アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
150 イツカ
「独り占めなんていい度胸ね!」
沈黙を破ったのは──
「早く来ないと私が全部倒しちゃうわよ!」
エリシアとミリア、2人の少女であった。
「ほらリアムもいきましょ? じゃないとあの生意気に全部取られちゃうわよ」
自分たちもオークの群れのいる対岸に急ごうと、ミリアがリアムの手を引っ張る。
「あっ! なに私のかわいい娘と手などつないでおるのだ! おい今すぐ離れろ!」
「ちょっとあなた」
「貴様後で覚えていろ! 開拓地で無償労働150年の刑に処してやるからな!」
が、その仲睦まじい2人の様子を映像で見たブラームスの暴走が始まる。
「こうなるから連れて来たくなかったのよね」
「ですね」
なだめようとしても止まらない旦那と父に、これにはマリアとパトリックもため息をつくばかりである。
「よし! 俺たちもエリシアに続こう!」
「わかった!」
すると、川のせせらぎを踏み散らして一番早くに動き出したのは、ウォルター、ラナのチーム。そして──
「って今回お前の相棒は僕だろう! ほらさっさと行くぞ!」
「あーリアム〜!」
リアムの手を握って誘うミリアを引き剥がして、アルフレッド・ミリアのペアも戦闘に参加して群れを分断する。しかし──
「・・・・・・」
「リアムさん?」
「リアム?」
リアムは1人、その場から動けずにいた。すると、今回も後衛のサポートであるフラジールとレイアが、リアムを心配して声をかける。
「ティナ、悪いけどエリシアの手伝いをしてくれるかな」
「・・・? コクリ」
リアムの突然の提案に、首を傾げるも、すぐに了承してエリシアの元へとかけていくティナ。ちなみに今回からティナは遊撃の担当で基本単独行動である。彼女は気配りができメンバーの中で一番に勘が鋭く速い。だからこそ適任であると彼女にリベロを任せたわけだが──
「レイア、フラジール。ごめんだけど僕のステータス状態をみてくれない?」
「えっ?」
「リアムさん?」
またしても、今度はレイアとフラジールががリアムの突然の要求に驚きの声を漏らす。しかし──
「魔法が・・・使えない」
「「えっ?」」
彼女達はリアムからさらに驚愕の事実を告げられるわけで──
「さっきからずっと試してるけど、魔法、いや魔力を使おうとしてもうんともすんともいわないんだ」
「「えーッ!」」
・
・
・
「魔法が・・・使えない」
「えっ・・・」
薄暗いコンテスト会場の舞台裏、モニターでおやつ片手にプレイヤー達の様子を伺っていたイツカが、大きく開けた口のままに声を漏らす。
「さっきからずっと試してるけど、魔法、いや魔力を使おうとしてもうんともすんともいわないんだ」
現在のメインはどう考えても戦闘中のメンバー達のシーンである。だからオートで魔道具を動かしていても、映像の主役は彼らになるわけで。
「今の場面手動でもう一回・・・」
モニターはあらゆるシーンを見逃さないためのもの。この大事なワンシーンを、マニュアルでコンテスト会場の映像に差し替えようと手を動かすイツカであったが──
「彼にはナノカの失敗の借りがある・・・」
すぐに手を止めて、別の設定をいじることにする。
「だから音だけミュートで、2のスクリーンに状況だけ映す」
彼への借りと観客のオーダーにも答える折衷案。巻き戻しはなしで今の状況を、しかし音声はミュートで4つあるスクリーンのうちの一つをメイン映像からサブに切り替える。
「なんだ1つだけ映像が変わったぞ?」
2のスクリーン側に座っていた観客が、異変に気付く。
「あれはリアムにフラジールちゃんとレイアか?」
「なんか診察してもらっているみたいだけど」
そして偶然2のスクリーン側に座っていた保護者達もまた、突然切り替わった映像にクエスチョンマークを浮かべる。
「おいゴルぁー!あのクソガキウチの天使になに近づいてるんだ! テメェ後でぶっ飛ばすぞ!」
「無茶言わないのカミラ・・・」
握りこぶしをスクリーンに突きつけ怒鳴るカミラと、それをなだめるエド。アイナの言った通り、どうやらレイアはリアムの状態異常を診るべく介抱しているように見える。すると──
「まさかお前と意見が合うとはな・・・」
「ケッ珍しくな。だがこれに関しては同意見だ。私の可愛い天使のレイアに触れるとはとんでもねぇ!」
「そうだな! あいつと娘達の関係に関しては協定を結ぼう」
「ああ。とにかくあいつはまず5m以内に娘達に接近禁止だ!」
すぐ隣で、親バカの親バカによる親バカのための娘をムカつく毒牙から守り隊が結成される。
「エド・・・お前あれをどうみる」
「かけているのはかかっている状態異常に病気、とにかく全部を一定時間モニターできる”カルテ”の魔法かな。母さん」
「ふむ。なにか診察せねばならん事態がリム坊に起きたのか?」
が、そんなおバカ達は放置し、調剤師であり医療にも精通している2人は真剣である。
「オン」
舞台裏にイツカがモニターの前で人知れず新しいお菓子を片手にスイッチを押す。そして──
「断魔剤中毒・・・中毒状態?」
ただの腰抜け発言ではなかったというイツカの判断により、ようやく解かれたミュート状態から会場に届けられたのはそんなレイアの診たリアムの状態異常状態であった。
沈黙を破ったのは──
