだったはずだ。

「見て! また変わった!」

 途端、空に浮かぶ文字を指差してレイアが叫ぶ。次の瞬間──!

「な、なに!?」
「「きゃーッ!」」

 けたたましいサイレンとともに、景色が一気に赤く染まる。否──

「なんなのだ!」
「チカチカする!」
「敵の攻撃か!」

 赤く染まったのは僅か5秒に満たぬかどうかの短い時間。景色は再び同じ色を取り戻すと、また赤く染まるを繰り返す。

「き、気持ち悪い・・・うぅ」
「・・・」

 明滅。その繰り返しに、特に動体視力の良いラナとティナの2人は酔ってしまったらしく気分が優れなさそうだ。

「こ、怖いですぅ」
「助けて・・・!」

 一方で、異様な緊急事態に叫び声をあげた後、うずくまって頭を抑えるフラジールとレイア。 

「Warning・・・警告、前兆」

 そんな彼女たちの傍らで、空に映し出された文字を一人だけ読むことのできる者は上を見上げ、ただなぞるようにその文字を読んだ。

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