「早く来ないと私が全部倒しちゃうわよ!」
エリシアとミリア、2人の少女であった。
「ほらリアムもいきましょ? じゃないとあの生意気に全部取られちゃうわよ」
自分たちもオークの群れのいる対岸に急ごうと、ミリアがリアムの手を引っ張る。
「あっ! なに私のかわいい娘と手などつないでおるのだ! おい今すぐ離れろ!」
「ちょっとあなた」
「貴様後で覚えていろ! 開拓地で無償労働150年の刑に処してやるからな!」
が、その仲睦まじい2人の様子を映像で見たブラームスの暴走が始まる。
「こうなるから連れて来たくなかったのよね」
「ですね」
なだめようとしても止まらない旦那と父に、これにはマリアとパトリックもため息をつくばかりである。
「よし! 俺たちもエリシアに続こう!」
「わかった!」
すると、川のせせらぎを踏み散らして一番早くに動き出したのは、ウォルター、ラナのチーム。そして──
「って今回お前の相棒は僕だろう! ほらさっさと行くぞ!」
「あーリアム〜!」
リアムの手を握って誘うミリアを引き剥がして、アルフレッド・ミリアのペアも戦闘に参加して群れを分断する。しかし──
「・・・・・・」
「リアムさん?」
「リアム?」
リアムは1人、その場から動けずにいた。すると、今回も後衛のサポートであるフラジールとレイアが、リアムを心配して声をかける。
「ティナ、悪いけどエリシアの手伝いをしてくれるかな」
「・・・? コクリ」
リアムの突然の提案に、首を傾げるも、すぐに了承してエリシアの元へとかけていくティナ。ちなみに今回からティナは遊撃の担当で基本単独行動である。彼女は気配りができメンバーの中で一番に勘が鋭く速い。だからこそ適任であると彼女にリベロを任せたわけだが──
「レイア、フラジール。ごめんだけど僕のステータス状態をみてくれない?」
「えっ?」
「リアムさん?」
またしても、今度はレイアとフラジールががリアムの突然の要求に驚きの声を漏らす。しかし──
「魔法が・・・使えない」
「「えっ?」」
彼女達はリアムからさらに驚愕の事実を告げられるわけで──
「さっきからずっと試してるけど、魔法、いや魔力を使おうとしてもうんともすんともいわないんだ」
「「えーッ!」」
・
・
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「魔法が・・・使えない」
「えっ・・・」
薄暗いコンテスト会場の舞台裏、モニターでおやつ片手にプレイヤー達の様子を伺っていたイツカが、大きく開けた口のままに声を漏らす。
「さっきからずっと試してるけど、魔法、いや魔力を使おうとしてもうんともすんともいわないんだ」
現在のメインはどう考えても戦闘中のメンバー達のシーンである。だからオートで魔道具を動かしていても、映像の主役は彼らになるわけで。
「今の場面手動でもう一回・・・」
モニターはあらゆるシーンを見逃さないためのもの。この大事なワンシーンを、マニュアルでコンテスト会場の映像に差し替えようと手を動かすイツカであったが──
「彼にはナノカの失敗の借りがある・・・」
すぐに手を止めて、別の設定をいじることにする。
「だから音だけミュートで、2のスクリーンに状況だけ映す」
彼への借りと観客のオーダーにも答える折衷案。巻き戻しはなしで今の状況を、しかし音声はミュートで4つあるスクリーンのうちの一つをメイン映像からサブに切り替える。
「なんだ1つだけ映像が変わったぞ?」
2のスクリーン側に座っていた観客が、異変に気付く。
「あれはリアムにフラジールちゃんとレイアか?」
「なんか診察してもらっているみたいだけど」
そして偶然2のスクリーン側に座っていた保護者達もまた、突然切り替わった映像にクエスチョンマークを浮かべる。
「おいゴルぁー!あのクソガキウチの天使になに近づいてるんだ! テメェ後でぶっ飛ばすぞ!」
「無茶言わないのカミラ・・・」
握りこぶしをスクリーンに突きつけ怒鳴るカミラと、それをなだめるエド。アイナの言った通り、どうやらレイアはリアムの状態異常を診るべく介抱しているように見える。すると──
「まさかお前と意見が合うとはな・・・」
「ケッ珍しくな。だがこれに関しては同意見だ。私の可愛い天使のレイアに触れるとはとんでもねぇ!」
「そうだな! あいつと娘達の関係に関しては協定を結ぼう」
「ああ。とにかくあいつはまず5m以内に娘達に接近禁止だ!」
すぐ隣で、親バカの親バカによる親バカのための娘をムカつく毒牙から守り隊が結成される。
「エド・・・お前あれをどうみる」
「かけているのはかかっている状態異常に病気、とにかく全部を一定時間モニターできる”カルテ”の魔法かな。母さん」
「ふむ。なにか診察せねばならん事態がリム坊に起きたのか?」
が、そんなおバカ達は放置し、調剤師であり医療にも精通している2人は真剣である。
「オン」
舞台裏にイツカがモニターの前で人知れず新しいお菓子を片手にスイッチを押す。そして──
「断魔剤中毒・・・中毒状態?」
ただの腰抜け発言ではなかったというイツカの判断により、ようやく解かれたミュート状態から会場に届けられたのはそんなレイアの診たリアムの状態異常状態であった。
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